来店したお客さんが自信を身につけ“その後の人生をより楽しく過ごせるように”と願う、人気美容師『DIECE SHIBUYA(ダイス シブヤ)』代表兼スタイリスト・大月渉さん。メンズヘアに特化したカット前後の変身動画を発信し、その明らかな変身ぶりを見て、彼にカットしてもらいたいと、国内外から多くのお客さんが来店しています。
その動画が話題になり、『マツコ会議』(日本テレビ系)で取り上げられるなど、今や“メンズヘアといえば大月さん”!
インタビュー後編となる今回は、平成と令和で変わってきたという男性の“カッコいい”の違いや、実際にどこまでヘアスタイルが変わるのか、編集スタッフ自らが大月さんのカットを体験。簡単にセンスのよさを身につける方法も伺いました。
(大月さんの美容師になったきっかけや、下積み時代の秘話は、インタビュー前編で詳しく紹介しています→記事:総再生回数1億3000万回変身動画の仕掛け人、大月渉──メンズ特化の美容師が語る“ヘアカットを通して見えてくるそれぞれの人生”)
令和のヘアスタイルの流行の起点はK-POP
──平成と令和で、男性の美容に対する意識は変わったと思いますか?
「変わりましたね。髪形でいえば“襟足”です。襟足のあるマッシュ(ヘア)などもありますけど、全体的に見ると、襟足のない髪形が多いですね。昔でいえば、襟足を長く残したウルフカットもありましたが、今はなくなりました。
この変化が顕著に表れてきたのは、平成後期だと思います。高校生のお客さんに聞くと、彼らの世代でいま流行(はや)っているのは“センターパート”のヘアスタイルのようです」
──「センターパート」ですか? 10年前では考えられないですね。
「いや、そうなんですよ。これまでとは明らかに違う波が来ています。なぜ流行(はや)っているのかというと、K-POPアイドル『BTS』の影響ですね。最近若いお客さんから、“(BTSのメンバー)グクの髪形にしてほしい”と言われることもあります。最初に聞いたときは、グクが誰だかわからず、困ったことがありました(笑)」
──確かに、私もセンターパートの男性が電車に乗っていたら、ジロジロ見ちゃいますね。
「その高校生のお客さんが言っていたのは“短髪に、モテるやつがいない”と。“ウソでしょ”と思ったんですが、“センターパートやマッシュのヘアスタイルじゃないと相手にされない”と。これは衝撃的なエピソードでしたね。
ただし、20代中盤以降でバリバリ働いているビジネスマンの人たちは、取引先や同僚などから見られたときの印象を重視するので、流行のヘアスタイルを選ばないケースが多いと思います。そのため“前髪、襟足、トップ”を短くして、清潔で爽やかな印象を与えるヘアスタイルが好まれます」
コンプレックスを個性に変えるために必要なもの
──大月さん自身は、何かコンプレックスをお持ちですか?
「いっぱいありますよ。中でも、いちばん気になるのは目です。目の横幅があまりないのが嫌なのですが、この目に生まれたからには、“ワイルドなセーターや、イカツめのジャケットがマッチするな”とか、個性を生かしたコーディネートの変化で調整するようにしています。コンプレックスを生かすメンタルの強さは持っているので。
髪の毛においては、コンプレックスはないですね。私自身のヘアカットは後輩にすべて任せているのですが、髪の毛が短いときは“ジャケットを多めにするか”とか、“今回は長いからパーマをかけて、ニットを多めにしようか”とか、ここでもコーディネートでバランスをとっています」
──あまりコーディネートの引き出しがない人は、どのようにすればいいでしょう。
「手っ取り早いのは、インスタグラムなどのSNSでヘアスタイルとかファッションを見まくることです。スマホにスクショをとっておくだけで、わからなくなったら、それを見ればいいだけですから。センスは磨くものじゃなくて盗むもの。そう考えれば、誰でも身につけられます。
もうひとつアドバイスするなら、モテたい人と思う対象の人たちに直接聞いてみることです。例えば、周りにいる女性や、仕事先での同僚に尋ねてみると、客観的な目線で意見をもらえます。特に、ファッションやヘアスタイルなどは必ずその人の好みが入るので、偏らないようにいろんな人の意見を聞き、その中央値をとれば、万人に受けるコーディネートが身につきます」
──最後に、コンプレックスを持っているが、一歩踏み出せない人にアドバイスをいただけますか?
「コンプレックスというのは、自分が考えているほど、ほかの人は気にしていないことが多いです。まずは深く考えすぎないこと。できれば、最後は自分でも口に出せるぐらい、気にならなくなればいいんですが、すぐにはそこまで変われないと思うので、まずは長所を伸ばすことから始めているのがいいと思います。
そのためには、先ほども少し触れましたが、人に聞くことが一番です。例えば、私のような美容師など、プロに聞くのもいいですし、ハードルが高いようでしたら、小さなころからあなたのことをよく知っている親御さんや兄弟、友人などに聞くのもいいかもしれません。
もちろん、その意見を全部うのみにするのではなく、自分がやりたいと思う軸を持ったうえで、周りの意見を参考にしてアップデートしていくのがいいと思います」
セルフカットでやり過ごしてきた編集部員がカットでどこまで変われるか体験
今回、大月さんのカットを体験するのはフムニュー編集部員・N。実は5年ぶりの美容室。いつもは1000円カットの美容室に行ったり、時間がないときは自分で髪を切って整えたりしているそう。どんなヘアスタイルにしたいか聞いてみると、「僕の髪質に合ったカットにしてほしい」とリクエスト。
そこで、大月さんは「今回は、今っぽいヘアスタイルにして、自分で楽にセットができるように整えましょう」と提案。
ヘアカットをしてもらったところ、約40分で完了。
実際、カット前と比べると、見違えるようにカッコよくなった編集N。
「ヘアアイロンでパーマを作りました。Nさんの髪の毛はハネてしまうので、パーマをかけたほうがいいですよ。横から見たときに、頭の形がキレイに見えるように切ってあるので、刈り上げた襟足を抑えるだけで、髪の毛のボリュームが出てきますから、セットは簡単です」と、大月さん。
「これまでやったことのない髪形で、これはもう一生、洗いたくないっすね(笑)。ダイエットも考えているので、大きくイメチェンできそうです」と、編集Nも大喜び。
そのほか、簡単にできるヘアセットのコツは、前髪を毛の生え際に逆らって乾かしてセットをすると、正面に自然な立ち上がりができてボリュームが出るとのことです! これならヘアアイロンがなくても試せそう。
髪形を変えてみたいという人から、コンプレックスを解消したいという人まで、大月さんはどんな要望にも応えてもらえるので、この機会にカットしてみてはいかがでしょうか。
(取材・文/西谷忠和、編集/本間美帆)