50代に向けて泉谷しげるからのメッセージ!
──ももいろクローバーZ主催の『ももいろ歌合戦』に出演されたり、共演された橋本環奈さんからはライブ会場に花を贈られています。若い世代に好かれるのはどうしてだと思いますか。
「知らねぇよ。彼女たちに態度は変えていないのだからさ。でも嬉しいよね(笑)。最初はとんでもない人って思われたかもしれないけれど、彼女たちの期待にちゃんと応えているんじゃないのかな。それで、俺から50代向けに言うと……って、なんで俺がテーマを戻してあげなきゃいけないの!」
──確かに、50代の読者に向けた取材でしたね。
「女性のことはわからないから男性に向けて言うと、50代はいちばん迷うとき。体力的にも衰退するし、“次はどうしよう?”って迷う、中途半端なときだと思う。ここまで覚えてきたギターの腕前をこれ以上、上げるか上げないかという段階に来た。18歳のときに女じゃなくてギターを選んだように、自分のやりたいことを選ぶか、社会の道具になるか考える。仕事はだいたいやりきってしまっているだろうし、次はいつ引退しようという進退を考えるときが近づいてきている」
──人生の終盤の岐路に差しかかると。
「ちょっと落ち着いてくる時期だよね。きれいに辞めていくのを選ぶのか、次の仕事をやるのか。あとこれは俺の持論だけれど、やっぱり年を取るのは嫌だと思う。50代って、それがいちばん悩ましいときで、“どうやったら若くいられるのか”って余計なことを考えてしまう。肉体は衰えていくのに若いままでいたい。だから精神のバランスも悪くなっていく」
──心身ともに、変化を受け入れていく時期なのですね。
「若いときは社会のせいにできたけれど、もう経験値があるから社会のせいにもできない。だから社会が悪いって言えるのは、20代や30代までだよ。50代にもなって言っていたら残念だよね。そういう人は老けていくと思う。さらに周りの若い連中からは年寄り扱いされる。そうすると自信がなくなっていく。俺も50代のころは、変な神経痛になったりした。それは“自分はどうすればいいんだろう?”と、普通のみんなと同じ悩みを抱えていたんだと思う」
──泉谷さんは、どのように克服されたのですか。
「60歳になったら“来やがれ”ですよ。老いよ来い! どれだけ老いられるだろうって覚悟を持ったら、楽になれました。でも普通の人はマネできないと思う」
──ではどうすれば、前向きに過ごせると思いますか?
「そこは頑張って自分を愛してほしいと思う。他人を愛せるなら、自分も愛せるだろうって思うよ。でも50代はそういう意味では、自分のことを好きになれなくていちばん迷っているかもしれない。もしかしたら、“俺の人生は女房子どものためだけに過ごしてきた”なんていう愚痴とか言っているんじゃないかな。でも普通の生活こそが大事なんですよ。俺はバケモノだから、異常体質でいられるけれどね。俺の歌に出てくる人間は普通の人々だから。普通の負け犬のほうだけれど……」
──でも泉谷さんの歌の本質は、負けていないと思います。
「負けたことがあるから、“負けてはならぬ”っていう気持ちがあるんです。負けたことを、ちゃんと自覚していることが大事。よし、次は勝つぞっていう気持ちが必要なんですよ」
──泉谷さん自身は、いつも勝ちに行っているように見えます。
「もちろんですよ! 当たり前じゃないですか。どんな場合でも全力でやって、勝ちにいきますよ」
──失礼ながら、泉谷さんは75歳ですが「後期高齢者」という呼び方をどう思いますか。
「後期高齢者のほとんどが不摂生だからね(笑)。元気がなくなるとすぐ不安なふりしてさ。糖尿になって尿酸値がどうだとかばかり言っている。ただの不摂生だろうが! って思う。おれはステージに立つことを選んでいるから、お酒も煙草もやめたからね」
──常に歌い続けることを第一に考えているのですね。
「俺はみんなから“何、この人”って思われるような、バケモノになりたかったんです。それが自分にとってのステータス。バケモノとして歌い続けることを目標としているし、それがお金になったらもっと幸せだなっていう考えなんです。自分が好きなことがお金になるんだったらさ、それがいちばんだよね」
◇ ◇ ◇
一言、一言に魂がこもってパワフルな泉谷さん。「元気はもらうのではなく、与えるほう」という言葉のとおり、フムニュー編集部一同、前向きな気持ちになった取材でした。
(取材・文/池守りぜね、編集/小新井知子)
《PROFILE》
泉谷しげる(いずみや・しげる)
1948年青森県生まれ。シンガーソングライター、俳優。'71年にライブアルバム『泉谷しげる登場』でフォークシンガーとしてデビュー。『春夏秋冬』『光と影』『'80のバラッド』『吠えるバラッド』など多くのアルバム、楽曲を発表。俳優としてドラマ『戦後最大の誘拐 吉展ちゃん事件』『金曜日の妻たちへ』『Dr.コトー診療所』、映画『Fukushima 50』『いのちの停車場』などに出演。著書の新刊『キャラは自分で作る どんな時代になっても生きるチカラを』(幻冬者)が発売中。
【ライブスケジュール】
8月26日(土)京都・磔磔「全力ライブスペシャル3時間!」※配信あり
9月9日(土)なにわブルースフェスティバル
9月10日(日)金沢・北國新聞赤羽ホール
「泉谷しげる全力ソロライブ90分」
9月15日(金)溝ノ口劇場
9月29日(金)所沢MOJO
10月15日(日)小田原quest
10月30日(月)石垣島すけあくろ
10月31日(火)宮古島GOOD LUCK!
11月1日(水)那覇桜坂劇場
*詳しくはホームページで