60年以上の歴史を誇るロングセラーのお菓子、ベビースターラーメン。第1弾記事では開発の裏側やキャラクターの変遷に迫りました。
【第1弾:『ベビースターラーメン』は発売から60年以上、過去にはパスタ味やチョコ味も! 味やキャラクターの変遷に迫る】
今回は、最近、積極的に取り組んでいるという他社とのコラボやそのまま食べる“以外”の提案など、ベビースターブランドのさらなる深淵に迫ります。お話を聞かせてくれたのは、株式会社おやつカンパニーでベビースターブランドを担当する田中雅洋さんです。
ベビースターラーメンがカップ麺に! エースコックとのコラボの真相
──先日、スーパーのカップ麺コーナーで、エースコックとのコラボカップ麺を見て、驚きました。
「実はエースコックさんとはおよそ20年ほど前からのお付き合いがあるんです。もともと、ベビースターラーメン側が、エースコックさんの商品である『わかめラーメン』や『スーパーカップ1.5倍 豚キムチラーメン』のフレーバーを発売したり、逆にエースコックさんは、弊社の駄菓子カップ麺の『ブタメン』とコラボした『ブタメンBIG とんこつ味』をコンビニで限定販売するなど、相互にブランドを貸し借りする形で協業していました。そういった関係もあって、今回のコラボに至りました」
──そうなんですね。でも、同じ“ラーメン”というテーマだとライバルのようにも思えてしまうのですが。
「それは大丈夫だと思っています。例えば、カップ麺を食べたい気分のときに、ベビースターラーメンでガマンできますか?(笑)」
──たしかに(笑)。
「カップ麺は食品、ベビースターラーメンはお菓子ですので、スーパーマーケットの売り場も違えば、購買シーンも違う。コラボにあたって問題はまったくないと思っています」
──コラボでは味の再現性にはどれくらいこだわりますか?
「私たちが他社様のブランドを借りるときは、できる限り味は忠実に再現しようとは思っています。ただ、やはりお菓子はどこまでいってもお菓子。楽しみの領域の中で、どこまで味をデフォルメしてわかりやすくするか、というところも意識しています」
──今回のエースコックとのコラボはどう進めていったのですか。
「基本的にはエースコックさんが開発し、私たちは試食してフィードバックを戻す、ということを繰り返しました。カップ麺としては、チキン味、うましお味、汁なし(チキン味)を開発しましたが、うましお味のコラボはこれまでの経験が少なく、味の着地点には少し悩みましたね。
やっぱりベビースターラーメンは食感もあって初めてベビースターラーメンとして認識されると思うので、味だけを切り取るのは相当、難しかったはず。実際の苦労はエースコックさん側に聞いてみてほしいです」
ということで後日、商品を開発したエースコック株式会社の担当者の方にもコメントをいただきました!
「ご存じのとおり、ベビースターラーメンはお湯をかけずそのまま食べるスナック菓子です。その味わいを、お湯をかけて食べるカップ麺にするのが難しかったですね。“あの味わい”の完成度を高めるべく、何度も試作を重ねました。とくに大変だったのが『汁なしベビースターラーメン チキン味』です。一度、お湯を湯切る商品設計のため、麺への味つけがどうしても弱くなってしまい、麺とスープの味つけの調整には時間をかけました。
発売後はSNSでも話題になり、実際に食べた方から、懐かしさや楽しさを感じるというコメントも届いています。スーパーマーケットでの主な購買層は30~40代のファミリー層です」(エースコック株式会社 マーケティング部 商品開発グループ担当)
「1年間で何分、ベビースターのことを考えていますか?」
──最近、いろいろなところでコラボを見かけます。
「直近では、スニーカーブランド『Reebok』とコラボしたベビースターラーメンスニーカーを発売したり、夏は期間限定で大阪・道頓堀のお好み焼き専門店『千房』や、東武百貨店の池袋本店の食品フロア・レストランフロアとコラボして、ベビースターラーメンを使ったコラボメニューを提供したりしました」
──結構いろいろやっていますね!
