令和の恋愛にとって欠かせないアイテムと言えば、「マッチングアプリ」ではないでしょうか。職場や友人同士の飲み会などが減ったコロナ禍で、気軽に好みのタイプを探すことができるマッチングアプリは、もはや出会いの場のひとつとして定着していると言えます。しかし、マッチングアプリをどう使いこなせばいいのか、悩んでいる人も多いのでは……。
カメラに向かってほほえむ、この女性の正体は、お笑い芸人の小出真保さん。『ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ』(フジテレビ系)や『アメトーーク!』(テレビ朝日系)などに出演し、ピン芸人として活動する一方、テレビ番組やYouTubeのCMなどでナレーターも務めています。そんななか、彼女は、マッチングアプリで100人以上の男性と実際に会ってデートをしたというツワモノでもあり、マッチング数だけなら、1200を超えるといいます。マッチングアプリを使いこなすなかで見えてきた実情を、小出さんにお聞きしました。
高校時代は“3軍”。30歳手前までに付き合った男性は2人だった
──今日はワンピース姿と、OL風ファッションの2パターンを披露していただきましたね。これは勝負服なのですか?
「そうですね。本当はもっと奇抜なファッションのほうが好きなんですが(笑)。アプリで知り合った男性と会うときには、OL風ファッションをしていくことが多いです。100人くらいの男性と会うなかで、やっぱり“男性って見た目からすぐ好きになるな”って感じたんです。気に入った外見だったら、すぐ“可愛い”って言ってくれる(笑)」
──ではメイクも、アプリ用に変えたりされていますか?
「口紅も真っ赤とかが好きなんですけど、男性はそういうのは好きじゃないって気づいて。ツヤ感がある肌が好まれるので、ここぞという日は、田中みな実さんが使っているハイライト(シャネル『ボーム エサンシエル』)を使っていますね。(ポーチに入っていた実物を首に塗って見せながら)みな実さんが、デコルテにも塗っているって言っていました(笑)。これは超売れたそうですし、塗っていった日は、男性からも好反応をもらえることが多いんですよ」
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──確かに、欲しくなってきました。小出さんは芸人になられる前は、どのようなタイプだったのですか。
「長野県の女子校に通っていたんですけど、学校って、スクールカーストみたいな立ち位置があるじゃないですか。リーダー気質があるとか、可愛いとか。私は根暗だったので、本当に典型的な“3軍”でしたね。高校生のときに、『ボキャブラ天国』(フジテレビ系)に出演している芸人さんたちがブームになっていたんですよ。それまでもお笑いはずっと好きだったけれど、さらにハマって、自分でネタを作って披露していました」
──そのころから、お笑いには興味があったのですね。
「海砂利水魚(現在のコンビ名は『くりぃむしちゅー』)さんの漫才をパクッたりとか(笑)。尊敬する芸人さんたちのネタを文化祭でやったりして、目立ってはいたんです。でも、学校の雰囲気には全然なじめなくて。ミッションスクールだったのですが、校則も両親も厳しくて、反発からか、逆にもう頭のネジが外れちゃった(笑)。三姉妹の真ん中なんですけど、姉はすごくまじめで、妹はおとなしい。私だけ、ちょっと自由に生きすぎちゃっている感じでしたね」
──芸人になることは、ご両親から反対されませんでしたか?
