中村アンさんと聞いて、「Healthy Beauty」という言葉が思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか。いつも笑顔がまぶしい印象の中村さんにも、人知れず心から笑えなくなった時期もあったそう。
インタビュー前編では、初の舞台出演となる粟島瑞丸さん主宰の演劇集団Z-Lionの新作公演『笑ってもいい家』について、公演前の心境や想いを語っていただきました。後編では、落ち込んだときの中村さんの心と身体の整え方についてや、実は〇〇女子だった?という「意外なイチメン」など、「フムフム」なことから「へ~!」と思うことまで、たくさんお伺いしてきました!
落ち込んでも、笑っていれば上向きになる
──中村さんは、いつもはつらつとした笑顔の似合う方という印象が強いのですが、そういうイメージに悩んだり「本当はそうじゃないのに」と思ったりしたことはありますか?
ありますよ~! お仕事などでご一緒した方からは「本当は違うのにね」と言ってくれることもあって「本当の私に気づいて、わかってくれる人がいるんだな」と思うこともあります。とは言え、基本的にはポジティブだし、タフだと思います。
──時には笑えない、笑いたくないこともあったかと思います。これまでで一番「笑えなかった」ときのエピソードを教えてください。
もちろん私も皆さんと同じように、気持ちのアップダウンはあります。先ほど仰っていただいた「いつも元気で、笑っている」というイメージが先行していたころは「それだけじゃないのにな」と思うこともありました。
でも、そうなると自分の強みがなくなってしまうので、落ち込んだり悩んだりしても、笑っていればなんとか気持ちを上向きに持っていける気がするんですよ。それに、私はお仕事していると自然に笑えるんです。それでもダメな時は、ひたすら落ち込むって感じですね。
──どうしてもしんどい時は、一度とことん落ち込んでみるんですね。
きっと、落ち込むことの根本的な原因は自分にあるので、今はちょっと後ろ向きになっているだけで「まぁ、そういう時もあるよね」と言い聞かせてみる。それで何日か経つと、自然と気分も少しずつ上がってくる気がするんです。
ハーブやカッピングetc.しんどい時はプロの力を借りる
──「頑張りたいけど頑張れない自分」に落ち込むこともあるのですが……。
「何であの時はあんなに頑張れたのに、今はできないんだろう」って思うこと、ありますよね。メンタル的にしんどい時は、何か違うことに気持ちを向けるのもいいと思います。好きな映画や音楽を見たり聞いたり、何か食べたり飲んだりするのでもいいですよね。
心が疲弊すると体調も崩しやすいので、私はそういう時、調合してもらったハーブのお茶を飲んだり香りを嗅いだり、身体にたまった老廃物を出すためにカッピングをしたりすることもあります。自分だけではもう無理だなと思った時は、プロの方の力を借りるのもいいと思いますよ。
──自分だけで全部を何とかしようとしない、と思うだけで少し楽になれる気がします。
あとはいったん、人と距離を置いてみるのもいいですよね。一度自分だけで考えてみたら、整理できることもあるし、一人でいるとだんだん寂しくなってくると思うので(笑)、誰かに話したくなったらすればいいんじゃないかな。でも、あまり無理をしないのが一番ですよ。
──ホルモンバランスの乱れによって体調やメンタルが不調になることもありますよね。
私も20代の時はあまり思わなかったんですけど、最近は天気や気圧にも左右されることがあるんです。特に梅雨の時期は辛いので、今お稽古があってちょうどよかったです(笑)。やることが目の前にあったほうが、気持ちの面でもちょうどいいんですよね。結局、自分のメンタルは自分でしか立て直せないですから。そういうコントロールの仕方を、私も最近わかるようになりました。
──そういった心と身体の整え方は、30代になって徐々にできるようになっていったのでしょうか。
そうですね。「なんかやる気が出ないな」「なんでもっと頑張れないんだろう」と愚痴っぽくなってしまう時は、思っていることを紙に書いて原因を考えてみることもするようになりました。
今まであまり見ることがなかったアニメのセリフにハッとさせられた
──今お話しいただいたことが、今まさに私が直面している悩みでして。
みなさん、何かしら抱えていますよね。私はそれまでほとんどアニメは見なかったんですけど『鬼滅の刃』の煉獄(杏寿郎)さんのセリフに「君が足を止めて踞(うずくま)っても時間の流れは止まってくれない」というセリフにハッとさせられました。
私も当時はそんなことを思っていて「別に私が止まったところで世の中の時間は止まらないよね」って思えたんです。やる気が出ない時って、投げやりになって自分自身が嫌な人になるんですよね。そんなときに見た煉獄さんのセリフがすごく心に入ってきました。
中村アンは“ズボラ女子”って本当!?
──これは小耳に挟んだ情報なのですが、実は中村さんは“ズボラ女子”だったという噂を耳にしまして。
今もそうですよ(笑)。めんどくさがりなので、何かやることがないとなにもしない、ダメな人なんです。
──以前、中村さんのInstagramで昆布入りの美味しそうに炊きあがったごはんや桜エビがたっぷりのったごはんなど、きちんと自炊されている様子を拝見したのですが。
お鍋でご飯を炊くようになったのは、コロナ渦になってステイホームが余儀なくされた頃です。本当は料理が苦手だったんですけど、お仕事もストップになって、家にいるとやることがなさすぎて「このままじゃまずい!」と思って始めたんですよ。
お料理は切ったり煮たりして、作るまでの工程が楽しいんです。そうやって作ったものをインスタにあげたら、いきなり「いいね!」が5万人ぐらいついたんですよ! それまでドラマの現場で撮った写真をアップしてもあまり増えなかったのに……。「お料理の需要ってすごいんだな」と驚きました。
──それにしても、中村さんがズボラ女子とは……。意外な一面でした。でも、ごはんを炊くときはちゃんと昆布を入れるなど、ひと手間かけていますよね。
最近はあまり自炊できていないんですけど、疲れている時は昆布だけお鍋にいれてご飯を炊けばそれでよし!と思ってやっていました。それまでは市販の素みたいなのをよく使っていたのですが、人に見られる仕事をしていることもあって、口に入って身体を作るものは、なるべくシンプルでいいものを摂ろうと思うようになりました。
(取材・文/根津香菜子、編集/福アニー、撮影/樋口涼、ヘアメイク/渡嘉敷愛子、スタイリスト/小原優子)
【Profile】
●中村アン(なかむら・あん)1987年9月17日生まれ、東京都出身。主な出演作は、ドラマ『グランメゾン東京』(19年)、『DCU』(22年)、『NICE FLIGHT!』(22年)や映画『名も無き世界のエンドロール』(21年)、『マスカレードナイト』(21年)など多くの話題作に出演し、22年の『DCU~手錠を持ったダイバー~』では第4回アジアコンテンツアワードの助演女優賞にノミネートされるなど、その演技力が日本国外からも評価されている。
【Information】
●演劇集団Z-Lion「笑ってもいい家」
脚本・演出:粟島瑞丸
出演:中村アン、中山麻聖、染谷俊之、森めぐみ(演劇集団キャラメルボックス)、中村哲人、斉藤誠人(ロビンフット)、下尾みう(AKB48)、飯塚理恵(劇団TEAM-ODAC)、久保田悠来、高橋光臣
公演日:2023年7月1日(土)から9日(日)まで
会場:六本木俳優座劇場