NSC(吉本総合芸能学院。主に新人タレントを育成する目的で作られた養成所)を卒業しても、プロのお笑い芸人になれるのはごくわずか。その狭き門をくぐり抜けた女性漫才コンビ・爛々は、芸歴1年目で「すごいしゃべくり漫才師がいるらしい」とウワサになり、ミキの昴生さんから「天才!」と言われたそうです。ずば抜けた才能を持ちながらも彼女たちが大切にしているのは、等身大の自分でいること。「ライフステージが変わっても、自分たちの漫才を見てくれる人と一緒に歳を重ねたい」と語る爛々の大国麗さん・萌々さんの熱い思いを聞きました。
(『THE W』2022決勝敗退時の心境や、おふたりの幼少期、まさかすぎる結成の瞬間についてはインタビュー第1弾で詳しく語っていただきました→女性芸人コンビ爛々、『THE W』決勝で敗退するも「安心した」ワケは? 結成の瞬間は「チョメでした」)
ミキ・昴生からエレベーター前に呼び出され「お前、天才!」
──デビューしたころ、萌々さんはまだ19歳ですよね?
大国麗さん(以下、大国):そうなんです! よしもと漫才劇場(以下、マンゲキ)に所属するためにしゃべくり漫才をしていたとき、先輩たちの間で「しゃべりがすごいコンビがいるぞ」とウワサになっていたようで、NSCの舞台の動画をチェックしてくれる方や、所属のために新人の芸人が戦う“チャレンジバトル”を舞台袖から見てくださる方もいたと聞きました。
そうやって言われているうちに、私たちはしゃべくり漫才をするコンビなんだと感じました。しゃべくりって、すごく難しいんですよ。コント風漫才のほうがウケるタイミングが作りやすかったり、お客さんがわかりやすかったりするんです。でも思い返せば、NSC時代に萌々ちゃんが最初に作ったのもしゃべくり漫才でしたね。
萌々さん(以下、萌々):コント風の漫才も作ったことあるんです。ただ私たちの場合、ふたりともキャラが濃すぎるので「それなら、しゃべくりでそのままキャラ出したらいいやん」ってことになって。覚えているのは、ミキの昴生さんから劇場のエレベータ前で「ちょい来い」って呼ばれて、「お前、天才!」って言われたことです。めっちゃうれしかったですね。
──ミキの昴生さんは、ふたりにとって大先輩ですよね。それはものすごく励みになりますね。
大国:萌々ちゃんには「私らはやっぱりしゃべくりや」っていう芯があるんです。私はやっぱり勝ちたいから「コント風漫才をやってもええんちゃうか」って考えたこともあるけど、変えなくてよかったと思いますね。
──爛々はいい意味で、昭和から受け継がれてきたしゃべくり漫才師というイメージがあります。
大国:よく言われますが私は意識していません。でも動画を見ていたら、萌々ちゃんに漫才師魂が宿ってるのを感じますね。
なにわのしゃべくりシンデレラガールと「チョメ!」
──大国さんが萌々さんの話をすると止まらないですね。相方への愛情と敬意が伝わってきます。
大国:デビューしたときの萌々ちゃんは19歳のスーパー超新星でした。漫才がうますぎて……まさに「なにわのしゃべくりシンデレラガール」! 20年後に見たら、今流れている爛々の漫才の映像は絶対に伝説になると思います。
萌々:……ありがとう。
──萌々さんが照れてらっしゃるのか小声になりましたね。萌々さん、ネタ作りはどのようにしているのですか?
萌々:日常生活で思ったことを漫才にします。例えばテレビドラマを見てると「娘さんを僕にください」「娘はやらん!」といった場面がありますよね。女性の立場から「娘はモノちゃうねん。モノみたいに言うな」と感じて、そこでひとつのツッコミが生まれます。雑誌で花嫁修業の記事を見て、「なんでわしらばっかり修行せなあかんねん。男もせえや」と思うこともあるし。
大国:ムカつくことを含めて萌々ちゃんの主観や気持ちが軸となって、私はそれを横でどう聞くかというのが、よく爛々がする漫才のスタイルですね。
お客さんを見ていると、私たちの人間味を愛してくださっている方が多いんです。みなさん、コンビの関係性が漫才につながっていることを理解したうえで、爛々の漫才も人柄も愛してくださってるので、いいトライアングルができていますね。
萌々:私たちのしゃべくり漫才は、ウソなく等身大でいることが大切なんですよ。自然にそうなってもいるし、その等身大の私たちを好きでいてくださる方がいるのは、やっぱりうれしいですね。
──THE Wで一躍、話題になった大国さんのツッコミ「チョメ!」はどこから思いついたんですか?
大国:休憩時間に同期の可愛い年下の男子を逆ナンしようと思って「ごはん行こう? 無理? なんで? チョメ?」と誘ったのがきっかけです。最初に披露したのは、爛々を結成して初めてのネタ見せやったかな。
萌々:私が逆ナンの様子を目撃して「ネタで言えや」って。「チョメ」はそれだけでツッコミが成立する、便利な言葉なんです。
大国:THE Wで使う前、不安だったんですが、前日にニッポンの社長の辻さんが肩を押してくださったんです。“チョメ!”は、“ガチョーン”や、“ゲッツ!”と同じ種類の元祖ギャグで、「“チョメ!”だけが流行(はや)ったとしても、お前らには漫才という軸があるから自信を持ってやれ」と言ってくださって。結果として麒麟の川島(明)さんもマネしてくださったし、すごくうれしかったですね。
東京と大阪、史上初のオールラウンダーを目指して
──東京進出は考えていますか?