「なぜか、お笑いの道に進むことは全然、反対されなかったんですよ。“早く東京に出たいなあ”っていう気持ちはあったけれど、上京しても、すぐに芸人にはなれなかったんです。女芸人って、当時のモリマンさん(女性お笑いコンビ)みたいに、身体を張った芸ができないといけないと思っていて。“私は服は脱げないな……”っていうので引っかかったんですよね(笑)。だから、黒歴史なんですが、実はかつて太田プロダクション(現在の所属事務所)の俳優ワークショップに応募しているんです。そこで、“君、姿勢が不細工でダンゴムシみたいだね”って言われて、目が覚めたというか」
──なんと! 最初は、芸人じゃない道に進もうとされたのですね。
「はい。でも、3か月後くらいに太田プロのホームページをまた覗(のぞ)いてみたら、『女芸人大募集』って書いてあって。その文字を見たら、高校時代に漫才を披露していた日々がよみがえってきて、“そうだ、私、芸人になりたかったんだった!”って思い出したんです。勇んで応募してみたら、今度は2日後に合格の知らせが届きました! え!? こんなにすんなり入れていいの!? って、逆に動揺しちゃいましたね(笑)」
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──それから、芸人として活動し始めたのですね。
「芸人になってからは、仕事を頑張りたかったので、正直、“恋愛はもう邪魔”って思っていました。誰かと付き合って、最終的に家庭を作りたいっていうよりも、恋愛で仕事の足を引っ張られるようなことになったら、すごく嫌だな、とか……。仕事にも恋愛に対しても、“ストイックになって自分を追い込まなきゃ!”って思っていた時期かもしれないですね」
──そこから、マッチングアプリに登録するのは、なにかきっかけがあったのですか。
「30歳の手前くらいまで、大学の先輩と後輩という、近場の2人しか付き合ったことがなかった。そのあとに、芸人同士で付き合ったんですよ。彼とはウマも合って、“結婚するだろうな……”って思っていたのに、ダメになっちゃったんです。5年も付き合ったのに! 34歳で大失恋をして、その傷を癒やすためにマッチングアプリを使い始めたのがきっかけですね」
仲よしの女芸人がアプリ婚。“好青年がいるなら”と始めてみたものの
──使う前のマッチングアプリの印象はどうでしたか?
「当時、『Tinder(ティンダー)』とかが流行(はや)っていて。そのころは、“マッチングアプリは、なんか怖い”っていうイメージでしたね。実際にTinderをちょっと覗いてみたら、韓流スター並みのイケメンの写真が出てきて、“このレベルが何人も存在しているとか、うそでしょ!? 出会えたとしても、山奥とかに連れていかれるんじゃ……”ってビビっていました(笑)」
──でも、失恋がきっかけで登録をされたんですよね。
「マッチングアプリって、私に限らず、失恋後に登録する人がめちゃくちゃ多いんですよ。これまで出会った男性たちに、最初に“なんで登録したんですか”って聞くと、“最近、別れちゃって”って、みんな言うんです。女性の場合は婚活目当ての人も多いけれど、男性の多くは、すぐに結婚モードにはならない。失恋の傷を埋めるために登録している人も多いなと感じます」
──失恋後にまたすぐ恋愛するのは、パワーがいると思うのですが……。
「今はもう大丈夫ですけど、私は別れたあと、ショックが結構でかくて(笑)。元カレとダメになったときは34歳で、5年も付き合ったのにフラれて、自信がなくなっていた。でも、アプリを始めてみると、バーって『いいね』が付くんです。マッチングアプリって、承認欲求がめちゃくちゃ満たされるんですよ! 」
──そのときは、アプリで出会った方と実際に付き合ったりはされましたか?
「いえ。真剣交際は元カレ以降、なかったんですよね。そしたらコロナ禍になって、仕事も止まってしまった。アプリもやめて引きこもろうと思っていた矢先に、仲のよかった女芸人が、付き合って1か月で“アプリ婚”をしたんですよ! 名前を出すなってクギを刺されているけど、言いたくて仕方ないんですが(笑)。彼女はきれいだけど9年間、彼氏がいなかったし、“まだ結婚しないだろう”って安心していたんです。それが、マッチングアプリで出会った相手と電撃婚って言うから、こちらも動揺しましたね。しかも、同年代でスペックもよくて、“まともな好青年がよく余っていたな~”みたいな」
──そこで、マッチングアプリへの偏見が消えたんですね。
「それまでは、アプリを使ってはいたものの、若い男性だと遊んでいそうだし、年上だと、ちょっと生理的に受けつけられないような相手しかいないと思っていたんですよ。だけど、アプリ婚を目の当たりにして感動したし、“またやってみようかな~”っていう軽いノリで再開しましたね。その年はコロナの影響で実家にも帰れなくて、“本当に自分はひとりなんだな”って感じて寂しかった。気づいたら、大みそかに紅白も観ないで、ひたすらマッチングアプリをいじっていましたね」
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1日に3~5人の男性とアポがある日も。約2年で100人超に!
