例えば、何かの面接やオーディション、ビジネスコンペなどで、自分の実力を問われるような質問をされたとき。あなたがそれに、どう答えるかで「選ばれるか、選ばれないか」が決まることがあります。
さて、そんな局面では、いったいどんな回答をするのが正解なのか?
これは、『パルプ・フィクション』『キル・ビル』などの作品で知られる映画監督・クエンティン・タランティーノがまだ新人俳優のとき、映画のオーディションで「選ばれるために」イチかバチかの大勝負に出た話です。
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オーディションのエントリー用紙に爆弾級のハッタリ
アメリカのハリウッドでは、映画が企画されると、その出演者の多くをオーディションで選びます。
アメリカには、そんなオーディションを次々と受け、なんとか映画への出演を勝ち取ろうとする無名の役者がたくさんいるのです。
のちに、映画監督・個性派俳優として確固たる地位を築くクエンティン・タランティーノさんも、かつてはそんな無名俳優のひとりでした。
さて、そんな彼が、ある映画の出演をかけたオーディションに参加したときのこと。彼は、エントリー用紙の「プロフィール記入欄」にある爆弾を仕掛けました。
たぶん、面接官なら気がつくに違いないと踏んで、あるハッタリを忍ばせたのですが……。
さて、何を書き込んだかわかりますか?
なんと彼、「過去に出演したことがある映画作品」という欄に、『ゴダールのリア王』と書き込んだのです!
ゴダールといえば、フランスを代表する映画監督のひとり。そんな巨匠の映画に出演したことがあるとなれば、有象無象の無名俳優たちのなかで一目置かれて当然です。もちろんこれは、彼のハッタリ……というか、ウソっぱち。
“プロフィール欄にそんなウソを書いて、もし、面接でツッコまれたらどうするの?”って、心配になります。
しかし、当のタランティーノさんは、後々この件についてシレッとこう言っています。
「『ゴダールのリア王』なんて、誰も見てないからバレなかったよ」
たしかに、名監督の有名な作品ではありますが、いかにもハリウッドのスタッフたちは見ていないタイプの作品です。
この『ゴダールのリア王』というセレクトが、実にお見事!
自分に「売り」や「強み」がないときの必殺技
面接やオーディション、ビジネスコンペなどで、自分にこれといって「売り」や「強み」がないとき。
このときのタランティーノさんのように、ハッタリをかますのは「大いにあり」だと思います。
まあ、すぐにバレてしまうウソはまずいかもしれませんが、“できるかな?”と思うことを「楽勝です!」と答えるのは、“選ばれるため”には必須の回答ではないでしょうか。
だって、何しろ、選ばれなければ話にならないのですから!
私もかつて学生時代、あるクイズ番組の予選で、筆記テスト通過後の面接において「もし番組に出していただけるなら、何でもやります!」と言って、そのひと言で出演を勝ち取ったことがあります。
そのクイズ番組は少しバラエティ色の強い番組で、出演者たちが童話の主人公の仮装をして出演するという回があり、ディレククターは、面接で「何でもやります」と言った私の言葉を思い出して、出演のオファーをくれたのです(ちなみに本番では、裸の王様のふん装をして出演しました! ひーっ)。
いまでも、出版社の編集者さんから、「〇〇をテーマにした本を書くことは可能ですか?」と質問されたとき、よく「得意中の得意です!」なんて答えて、執筆のオファーをいただくことがあります。
そんなハッタリで、編集者さんがダマされて……ではなく、安心して私に原稿を依頼してくれるのであれば、ありがたいではありませんか!
いただいたテーマは、あとからゆっくりと調べて、編集者さんの期待にお応えすればよいのです。
自分に「売り」がないときは、ハッタリで勝負! 「選ばれてナンボ」のここいちばんの場面では、一発、ぶちかましちゃってください。
(文/西沢泰生、編集/本間美帆)