大国:まだ芸歴7年目で、賞レースで優勝したことがないしテレビで引っ張りだこでもない。加えて今は関西の賞レースの出場資格もあります(※お笑いの賞レースは芸歴制限のあるものが多い)。まずは1歩1歩進んで長く売れたいし、1人でも多くの人に愛されたい。だから今は、私たちのフィールドである大阪で頑張りたいです。
萌々:お互いにすぐに東京とは思ってないよな。
大国:そう。賞レースで優勝して実力を認めてもらってから初めて東京に行って、より多くの人に知ってもらう。東京はいろいろな発信ができるし、そこから私たちの可能性が増えることもあるはずだとは思っています。
萌々:頑張って東京でも大阪でも活躍したい。ほんまはめっちゃ大阪におりたいんで、大阪おっても東京の仕事もバンバンもらえる芸人になりたいですね。
大国:史上初のオールラウンダーやな。
──劇場の出番も限られているし、芸人が一度、東京に進出したら大阪に戻るのは難しいと言われています。まさに新たな世界線ですね。ちなみに、憧れの人はいますか?
萌々:トムとジェリーです。
大国:浜崎あゆみさんです。
──予想外……!
萌々:トムとジェリーってフリとボケが完璧なんですよ。音がなくても面白い。あの2人ってケンカしていてもほほえましいし、爛々もそれを目指せたらいいな。
大国:萌々ちゃんは芸歴3年目になってから、私がすすめてようやくM-1を見たんですよ。
萌々:吉本に入ってからは憧れの芸人さんができたらいいなと思いました。でも実際に先輩にお会いすると「学ばせていただきます」という感覚になりました。テレビで見て憧れていた芸人さんも、自分が漫才師になった瞬間、尊敬という概念に変わりましたね。
大国:私の憧れの浜崎あゆみさんは、見た目はキラキラした可愛いギャル系の歌手ですよね。ところが歌詞を見ると孤独を感じるんです。まるで私たちの気持ちを代弁してくれているような……人としてリスペクトしています。
「等身大の私たちが、漫才でみんなの気持ちを代弁できたら」
──見る人、聞く人の気持ちを代弁するという意味では、歌と漫才は共通した部分がありそうですね。
萌々:漫才で「爛々がお客さんの代弁者として、言葉ぶつけるで」って認知されたら面白いですね。だから今の私は等身大の25歳で、(大国さんを指して)32歳ですけど……。
大国:(小声で)年齢言わんといてくれる? 悪いな。
萌々:そんな(気にするほど)年上ちゃうやろ!
──爛々は歳の差コンビと言われていますが、冷静に考えると32歳は若いですよ! 今後、結婚や出産などでライフステージが変わる可能性がありますが、それについてはどう考えていますか?
萌々:そのときの私らとお客さんも一緒に年を重ねられたらええな、私らはみんなと同じやでっていうスタンスでおりたいです。例えば、子どもができたら、子どもがいるからこそ得られる説得力やファン層もあると思うんで。
──片方に子どもがいて片方はいない、そんなコンビもいますね。
萌々:その両方の意見が交わるって漫才師としてすごくいいですね。私たちどっちも結婚願望があるし、子ども産むとしたらどっちが先かとか、たまに考えます。
大国:私はなんでも言うこと聞いてくれるような、年下の可愛い男の子と結婚したいです♪
萌々:……。
──ファンは男性が多いですか?
大国:いえ、女性が多いですね。
萌々:さっき、爛々は昭和のしゃべくり漫才のようだって話をしましたが、ゆっくりと年齢層も広がってきて、ファンの女の子がお母さんやおばあちゃんを連れて来てくれることがあって、うれしいです。若い人だけじゃなくて、「今の若い子の笑い、もうわからんわ」と言ってるおっちゃんとかも「おっ」って驚く感じの、聞きなじみのある音を漫才で出したいと思っています。
──老若男女問わず、たくさんの人に爛々さんのしゃべくり漫才を見てほしいですね。最後に読者へのメッセージをお願いします。
萌々:公式のYouTubeからでもいいので、ご覧いただいて、 “あなたと同じぐらい頑張って命燃やして生きてる女、ここにおるで”って伝えたい。肩組んでるダチンコみたいな感覚で気軽に見てほしいし、会いに来てほしいです。
大国:来てくれないとチョメ!
(取材・文/若林理央)
【INFORMATION】
爛々ライブ【MOOD】
日時:2023年5月25日(木) 開場20:30/開演20:45
場所:道頓堀ZAZA POCKET’S
ゲスト:もも
【PROFILE】
爛々 ◎大国麗と萌々によるお笑いコンビで、しゃべくり漫才を得意とする。NSC大阪校39期を次席で卒業。『吉本に生き、吉本で死ぬ女』というキャッチコピーを持つほか、萌々が漫才のはじめにする挨拶「ハー!」や、大国がツッコミ時などに発する「チョメ!」など、定番のフレーズがある。『女芸人No.1決定戦 THE W』2022では初の決勝進出を果たす。主によしもと漫才劇場にて活動中。
◎萌々さんTwitter→@kutufumuna / Instagram→ranran__momo
◎YouTube『茶の間で爛々』→https://www.youtube.com/channel/UCvuFfPGrwh9k3OpxspPylTQ