──いづごろマッチングアプリに“出戻り”されたんでしょうか。
「今から5年くらい前の失恋後に登録をして、1回やめたあと、2020年の年末にまた始めました。合わせて約2年間ほど使っているなかで、100人くらいの人に会っていますね。気合いをいれていた時期は、1か月に20人とか会っていました。アポ(アポイントメント)を1日3ステくらい入れていたので」
──“3ステ”ってなんですか? 聞きなれない言葉ですが……。
「モノマネの営業のときに使う言葉ですね。“3ステージ”っていう意味で、アプリでアポを数えるときに使っていました(笑)。例えば、3ステだと、1ステ目はランチ、2ステ目はお茶、3ステ目がディナー。最高で1日に5ステ入れたこともあるんですよ。ブランチ、ランチ、お茶、ディナー、最後はビデオ通話ですね」
──一度に何人もの男性と会っていると、相手の名前とか間違えたりしないですか?
「名前は間違えないんですけど、個人情報は間違えますね。実際、相手の職業とか部活とかを間違えまくったし……。“学生のとき、バスケをされていたんですよね”って言ったら、“違います、野球ですよ”みたいな(笑)」
──複数の人と同時進行で進める場合は、本命にはいつ会うのですか?
「本命はディナーですね。5ステでのディナーがうまくいったときは、そのあとのビデオ通話はキャンセルしたりもします。ビデオ通話の約束は、向こうも“僕ももし仕事が早く終わったら”って言い方をしてくれることが多いので、リスケもしやすいんですよ。会ってご飯を食べてみるのは面倒くさいなっていうときは、短めのビデオ通話がオススメですね」
会った相手のデータはノートに記入。既婚者がひそんでいたことも
──小出さんは、マッチングアプリで出会った相手のことを、ノートに記録されているんですよね。ものすごくマメですよね。
「そうなんですよ。でも、学生時代に『ボキャブラ天国』を観ていたときも、ノートにデータをつけていたんです。基本、根がモテないっていうか。こういうことやっている人って、きっとモテないじゃないですか(笑)。例えば、このノートには何が書いてあるだろう。(開いたページを見ながら)アプリの◯◯と△△には遊び人が多い、××は、オエーッ!」
──(笑)。なかなかリアルですね。会った男性ごとの印象や会話のハイライトなども記入されているんですよね。これだけデータを持っている人って、珍しいと思いますよ。
「よく“(自分は)真保ちゃんみたいにマメじゃないよ”って言われるけれど、私はこの作業を面倒くさいと思わないんですよ。勉強とかは全然好きじゃなかったけれど、マッチングアプリのデータをつけるのは好きなんです。マッチングアプリって、ちょっとゲームの要素があるんですよね。どんな人が出てくるか=ガチャガチャだし、いい男をゲットする過程=ポケットモンスターだったり、モンスターハンターだったりしてワクワクするんです」
──ちなみに、ご自身の職業について、男性にはなんて伝えているんですか。
「職業を聞かれたら、“マスコミ関係なんです”って言っています。間違っていないですよね(笑)。男性には、“アプリで会うのはあなたが3人目”とかって言っているんですけど、“なんでそんなに慣れているの”って言われたこともありますね。“ヤバい!”って思って。まさか、“実はあなたで80人目です”なんて言えないなって(笑)」
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──(笑)。実際、マッチングアプリでは、偽のプロフィールで登録している人もいそうです。どうやって見わけていますか。
「一度会ってから、2回、3回と会う人の割合が少ないので、うそを書いている人がいたかもしれないですね。でも、気づかなかったです。既婚者をカミングアウトしてきた人は2人いました。プロフィール画像で、首から上が写っていない男性で、首から下がムキムキマッチョだったんですよ。気になって会ってみたら、画像のイメージとは別人が来て、しかも既婚者でした……」
──マッチングアプリでは、理想どおりの相手と出会うのは難しいのでしょうか。小出さんはアプリを何社、使っていますか?
