映画『君の名前で僕を呼んで』の日本公開5周年を記念した朗読劇とトークショーイベントが、1月27日〜29日に東京・恵比寿ザ・ガーデンホールで開催される。その両方にキャストとして登場する醍醐虎汰朗と阿部顕嵐が、初挑戦の朗読劇に向けた意気込みをはじめ、このインタビューで判明したプライベートでの共通項について語った。
ルカ・グァダニーノ監督がメガホンを握った本作は、1980年代における北イタリアの避暑地を舞台に、17歳の少年エリオ(ティモシー・シャラメ)と24歳の青年オリヴァー(アーミー・ハマー)による、生涯忘れられない恋の痛みと喜びを描いたひと夏のラブストーリー。原作は、ニューヨーク市立大学大学院センターで比較文学を教えているアンドレ・アシマンの同名小説だ。
第1部の朗読劇では、醍醐がエリオ、阿部がオリヴァーを演じる。脚本・演出は『私の頭の中の消しゴム』などで知られる朗読劇の名手・岡本貴也。音楽監督は映像や舞台・TVアニメなどの劇中音楽を手がけた土屋雄作が務め、永田ジョージ(ピアノ)、眞鍋香我(ギター)とともに劇世界を彩る。醍醐と阿部は、第2部の「映画スペシャルトーク」にも登壇。司会に映画ライターのよしひろまさみちを迎える。
★公式サイト:https://culture-pub.jp/cmbyn-5th/
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朗読劇への挑戦は、役者としての武器や引き出しを増やす感覚
──映画『君の名前で僕を呼んで』が日本で公開されたのは、2018年4月。5年がたとうとしているいま、朗読劇やトークショーに臨むおふたりにとって、原作映画や登場人物に対してどんなイメージを抱いていらっしゃいますか?
醍醐 先ほどキャスト・スタッフさんと顔合わせをしたんですが、脚本・演出の岡本(貴也)さんが「BLって言葉自体がもう古いよね」とおっしゃっていて。この映画を誰かに説明するとき、瞬時に理解してもらいやすいからという理由でどうしても「BL」「同性愛」みたいなレッテルを貼りがちだと思うんですが……僕にはエリオとオリヴァーの「純愛」に見えて。
阿部 僕も同じ。性別を超えて「初恋」が繊細に描かれている作品だと思いました。セリフや言葉数が少ない映画で、ふたりの表情や意味深に切り取られた物撮りのカットから観客のイメージをふくらませるような手法が素敵だな、って。ハッキリ描かれないのが、とても効果的というか。
醍醐 わかる。エリオを演じたティモシー・シャラメの芝居がすごくよかった! 朗読劇のオファーをいただいてから映画を拝見したんですが、「すっごい役者がいるんだな」って衝撃を受けました。正直言うと、シャラメの芝居ばかり見すぎて……初見は物語や作品に込められたテーマを楽しむことができないくらい、圧倒されました。
阿部 僕が演じるオリヴァーは最初、女性慣れしているカッコいい人物に映ったんですよね。でも年下のエリオを前にすると、初恋のような純粋さを見せる。恋愛ものとして不自然に感じさせないナチュラルさが、アーミー・ハマーの演技にはあったような気がします。
──そのように受け止めた映画を、イベントで日本語の朗読劇として立ち上げます。おふたりは朗読劇に初めて挑戦されるそうですね?
醍醐 はい。お客さんは僕たちの声だけを聴いて、果たして情景を思い描けるのだろうか……と不安になりました。実は朗読劇を拝見したことがなく、どんなアプローチをすれば効果的なのかすら、わからない状態で。率直に言って怖い挑戦ですが、今から見解を深めて精一杯努めたいと思います。
阿部 僕も初めての朗読劇だし、そもそも「朗読劇って何?」くらいの状態。でも、それが逆にいいんじゃないかな。型にハマらないものが、このふたりならできる気がしてワクワクしているけどね。
──おふたりがこれまで取り組んできた演劇やミュージカル、ライブパフォーマンスで培った歌やダンス、身振り手振りを大きく使う芝居という「武器」をあえて封じるステージに挑戦することに、どのようなやりがいを感じてオファーを受けられたのでしょうか?
醍醐 朗読劇ってビジュアル要素が少ないぶん、解釈やイメージがお客さん一人ひとり異なることが魅力だと思うんです。演じる僕の中でも、いくらでもインスピレーションを湧かせることができる。「声色」だけで劇世界に没入していただけるようになるには、どうしたらよいのか。芝居以外にも武器を増やす感覚で取り組みたいと思いました。
阿部 表現方法を制限されることは、僕にとって喜ばしいことなんですよね。演出の岡本さんに話をお聞きしたら、動きも立つか座るかくらいの最小限らしくて。その中で役の人物になりきって映画の世界観を最大限に伝えることは、役者としての引き出しが増えそう。そこに期待しました。ご覧いただく方には「空白」というか、想像させる「隙」を与えたい。映画のバックグラウンドを、僕らの声色だけでどう感じさせるか。そこが大事なんじゃないかな。
醍醐 僕も「余白」を大切にしたい、って考えてた! 「これはいま役がこんな感情になっているシーンですよ」って説明しすぎないようにしたいんですよね。簡単にイメージしてもらえる朗読劇というより、お客さんの想像力も信じて委ねたい。そのために、僕はお客さんの想像力をかき立てられる表現ができたらいいな、と考えています。
サウナで小さな達成感を味わい、メンタル・フィジカル不調を予防する
──おふたりは今日が「初めまして」ですか?
