《♪立ち上がろうとする君に捧ぐ 君への応援歌 全力注ぐ~》
これは2017年3月にリリースされた、HIPPYが歌う楽曲「君に捧げる応援歌」のサビ部分で、ハスキー声での熱唱が胸に響くナンバーだ。HIPPYは広島県出身のシンガーソングライターで、’15年にデビュー。’17年まで4枚のアルバムまたはミニアルバムをリリースし、過去のオリコン最高位は週間130位。今も地道にライブ活動を続け、地元・広島では、テレビやラジオ番組、舞台への出演、そして“原爆の語り部”として幅広く活躍中だ。
プロ野球の登場曲に11選手が使用、ダウンロードランキングも過去最高位に!
そんなHIPPYが不屈の精神を歌った「君に捧げる応援歌」は、アスリートの間で徐々に話題となり、’20年にはプロ野球の登場曲として11選手に使われる楽曲に。これはこの年の最多記録だった。その後もじわじわと人気が広がり、YouTubeの公式動画の累計再生回数は2月末までに約1200万回、TikTokの関連動画は累計6700万回再生となっている。
特に、TikTokに投稿されているもので多いのが、スポーツや課外活動をする学生たちが円陣を組んで「君に捧げる応援歌」を歌っている動画だ。それだけ若い世代に“リアルなメッセージソング”として届いているのだろう。
#君に捧げる応援歌
そして、本作のヒットの傾向として興味深いのが、サブスクや動画再生回数よりも、
今やサブスク全盛時代の中で、あえてダウンロードがヒットしているというのは、(1)サブスクをまだ使っていない若い学生(及びその親世代)が購入している、(2)音楽のヘビーリスナーじゃないユーザーが1曲単位で購入している、(3)楽曲をスマホでいつでも聴けるようにしてお守り代わりにしているユーザーが多い、などの要因が考えられるだろう。
HIPPY自身も今回のヒットに感激「これからも一生懸命に歌っていきます!」
このようなヒット現象について、HIPPY本人は次のようにコメントしてくれた。
「『君に捧げる応援歌』は、年齢も重ね、生活も厳しく次の道を選ぶしかないのかなと思ったときに、音楽活動に終止符を打つべく自分に向けて書いた曲でした。
そんな中で、この(ヒットしつつある)状況に気づいてなかったので、僕自身ビックリしています。この曲に出会ってくださった一人ひとりが自分の曲にしてくださり、大切な方に送ってくださり、人から人へ、大切につながっていったんだと思っています。悩み抜き諦めた思いがこんなにも広がり、心からうれしく思います。
音楽を諦めかけた僕でしたが、今も歌い続けていられることに心から感謝しています。これからも変わらずコツコツ歩んでいきながら、一生懸命に歌っていきます!」
’08年の「キセキ」(GReeeeN)、 ’10年の「あとひとつ」(FUNKY MONKEY BABYS)など、野球関連のエールソングは、今も定番として長く愛されている。強いメッセージ性を持つHIPPYの「君に捧げる応援歌」が、そんな存在になる可能性は大きい。
ちなみに、3月1日には新曲「We Can Make It」を配信リリース。こちらは、横浜DeNAベイスターズ牧秀悟選手のオリジナル登場曲となっており、気分を高揚させるアップテンポのナンバーだ。
HIPPYがブレイクに近づくことは、長年の夢を追い続けるすべての人たちの励みになるはずだ。
(取材・文/人と音楽をつなげたい音楽マーケッター・臼井孝)