2022年11月に発売された最新のエッセイ集『ひとりで生きると決めたんだ』(新潮社刊)が話題のふかわりょうさん(48)。独特の感性で唯一無二の路線を突き進んでいらっしゃるふかわさんは、普段どんな生活を送り、何を考えているのでしょうか。どこか謎めいた存在でもあるふかわりょうさんの日常に迫ります。
(ふかわさんがつづったエッセイの中身やタイトルの意味については、インタビュー第1弾で詳しくお聞きしました→ふかわりょう、「誰かに寄り添う気はない」エッセイで描く“意外な物事の結びつき”と“独身だからこそ見える世界”)
「横浜市にある二俣川という町が気になってしかたがない。脳内を蝕んでいる」
──今回のエッセイ集の刊行記念で、後輩であるアンガールズ・田中卓志さんとのトークショーが開催されました。トークショーでは田中さんが、ふかわさんに対する愛情をたくさん語るなど、おふたりの絆の深さが伝わってきました。
「僕は周囲の人に対してマメに連絡をとるようなタイプではないんです。だから、人によっては冷たいと思われるのかもしれません。ただ僕の場合、毎日のように後輩を飲みに連れて行くことが優しさだとは思わないんですね。こうした僕の側面を好意的にとらえてもらえるのは、それはそれでうれしいです」
──エッセイ集では、1枚の落ち葉に思いを寄せるエピソードが描かれており、トークショーでは「落ち葉がヒラヒラ落ちてきた瞬間のときめきと、最初にアンガールズを見つけたときのときめきは同じ」という発言をしています。そんなふかわさんが今、ときめいているものを教えてください。
「横浜市内に二俣川っていう町があるんです。今は、二俣川のことが気になってしかたがないんですよね」
──二俣川のどのへんが気になるのでしょうか?
「二俣川には、『神奈川県警察運転免許センター』があるんです。免許を取得するときや、書き換えをするときに行くわけですが、免許センターって待ち時間が多かったりしますよね。だから、行くことを考えるだけで気が重いんです。
ゆえに僕の中では、どちらかといえばイヤな場所に分類される二俣川ですが、免許センターがあるというだけで、特に頑張らなくてもある程度の来訪者が保証されている町なんですよね。そんな風に、ぬるま湯に浸かっている彩りがすごく好きなんです。実際、町の雰囲気も独特ですしね。最近は、免許センターに用事がないときに二俣川に身を投じると、どういう気分になるんだろうって考えてしまって。……すみません、意味がわからないですよね(笑)」
──いえ、それがふかわさんにとって旬のときめきだということは、おぼろげながらも理解できました(笑)。
「もう、恋に近いんです。最初はネガティブな印象で、“あ~あ、二俣川まで行くの面倒くさいなぁ”って思っていたのに、いつの間にか二俣川が、僕の脳内をどんどん蝕(むしば)んでいるんです。おそらく、ここまで二俣川のことを考えている人は、ほかにいないんじゃないかなぁ(笑)」
水泳と毎食前のヨーグルトで身体の健康を保つも、「心はめちゃくちゃ不健康」
──ちなみに、ふかわさんは冷蔵庫の中にある食材から献立を考えるのが苦手とのことですが(インタビュー第1弾参照)、普段どんなものを食べているのでしょうか?
「ごはんくらいは炊けますが、料理はほとんど作らないんです。だから、食事は基本的にテイクアウトかカフェ。僕は、“これくらいの量を買っておけば、2~3食は食べられる”と把握する思考回路がゼロなので、食事のたびに注文したり食べに行ったりするような感じです」
──食生活で気をつけていることはどんなことでしょうか?
「毎食前にヨーグルトを食べること、くらいですかねぇ。そのおかげなのか、体調を崩すことはあまりないんです。あと、夜に生放送がある日は午後4時台に夕食をとり、放送が終わって帰宅すると、何も食べずに寝室に直行します。これも身体にはわりといい影響を与えているんじゃないかなって思っています」
──運動は何かしていますか?
「週に1~2回、泳いでいます」
──意外です。水泳がお好きなんですか?
「全然(笑)。水泳は効率よく運動ができるので、コンスタントに泳ぐようにしているんです」
──エッセイの中でご自身のことを「敏感中年」と書いています。敏感で繊細な性質がゆえに心が疲れてしまうこともあると思うのですが、どのようにして心の健康を保っているのでしょうか。
「う~ん。心の健康は……保ててはいないですね。むちゃくちゃ不健康だし、病んでいると思います。たぶん、心が健康な人は今回のようなエッセイは書かないです(笑)」
日々の仕事は“弱火でコトコト”。60歳を迎えたころには、小説にも向き合えたら
──『ひとりで生きると決めたんだ』に、ふかわさんは普段、4割の力で仕事をしていると書かれています。
「大学受験のときとか、何度か本気を出したこともあるんです。でも、基本的には4割くらいのイメージで、弱火でコトコト煮込むようにやっていくのがいいんじゃないかなぁって思っています」
──エッセイには、落ち葉や青鷺(あおさぎ)のヒナが擬人化されて心境や境遇を語る、小説のような部分もあります。今後、本気を出すのは小説の執筆、ということになりそうでしょうか?
「エッセイは基本的に感じたものをつづっているだけですし、小説とはまったく別物だと思っています。僕にとっての小説は、もっとすごく遠いものです。だから、“今すぐ小説を書きたい!”という気持ちはないんですよね。
ただ、60歳くらいになったときに、力を抜いて小説に向き合えたらいいかなぁという漠然とした思いはあります。特に僕みたいな、みんなが気にならないことに目を向けてしまうタイプの人間は、人生経験とかいろいろな感覚の積み重ねが小説の材料になるような気がするので」
(取材・文/熊谷あづさ)
【PROFILE】
ふかわりょう ◎1974年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学在学中の’94年にお笑い芸人としてデビュー。長髪に白いヘアターバンを装着し、「小心者克服講座」でブレイク。後の「あるあるネタ」の礎となる。現在はテレビMCやコメンテーターを務めるほか、ROCKETMANとして全国各地のクラブでDJをする傍ら、楽曲提供やアルバムを多数リリースするなど活動は多岐にわたっている。著書に『世の中と足並みがそろわない』(新潮社刊)など。