阿部 一度、食事をご一緒したことはあるんですが……あんまり深く話せなかったよね。
醍醐 うん。「二度目まして」なんですが、実質「初めまして」に近いよね。
阿部 僕は、虎汰朗がハクをやっていた舞台の『千と千尋の神隠し』を見に行ったよ。世界観に染まっていてカッコよかった! あの中で違和感なく板の上に立っているだけで、もう役者として素晴らしい存在感だなって。
醍醐 ありがとう。僕は友人の板垣瑞生から「とってもおもしろい人だった」って顕嵐くんの話を聞いていたこともあって、今日こうしてがっつりお話しすることができて改めて嬉しかったです。瑞生が出ていた『ツーアウトフルベース』で、顕嵐くん主演を務めたでしょ? その撮影エピソードをいろいろ聞いていて。
阿部 どんなこと聞いたんだろう(苦笑)。でも今日の顔合わせで、だいぶ距離が縮まった気がする。僕のほうが虎汰朗より年上だけど、速攻で「タメ語でいいよ」って言ったし。
醍醐 さっそくお言葉に甘えさせてもらってる(笑)。ビジュアル撮影のヘアメイクもふたり一緒の時間だったので、いろんな話ができたよね。
阿部 そうそう、敬語だと打ち解けにくいしね。改めてよろしく。
──ちなみにおふたりは舞台に映像にライブとマルチな芸能活動を続けるにあたって、どのようにメンタル・フィジカルを整えていらっしゃるのでしょうか?
阿部 サウナですかね。行きすぎを自覚しています(笑)。
醍醐 マジで? 僕も超好きです! 今朝もサウナに行ってきましたよ。
阿部 最高じゃん! じゃあ今、整って眠いんじゃない?
醍醐 いや、大丈夫。リラックスモードではあるかも。
阿部 完璧な朝の過ごし方だわそれ。僕は港区の●●によく行く。
醍醐 いいね! ●●健康センターも好き。
阿部 爆風ロウリュが有名だよね。やばい、この現場が終わったら入りたくなってきた(笑)。
醍醐 今度どっか一緒に入りに行こうよ!
阿部 いいね、行こう行こう!
──(サウナ情報の交換モード突入を制して)思わぬ共通項が見つかったところで、サウナの魅力を聞いてもいいですか?
阿部 疲れたときこそ、その魅力を発揮するのがサウナだと思っていて。自分にMな気質があるのかどうかわかりませんけど、「自分との戦い」を制した瞬間に達成感を覚えます。サウナに入る時間は当日の体調に合わせて決めるのがよいとされているんですが、僕はあえて「今日は●分耐久だ」と決めてその時間を過ぎるまで絶対に出ないことがあって。
醍醐 それ、身体にあんまりよくない入り方って言われてるよね。大丈夫なの?
阿部 知ってる。でもメンタルもフィジカルも満身創痍のときに、あえてやるの。そうすると小さな達成感があるでしょ? ささやかな成功体験を積んで自信に変えるんだよ。もちろんヤバそうになったら出るけどね。
醍醐 ちょっとわかる。サウナって自律神経が整うからね。コロナ禍に入って、どんなにポジティブな人でも落ち込むことがある。みんな人前で見せていないだけで、どこかで精神面に不調をきたしているんだな、ってことに直面して。でもサウナに定期的に入っておけば、本当にヤバいところまでメンタルが落ちないことが最近わかってきたの。
阿部 サウナの何がそうさせるんだろうね?
醍醐 僕には効果があったので一度調べたのね。そうしたら、身体の機能をコントロールする自律神経は日常生活を送るだけでは動かないらしくて。けどサウナ→水風呂→休憩のサイクルを数回経ることによって、自律神経を構成する「交感神経」と「副交感神経」のバランスが整う。これがメンタルにもいいみたい。
阿部 へぇ、そうなんだ!
醍醐 たしかに実際、サウナ好きに卑屈でネガティブな人っていないなって。少なくとも僕は出会ったことがない。
阿部 そうだね。どちらかといえば「大丈夫っしょ!」って大らかな人が多い気がする。
醍醐 でしょ? だから意識的に入るようにしているんだよね。ねぇ、どのサウナ入りに行く?
(取材・文/岡山朋代、編集/福アニー、スタイリスト/MASAYA(ADDICT_CASE)(醍醐)、ヘアメイク/中元美佳(醍醐)、荒木さき(ADDICT_CASE)(阿部))
【Profile】
●醍醐虎汰朗(だいご・こたろう)
2000年、東京都生まれ。2019年に公開された新海誠監督の映画『天気の子』で主人公・森嶋帆高を演じ、第14回声優アワード新人男優賞を受賞。ほか、連続テレビ小説『舞いあがれ!』、映画『野球部に花束を』『カラダ探し』、舞台『弱虫ペダル』『ハイキュー!!』『千と千尋の神隠し』に出演するなど活躍の場を広げている。
●阿部顕嵐(あべ・あらん)
1997年、東京都生まれ。俳優としての活動を中心に、映画、ドラマ、舞台と幅広い作品に参加。代表作としては、主演を務めた映画『ツーアウトフルベース』が全国劇場公開し、主演ドラマ『さよならハイスクール』もHuluにて現在配信中。また、『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stageや、『October Sky -遠い空の向こうに-』等の舞台作品にも多数出演している。7人組アーティスト7ORDERのボーカルとして音楽活動も全力で取り組む傍ら、自身の25歳の誕生日を記念して実施した25時間オリジナル配信プログラム「24+1」のプロデュースや、公式ファンクラブ「I OF THE STORM」の設立、オリジナルグッズの企画開発など、活動は多岐にわたる。