今年1月にリリースしたデジタルシングル『Baby you』が、SNS総再生回数20億回を超える話題のシンガーソングライター・有華さん。心弾むハッピーなラブソングやキュートなルックスに加え、ライブのMCなどで見せる“大阪のおばちゃん”風の親しみやすく愛すべきキャラが若い世代を中心に刺さっています。
4月12日に、NHK夜ドラ『おとなりに銀河』の主題歌『HAPPY DATE』をリリース。インタビュー後編では、10年近い下積み時代を取り戻すかのように活躍の幅を広げる有華さんに、曲作りのこだわりや前向きに進み続けられる原動力について伺いました。
(インタビュー前編では、有華さんが夢をかなえるために書き続けたノートの一部や、メジャーデビューまでの思いをお伺いしています。→記事:SNS総再生回数20億! Z世代を中心にバズり中シンガーソングライター有華の素顔は「コテコテなにわ女子」)
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ドラマ主題歌は昔からの夢のひとつだった
──ドラマの主題歌が決まったときは、どんな気持ちになりましたか。
私は小さいころからテレビドラマが大好きで、ドラマ主題歌を担当することは長年の夢でした。あきらめずに続けてきたからこそ、こうしたステキな瞬間にも出合えるんだなって本当に嬉しくなりました。
楽曲はCHIHIROさんがもともと温めていたものをもとに、歌詞を共作させていただきました。大好きな人と深夜のコンビニに出かけるひとコマを描いた、ほのぼのとしたラブソングなので、リアリティにこだわりたいなと思いました。
なので、“私はラテ 君はブラック/帰り道いつものコーヒーで乾杯”という歌詞のように、コンビニでいれたてのコーヒーを買う、私の最近の習慣に着目して、今っぽさを取り入れられたかなって思っています。
逆に、“君といれたら最高です”という歌詞は、私にとっては面と向かってそうそう言わない言葉だなと思ったし、逆に歌だから伝えられる素敵な言葉でもあるので、甘くなりすぎないよう歌唱のバランスに気を配りました。
レコーディングでは小節ごとに区切ったりしながら歌うこともできますが、ライブではそうはいきません。どこで息継ぎしようか、いまからヒヤヒヤしています(笑)。
曲中のこだわりは初挑戦のラップとコンビニ店員のセリフ
──おっしゃるように言葉数が多いですし、ラップにも挑戦しています。音楽的にチャレンジな楽曲だったのでは?
そうなんですよ! レコーディングでは、作曲者のCHIHIROさんからリズムの取り方などをていねいに助言していただきましたし、英語の歌詞は、日本語っぽくならないよう発音にも気を配りました。
洋楽的な要素が強い曲調であっても、歌詞を見ない方にも言葉がちゃんと届くように歌う難しさを感じましたね。ただ、今回持参したノートに“もっと歌がうまくなる”という目標を書いているので、こうしたチャレンジもそのための大切な経験だと思って、前向きに頑張ることができました。
──曲中に登場するコンビニ店員さんのセリフも有華さんが?
気づいていただけました⁉ 嬉しいです。実は、このセリフもめちゃめちゃこだわったんです。初めは、元気な店員さんをイメージしながら言ってみたんですが、なんかピンとこなくて。
深夜2時のコンビニっぽさを出すために、「いらっしゃいませ~」という言葉が聞き取れるかどうかギリギリの感じで、だるそうに言ってみました。そこにもぜひ注目してほしいですね(笑)。
メジャーデビューから3か月がたち生まれた心境の変化
──念願のメジャーデビューから3か月がたちますが、思い描いていた日々と現実とのギャップを感じることはありますか。
チームが一丸となって、“有華”というアーティストを支えてくださっているんだなと感じます。デビュー前は、自分で作った新曲を知ってもらうには、自分で工夫して広めなければ誰にも届きませんでした。また、ライブが決まっても、自分から声をかけなければ誰も来てもらえませんでした。
それが当たり前だったのに、デビュー後の3月に回ったワンマンツアーでは、私が知らないところでスタッフのみなさんが、有華のために動いてくださっているんだなとすごく感じました。すごくありがたいし、心強いなと思いました。
──そのライブのMCで、「もっと大きな会場にみんなを連れて行く」と宣言していました。
これもデビューしてから変わったことです。以前の私は、心の中で思っても“実現できないかも……”と後ろ向きになって、ファンのみんなに言うことができませんでした。
でも、デビューしてから少しずつ私を知ってくださる人も増えている実感も持てるようになり、ひとり夢に描いていた日本武道館や大阪城ホールのライブも、もしかしたら実現できるかもと思えるようになって。だから、自然とMCで口から出たんだと思います。
ノートに書いたあの日の夢は、いまも日々更新されていく
──さらに新しい夢ができたのですね。
はい。同世代の中には、“子育て中だからライブに行けない”とか“結婚したからやりたいことができない”と、悩む人もいます。難しい状況だと思いますし、私も以前は“そうだよね”って思っていました。
でも、音楽活動を続けながらいろんな方と出会ううちに、お子さんを育てつつ自分の夢もかなえたり、キャリアを築いている人もたくさんいることに気づいたんです。自分のいる環境とか年齢に縛られて、やりたいことを手放すのはもったいないですよね。
私は幸運にも、親や友達から「もういい歳だから、やめたら」と言われたことはありませんが、やっぱり「まだやってるの?」という無言のプレッシャーを感じることもありました。そんなときは、気づかないふりでスルーするのがいちばん(笑)。
そういう鈍感力も、ときには必要かもしれませんね。だって、誰でもない自分の人生だし、自分で納得してないうちは行けるところまで行ってみるべきじゃないかなと思うんです。
とことんやって夢がかなえば最高ですし、仮にかなわなくても後悔は残らないと思うから。恋愛だって元カレを引きずったままじゃ、次の恋はうまくいきませんよね。燃え尽きるまでやり切った後に、すとんと腹落ちすることもあると思うんです。
──では、最後に今後の夢や目標を教えていただけますか。
先ほども言ったように、私には心強いチームができました。そのおかげで、夢がかなっていく喜びを感じていますが、だからこそ自分が本当にやりたいことに対していままで以上にしっかりと向き合って、ブレずに歌い続けたいですね。
私の場合は特に、SNSをきっかけに知っていただくことも多く、ありがたいことですが、「○億回再生」という文字を見ても、あまりに桁が大きすぎて実感できない部分もあるんです。
それよりは、電車に乗ったときに偶然近くに座っていた男の子たちが私の歌を聴いてくれていたり、街中で声をかけていただける瞬間が何よりも尊くて。実感のある一人ひとりに対して、ていねいに歌を届けることを大事にしたいですね。
(取材・文/キツカワユウコ、編集/本間美帆)
【PROFILE】
有華(ゆか) 1994年生まれ、大阪府出身。幼少期からピアノ・合唱を始め、18歳のときにシンガーソングライターとして活動を始める。2022年4月に配信した『Partner』はストリーミング総再生5000万回、SNS総再生回数13億回、LINEリアルタイムランキング1位を記録。2023年1月にメジャーデビューを果たし、同月にリリース配信の『Baby you』はTikTokでの投稿数が国内外合わせて50万本を突破し、SNS上の楽曲の再生数は20億回を突破。ストリーミング再生数も全世界で1,500万回を突破し、SNSで大きな話題となった。YouTube→@yuka__song、Instagram→@yuka__song