いきなりですが、クイズです。
あなたと隣人が同じ日に、まったく同じ不用品を家の前で売るとします。あなたがその品につけた値段は100ドル、隣人がつけた売値は40ドルでした。商品の諸条件はまったく同じだとして、値引きをすることなく、その品物を100ドルで売るにはどうしたらよいでしょう?
これは、なぞなぞではなく、まじめなクイズです。答えは、とても現実的。
なぜって、実はこれ、過去にGoogle社の入社面接で実際に出題されたものなのです。
さあ、考えてみてください。
なぜ、クイズのような問題が入社面接に?
こんな問題がGoogle社の面接に使われたと聞いて、あなたは、どう思いましたか?
「えっ? こんな質問が面接で?」って思いましたか。
それとも、「さすがにGoogle社、ユニークな質問をする」って思ったでしょうか。
でも、こうしたユニークな質問は、なにもGoogle社の入社面接に限った話ではないのです。
海外の一流企業の入社面接や、一流大学の受験問題には、しばしば、このような「実際に起こりうる場面の解決策」を考えさせるものが出題されています。
なかには、まるで推理クイズのようなものや、とんち、パズルのような問題も。
つまり、海外の一流企業や一流大学は、名探偵コナンや一休さんのような人材を求めているのです。
インターネットで、どんなことでも瞬時に調べられるようになった現代、幅広く一般常識を知っているだけの人は必要ありません。求められるのは、「AIがたどりつけない発想力や課題の突破力を持った人材」なのですね。
さて、冒頭のクイズに戻りましょう。
あなたと隣人が同じ日に、まったく同じ不用品を家の前で売るとします。あなたがその品につけた値段は100ドル、隣人がつけた売値は40ドルでした。商品の諸条件はまったく同じだとして、値引きをすることなく、その品物を100ドルで売るにはどうしたらよいでしょう?
普通なら、隣人よりも安い値段で売ればよさそうです。でも、現実世界では、それはただの価格競争でしかないし、そもそも、出題のなかで「値引きをすることなく」と値引きは禁止されてしまっています。
では、いったい、どうしたらよいのでしょう?
私は、この問題を知ったとき、「自分の商品に魅力的なオマケをつける」という答えを考えました。例えば、その不用品に商店街の値引き券をつけたり、有名人のサインを添えたりすれば、すぐ隣で同じ品物を40ドルで売っていても、こっちの品を買ってもらえるのでは。
自信満々に答えを見ると、ものの見事に不正解でした(笑)。考えてみれば、おまけをつけるのは、「商品の諸条件はまったく同じだとして……」という部分に違反しているのかもしれません。
Google社が用意していた解答は、この品物にオマケや付加価値をつけることなく、100ドルで売ることができる方法でした。
では、そろそろGoogle社が用意していた答えを紹介しましょう。
実社会でも使える「答え」とは
Google社が用意していた答えはこちら。
「隣人の商品を40ドルで買ってから、自分の品物を100ドルで売る」
なるほど。これなら隣には、もう同じ商品は存在しませんから、堂々と100ドルで売ることができます。
「売り手」である自分が、必要に応じて「買い手」に変わるというところが発想の飛躍ですね。
それに、隣から買った品と、もともと自分が用意していた品の両方を100ドルで売ることができれば、隣人から40ドルで買ったとしても、160ドルも儲(もう)けることができます。
実社会でも、大手企業が中小企業の市場に参入するときに、中小の売る商品を買い占めてしまい、中小が商売できなくなったところで市場を独占して、定価で売るなんていうこと、ありますよね。
あるいは、大手が市場に参入してすぐに思い切った安売りをして、中小のお客を奪ってしまい、中小が市場撤退したあとで、定価売りに切り替えることだってあります。
答えは、ちゃんと実際の市場での戦略に応用できるものになっていたのです。
ちなみに、質問のすべてに必ずしも明確な解決策があるわけではなく、例えば、YouTube社では「魚のいない海で魚を釣り上げる方法は?」と聞いて、「魚がいないことがわかっているなら、無駄な時間をかけずにすぐにあきらめる」という回答を正解にしていることもあったそうです。
こうした質問。日本人なら、頭が凝り固まった大人より、最近の「謎解き」ブームで鍛えられた子どもたちのほうが強そうです。
今はまだ、日本の企業は、面接で「学生時代に頑張ってきたことは?」とか「あなたの長所は?」なんて聞いていますが、今後は、受験者の発想力を問う質問が増えてくるのかもしれません。
(文/西沢泰生)