リアルな描写が秀逸！アニメ『スキップとローファー』“キラキラ”だけじゃない高校生活と人間模様に心がざわつく

　2023年4月から放送中のアニメ『スキップとローファー』をご存じだろうか。

　主人公は超田舎から東京の進学校へと主席入学してきた、岩倉美津未（いわくら・みつみ）。黒髪のボブに鋭い目つきの三白眼……今までの学園系アニメで描かれてきたような美少女でも、個性的なビジュアルでもない彼女を見て、正直あまり興味をそそられなかったという方も多いかもしれない。

　だが、『【推しの子】』『天国大魔境』『君は放課後インソムニア』『鬼滅の刃』など、近年稀に見るほどの最強作品が勢そろいしている今年の春アニメの中でも『スキップとローファー』は回を追うごとに“今期の覇権アニメ”と言われるほどの盛り上がりを見せている。

　本作で描かれるのは、ざっくりと言ってしまえば東京で高校生活を送ることになった美津未と、彼女をめぐるクラスメートたちの交流や成長だ。高校生活の人間関係にフォーカスした名作アニメは数多く存在するが、いったい『スキップとローファー』の何がそこまで視聴者の心をつかむのだろうか。

とにかくリアル！　圧倒的な解像度で描かれる、高校生活の人間模様

　そのひとつに、“高校生活のどこを切り取るのか”という視点の秀逸さと解像度の高さにある。

　高校生活といえば、例えば部活で育まれるアツい友情、10代ならではの青くて切ない恋愛など魅力的な瞬間がたくさんある、言うなればネタの宝庫だ。しかし、『スキップとローファー』が主題として描くのは、そんなキラキラした青春群像劇に留まらない。あくまでもクラスメートたちとの人間模様である。

　新たに始まる高校生活。新生活に胸を躍らせ……と言いたいところだが、思い返してみてほしい。高校生活の始まりはそんなに期待だらけのものだっただろうか。連絡先を交換するにも相手の顔色を伺ったり、あるいは“誰と仲よくしたら今後の学校生活で得なのか”、“自分はこのクラスでどの位置にいるのか”と邪推してしまったり。そんなザラッとした感情とともに高校生活をスタートさせた方も多いのではないだろうか。

『スキップとローファー』ではそんなザラついた感情を、美津未だけではなく、クラスメート一人ひとりにフォーカスをあてて、圧倒的な解像度でどこまでも真摯（しんし）に丁寧に描く。

　例えば、美津未の後ろの席に座る江頭ミカ。一見、感じのいい子だが、美津未から声をかけられた際に見せる、あの一瞬で人を値踏みするような目……。そしてその後、美津未がクラスのイケメン男子・志摩聡介と交流があると知ると、態度を一変させて連絡先を交換しようと言い出す。ミカの行動は人知れず内に抱えているものがあってこそではあるが、『スキップとローファー』にはそんな思わず心がざらつくようなシーンが数多く登場する。

各登場人物の心情とリンク、アニメーションならではの構成力

　そんな心がざらつくシーンに、濁らずまっすぐに向き合うのが他ならぬ主人公・美津未の存在である。慣れない東京の地で失敗し落ち込むこともあるが、決してクラスの空気を読みまくるわけでも、相手に媚びへつらうこともない。自分なりに相手と対話をして、クラスメートたちと交友関係を育むことを決して諦めないのだ。そして、そんな美津未と交流を重ねていくうちに、先述のミカをはじめとするクラスメートたちはどんどん変化していく。

　タイプが違うからと避けていた人と友達になる子、もっと素直になりたいと今までの嫌な自分と向き合う子……美津未という他者と関わることで、クラスメートたちは今までの自分と対峙（たいじ）し、新たな自分を知っていく。人とのかかわりで移ろう感情の機微や成長を、アニメーションならではの巧みな構成で描いている点こそが『スキップとローファー』を“今期の覇権アニメ”と言わせしめているように思う。

　そして、アニメーションならではの構成力は会話シーンだけではない。例えば、学校帰りにクラスメートたちと飲むタピオカフラペチーノ、映画館で食べる塩とキャラメルのポップコーン、雨上がりに広がる東京の空……マンガとはまた違った規格で描かれる、アニメならではのさりげないワンシーンは各登場人物の心情と絶妙にリンクし『スキップとローファー』という物語をより心に迫るものに仕上げている。

まるで軽快なスキップを踏むかのように駆け抜ける

　高校生活の薄暗い面も輝きもすべて抱きしめて、まるで軽快なスキップを踏むかのように駆け抜け、初めましてのクラスメートたちと手探りながらもまっすぐ向き合い続けてきた1話～6話。

　5月16日に放送された第7話ではめでたく前期生徒会の書記に就任した美津未。がしかし、先輩たちとの対話にあたふたし始め、ラストには重要人物が登場……!?　と、見どころの多い展開となった『スキップとローファー』を、今後もぜひお見逃しなく！

（文・ちゃんめい／編集・FM中西）