「最多のときは全部で13社、使っていましたね。アプリによって、登録している層って違うんですよ。だから、いろいろやってみるのはオススメですね。今メインでやっているのは8社です。課金はしたことがないのですが、これまでを振り返ると、男性は有料会員になっている人のほうが“しっかりした人”が多いっていうことは言えます」
──それだけアプリを駆使していると、知り合いが出てきたりしませんか?
「今のところ知り合いはないのですが、“見たことあるな”と思ったら、別のアプリにも登録している人だった、ってことはありますね。『with』で男性を探しているときに、“この人、この前『Pairs』で見たな”とか。あとは、昨年にマッチ(マッチング)した人と、今年またマッチしましたね。お互い忘れていて(笑)」
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同時進行は「よくあること」、ドタキャンと遅刻だけはしない
──ちなみに、どれくらいの時間をマッチングアプリに費やしていますか?
「私、以前、iPhoneの『スクリーンタイム』で、マッチングアプリ系の使用時間が“18時間”って表示されていたんですよ」
──『スクリーンタイム』って、スマホを見ている時間ですよね。18時間ですか!?
「親指も腱鞘炎みたいになっちゃって(笑)。本当、ガチャガチャと一緒で、中毒性があるんですよ。でも、会いすぎると、自分は実際、どんな人と相性が合うのか、わからなくなってくる。初対面のどんな男性とも仲よくできるようになっちゃったときに、自分という人間さえもわからなくなりましたね……」
──そんななかで、同時進行で何人もの人と会い続けることが嫌になったりしませんか?
「今のところはまだ、“それでも、いい相手と巡り合いたい”という気持ちがありますね。あと、“相手に悪い”だとか、変なまじめさがあって同時進行ができない人もいるって聞くし、“面倒くさい”って言う意見も聞きます。でも私は、アプリで複数の人とやりとりをするのが面倒くさいっていう気持ち、まったくわからないんですよね。相手に対して、まじめに向き合う気持ちはわかるんですけど……。持論としては、相手に対して誠実になるのは、付き合ってからでいい。男性側も、基本的には付き合ったりしない限り責任を取らないんだから、同時進行がオススメです(笑)。そして、自分が傷つかないためにも、“同時進行はお互い、よくあること”と割り切るしかないですね」
──そこが、次の相手がすぐ見つかるマッチングアプリの特色なのかもしれないですね。
「賛否両論だと思うんですが、マッチングアプリの出会いは“そういうものだ”って思ってほしい。“細かいことを気にしないほうがいいよ”って思います。でも、約束の前日や当日にいきなり相手が退会していて、連絡が取れなくなったとかいうケースは、最低のドタキャンですけど。私は、会う場合には“ドタキャンと遅刻だけはしない”というルールを決めているんです。それと、デートのあとに必ず、“お時間を作ってくれてありがとうございました”っていうお礼は送りますね」
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小出さんならではの“マッチングアプリ哲学”がたくさん垣間見えました。インタビュー第2弾(2022年8月27日20時公開)では、小出さんがアプリで出会い、強烈なインパクトを残した男性たちの衝撃エピソードや、ご自身の恋愛のゴールなどについてお聞きしています。
(取材・文/池守りぜね)
【PROFILE】
小出真保(こいで・まほ) ◎長野県上田市出身。太田プロダクション所属のモノマネ芸人。『ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ』(フジテレビ系)での優勝経験あり。近年はナレーションやコラム執筆も積極的に行うなど、活躍の場を広げるかたわら、マッチングアプリを駆使し、約2年で100人以上の男性と会い、真実の愛を探している。