最近、街中でも目にすることが増えたキックボクシングジム。女性選手や格闘家の活躍も増え、注目が集まっています。前回は、キックボクシングをはじめとする格闘技シーンが盛り上がっている理由を、第12代NKBウェルター級王座の竹村哲さんにお聞きしました。
【第1弾:元王者でミュージシャンの竹村哲さんが教える「キックボクシングの魅力」と「女性こそ向いている理由」】
次第に自分たちもキックボクシングを体験してみたいと思ったフムフムニュース編集部員たちが、今回身体を張って、竹村さんの指導のもと、キックボクシングに挑戦いたしました!
・編集K…運動は苦手の動物好き。キックボクシングは初めて。
・編集H…キックボクシングジムに通って3年というメンバー1のベテラン。その腕前は!?
・ライター池守…学生時代の体育の成績は10段階の3。運動嫌い。キックボクシングは初めて。
広々としたジムで、ストレッチからスタート
ジム内に心地よいパンクロックが流れるのは、バンドマンだった竹村さんならでは。まだ表情も硬いわれわれですが、まずはストレッチから。編集H以外は運動が苦手で身体も硬いですが、無理をせず、もとの状態から気持ちいいと思えるところまで伸ばしてみます。
ジムの会員さんの中には、ストレッチだけ行って帰る人もいるそうですが、確かに日頃の運動不足を感じている人にとっては、10分ほどのストレッチだけでもかなり汗ばんできます。
仰向けになり、右足の太ももを身体に寄せた状態で、その太ももの上に左足を乗せるストレッチは、ジムならでは。文字で読むとわかりづらいですが、トレーナーがいるからこそ、できるポーズと言えます。
通常はもっと長めにストレッチを行ったほうがいいそうですが、今回は足腰と肩まわりの基本的なストレッチをすませ、いざキックボクシング体験へ。
まずは基本の構えと、パンチを打つ時のフォームの練習。竹村さんいわく、「肩幅に足を開いて、右足を半歩下げます。それと同じ方向に身体を斜めにして、さらに右肩を引いてあげる」。
鏡に映る姿を眺めてみると、まるでキックボクシングの選手のような気分に。しかし、浮かれている間にレッスンは続きます。
「身体が正面を向いているとおなかを打たれるんです。(右利きの人が)右で打つパンチをストレート、左で打つのをジャブといいます。ジャブはダメージを与えるというより、距離を測ったりするために打ちます」(竹村さん)
そうです。試合ならば1秒でも気を許すと相手のパンチが飛んでくる。そんなスリリングな競技なのがキックボクシングなのです。まだ打つ前の段階ですが、竹村さんの指導を耳で聞いていると頭の中でいろいろな動作がこんがらがってきます。
「拳を握る時には、親指を外側に出します。親指を握って打つと、最悪、親指が折れたりしちゃうので……」(竹村さん)
竹村さんの軽妙な口調とは裏腹に、気が抜けない状況が続きます。「打つ時は、げんこつした時の人差し指と中指の関節部分、ナックルパート。ここの骨で当ててください! 」
実にわかりやすい指導で、少しずつフォームをマスターしていく私たち。
「相手にパンチを当てる時に、手首をまっすぐにせずに、ナックルパートが当たるように拳を内側に入れてあげる。打つ時以外の基本的な構えの時は手は開いておいて、こめかみを隠す。打つ瞬間だけ拳にして、当たったら手を開く」(竹村さん)
これまでシャドーボクシングをしたことはなかったですが、こんなにも細かな動作が組み合わさっているとは思いもよりませんでした。構えのポーズでずっと腕を上げた状態でいるのが、意外ときつかった。
伸びのいいストレートパンチを打つ方法
上半身のフォームが決まったら、足の動作です。
「足は軽く曲げてジャブを打っていく。左手と左足を同時に出す。そして右足を左足の横に出す。そして手を引く。そのまま前に進む」
いよいよ本格的な雰囲気のフォームで打つことに。自分では気持ちよくパンチを打てたつもりでも、後で写真を見たら思いっきり右手のガードが下がっていました。これでは相手に打たれてしまいます……。
編集Kも、まっすぐに進んでいるつもりがなぜか右の窓があるほうに移動。竹村さんが「あれ? 窓から帰ろうとしているみたいですね(笑)」と言い、和やかな雰囲気に。初歩的な動作でも意外と難しいようです。
右ストレートを打つ時には、実は腕ではなく骨盤が重要だそう。
「骨盤を回すのに重要なのが後ろ足。つま先が立ったままの状態だと、ブレーキになってしまって骨盤が回りにくい。かかとを外側を出すように回してあげると上半身の可動域が大きくなってパンチも伸びます」
さらに足を動かす時は母指球(ぼしきゅう:親指の付け根の下の丸みを帯びた部分)を中心に回すことが大切なんだそう。「母指球」という言葉は初めて聞きましたし、普段の生活で意識したことはありませんでした。
編集Hが「母指球で立つのは難しい。すごく力がいります」と質問してみると、竹村さんは「母指球を意識して歩くようになると、それがだんだんと自然になっていきますよ」とアドバイス。トレーナーにわからないことを質問するのが上達のコツかもしれません。
次第に身体が慣れてくると、3人ともジャブ、右ストレートの一連のフォームがそろうようになりました。鏡張りの前で自分の姿を見るのもジムならではと言えます。
キックが決まると気持ちいい!