「実は数年前まではコラボは積極的には実施してきませんでした。そこまで大きな会社ではないので、コア事業であるスナック菓子の製造販売に注力しなければ、という思いが強かったですね」
──それがなぜコラボに前向きに?
「生活者の方って、四六時中ベビースターラーメンのことを考えながら、日々、過ごされているわけではないですよね? 私たちおやつカンパニーの従業員は24時間、ほぼベビースターラーメンのことを考えていますが、多くの方はおそらく、1年間でせいぜい2分間くらいじゃないかと。数字はアバウトですが(笑)。ですから、こうしたコラボが少しでもベビースターブランドを思い出していただくきっかけになればいいなと考えています」
──すでに知名度抜群のお菓子だと思うのですが……。
「知っている人は多いのですが、“スナック菓子といえば?”と聞かれて、一番にベビースターラーメンと回答する人は、ごくわずか。マーケティング用語では想起集合というのですが、そういうときに真っ先に名前を挙げてもらえるような存在になることを目指しています。コラボを始めてからSNSで“コラボを見たよ”という声も多くいただくようになり、ベビースターブランドを頻繁に思い出してもらうきっかけになる、よい取り組みができていると感じます」
料理に使う「ちょい足しレシピ」が好評
──エースコックとのコラボカップ麺のパッケージには、途中から“追いベビースターラーメン”で味変する食べ方も紹介されています。試してみたら、パリパリ食感や旨みがプラスされておいしかったです!
「ありがとうございます。実はお菓子以外の食べ方も積極的に提案しています。ベビースターラーメンは食感のアクセントになったり、味に旨みを加えたり、実は料理にも結構使えます。お菓子を料理にアレンジすることに若干、心理的なハードルがある人もいらっしゃいますが、お菓子といっても、もともとはラーメンなので食との親和性は高いのです。公式サイトで紹介している、ちょい足しレシピも好評です」
──田中さんのおすすめの食べ方はありますか?
「サイトでも紹介している唐揚げや炊き込みご飯は、ベビースターラーメン自体に味がついているので調味料も最低限ですむのでおすすめです。ほかに簡単で便利なのはサラダですね。サラダにベビースターラーメンをかけるだけ。家族で食べれば、お父さんにとっては居酒屋のパリパリサラダ感覚のおつまみに。子どもがサラダ嫌いを克服するきっかけになってくれるかもしれません」
食べる以外の楽しさも提案! SNSでは「#麺文字」が話題
──ベビースターラーメンはいろいろな楽しみ方ができるのですね。
「これまでお話ししてきたのは食べ方の提案ですが、最近は食べる以外の楽しみ方も発信しています。その一つが“麺文字”。ベビースターラーメンを文字のように並べるもので、SNSで話題です。Twitterで麺文字を募集するキャンペーンも実施しました」
──「#麺文字」で検索すると出てきますね。どれもクオリティが高いです!
「そうなんです。昔はお菓子で遊ぶなんてはばかられたかもしれないのですが、最近は知育菓子のように遊ぶことが前提のお菓子もあります。ぜひ親子で食べながら楽しんでみてほしいですね」
──これからベビースターブランドはどんなふうに進化していきますか?
「今、『#おやつの常識を超える』を標榜して、おやつの常識にとらわれない、いろいろな取り組みをしています。コラボ企画もそのひとつです。
私たちが目指すのは、食べることで日常から少し解放されて、明日も頑張れる心の安らぎやホッとした安心感のようなものを得られるブランドです。それが叶(かな)うように、これからも楽しい取り組みを続けていきます」
──今後のコラボの予定は?
「具体的な話は発表ができるまでお待ちいただけたらと思いますが、これからもみなさんがあっと驚くような、想像を超えるようなコラボや取り組みをおこなっていきたいと思っています。“ベビースターはまたこんなことやってるの!?”と笑って見ていただけたらうれしいですね」
◇ ◇ ◇
誕生から60余年、ベビースターラーメンならではのおいしさに加えて、遊び心にあふれた楽しさも、ますます進化していました。次はどんな変わったコラボネタを仕込んで、私たちを笑顔にしてくれるのか楽しみです。
(取材・文/古屋江美子)