いよいよ次は念願のキック。まずは竹村さんにお手本のキックを見せてもらいます。まるで漫画の主人公のように、足がきれいに上がったフォームです!
「キックで大切なのは、足だけで蹴るのではなく、身体を回して蹴ること。左足のつま先を左斜め90度に出して、おなかのおへそをつま先と同じ方向に向ける。その後に、脱力した右足を出して蹴る!」(竹村さん)
キックのポーズは、足が90度開くのを意識するため、女性にとってはガニ股になります。最初は抵抗がある人もいるかもしれません。
3人それぞれ、サンドバッグの前に立ちキックの練習を始めます。編集Kはすぐにコツをつかみ、脛(すね)がサンドバッグに当たると「バシッ」という心地よい音が鳴り響きます。キックボクシング歴3年の編集Hは、足が上がったきれいなフォームでサンドバッグを打ちつけていました。
私は初めてサンドバッグを蹴ったものの、当たる時は気持ちがいいのですが、次第に打ちつけた脛が痛い……。最初はあざができる人もいるようなので、やりすぎにはご注意を。
竹村さんのアドバイスで身体のどの部分を動かせばいいのかわかると、蹴りやすくなってきます。できることが増えると楽しくなってくるのがキックボクシングのよさなのかもしれません。「ストレス! 」と言いながら、編集Kは何度もサンドバッグにキックを打ち込んでいました。
2分間のミット打ちをリングで体験!
最後は、今日の練習の成果を見せるため、各自2分間のミット打ち。実際にグローブを身に着けるとテンションも上がります。
一番目は経験者の編集H。さすがのフォームで休む間もなく竹村さんのミットにストレートを打っていきます。バシっという音が鳴ると見ているほうも気持ちがいいです。
二番目は編集K。最初は運動が苦手と言っていたものの、勢いよくミットにパンチを打ち続けました。しかも楽しそう。
最後は池守が挑戦。2分間体力が持つか心配でしたが、竹村さんの「ジャブ、ストレート」という言葉に夢中になって打っていると、あっという間。まさに自分が選手になったような夢の2分。
最初はキックボクシングの体験取材を怖がっていた文化系集団(1人を除いて)のわれわれも、最後にはポーズを決めて満面の笑顔。このやり切った爽快感がクセになりそうです。
キックボクシングは、普段動かさないような腕や足の部分など全身を使うので、練習後の達成感も大きい。さらにミットを打ったり、サンドバッグを蹴ることでストレス解消にもつながります。
グローブひとつで、自分が心身ともにすっきりと変化したような気分が味わえるのがキックボクシングの醍醐味(だいごみ)です。フムニュー読者の皆様も、ぜひお近くのジムをのぞいてみてはいかがでしょうか。
(取材・文/池守りぜね 取材協力:TOKYO KICK WORKS)
■TOKYO KICK WORKS
東京都江戸川区南篠崎町3丁目1-2 渡辺ビル4階
TEL:03-6881-0859
*体験レッスン(1000円/税込み)は随時受付中!
TOKYO KICK WORKSの公式LINEアカウント(ホームページにQRコードを掲載)と友達になると、LINEでも問い合わせや体験の予約ができます。