バッグから取り出して、小さなタブレットをお口にポイ!
咀嚼(そしゃく)音がほとんどないことからオフィスでも気軽に楽しめ、気分を爽快にしてくれる清涼タブレット菓子(以下タブレット菓子)。手にする機会が昨今とみに増えてきていて、フムフムニュース編集部でも「大好き」「バッグに入っていないと落ち着かない!」という声、多数。
さわやかな風味とほどよい甘さでやめられない、とまらない
でも、その反面、「クセになって食べすぎちゃう」「でも食べすぎるとなぜかお腹がゆるくなる」という声もあって……。
「ついつい食べてしまうのは、ミントのほどよい清涼感と甘味ゆえだと思います。ミントに多く含まれるロスマリン酸は集中力を高めたり、リラックス効果が高まる働きがあると報告されています。また、甘味の摂取は精神的な心地よさとして認識されます。お腹がゆるくなってしまうのは、タブレット菓子に含まれている人工甘味料の影響ですね。おもな原料となっている人工甘味料のアスパルテームは、食べすぎるとお腹をゆるくする働きがあるんです」
こう語るのは、栄養学博士で、一般社団法人日本栄養検定協会代表理事の松崎恵理さんだ。
砂糖などの甘味の摂取は、ドーパミンやエンドルフィンといった幸福感や癒やしを感じさせる神経伝達物質の分泌を促すとされている。スイーツを食べると幸せな気持ちになれるのは、脳内でこうした神経伝達物質がさかんに分泌されるから。甘味は快感物質なのである。
実はこれこそが、スイーツをやめられない理由だと考えられる。ダイエットはもちろん、健康にもよくないと重々わかっていながらやめられないのは、脳そのものが甘味に快感を感じ、それを欲しているからだ。
「タブレット菓子に含まれているアスパルテームは、そんな砂糖の約200倍の甘味があります。タブレット菓子はアスパルテームを筆頭に、複数種の人工甘味料が組み合わされて作られています。心地よさを感じる砂糖の甘味により近づける必要があるからです」(松崎代表)
タブレット菓子のあの小さなサイズで甘味を感じてもらうには、砂糖よりずっと強い甘味が欠かせないのだ。
う~ん、改めてそう教えられると、私たちがタブレット菓子を食べるのをやめられないのも頷(うなず)ける。
タブレット菓子はあくまで暮らしの句読点
ではそんなタブレット菓子、食べ続けていいものなの……?
「適量ならば、それほど神経質になる必要はありません。どれくらいが適量かは個人差がありますが、お腹がゆるくなるようなら過剰です」(松崎代表)
職場でも家庭でも、気分をスカッとさせてくれるタブレット菓子はありがたい。さらに甘味にはストレスを緩和する報告もあるとか。だがいくらおいしくても、1日で1パック食べ切ってしまうのはちょっと食べすぎ。あくまで嗜好品として、仕事や暮らしの句読点程度の頻度にとどめておくべき。それができれば大きな問題はないという。
「どうしても食べるのを抑えられない場合は、ほかの嗜好品も取り入れてみるのはどうでしょうか? ミントの清涼感がやめられないのならハッカ飴、噛む刺激が欲しいのならカリカリ梅や酢昆布などを代替えにするといいかもしれません」(松崎代表)
自分はタブレット菓子に何を求めているのか? 清涼感が欲しいのか、あるいは口寂しさを紛らわせてくれるような物理的な刺激だろうか? まずはそれを考えてから代替え品を選んでみようと、松崎代表は提案する。
「便秘解消に食べる」は本末転倒!
さて、アスパルテームのお腹をゆるくする作用を利用して、便秘対策にしている女性もまれに見かけるが……。
「これはまったくおすすめしません。便秘対策には食物繊維を摂ることと、腸内環境を整えることが何より大切。お通じに問題があるのなら、ビフィズス菌が入っているヨーグルトがおすすめです」(松崎代表)
乳酸菌飲料メーカーを中心に、オリジナルの菌によるヨーグルトがさかんに開発提供しているが、便秘対策に飲むのなら、値段が手ごろで種類も多いビフィズス菌入りヨーグルトで十分だという。
「便秘のためには、大腸に働く菌であることが肝心です。人が必ず持っている、大腸を健康に保つビフィズス菌。それ以外の乳酸菌は、どんな菌を体内に保持していたかによって合う・合わないがあるからです」(松崎代表)
食物繊維も大切で、松崎代表のおすすめは黒キクラゲ。
「便秘解消には不溶性繊維と水溶性繊維が欠かせません。つまり野菜などに含まれる糸状の不溶性繊維と、コンブやワカメなどに含まれるネバネバサラサラした水溶性繊維の2つですね。便秘解消にはこの2種類が、バランスよくとれていることが必要。不溶性は腸を刺激してぜん動運動を盛んにし、水溶性は水分を吸収して、便のかたさを適度に維持してくれます。黒キクラゲは100グラム中、食物繊維が57.4グラムも含まれています」(松崎代表)
タブレット菓子はあくまで嗜好品。便秘解消のためのドカ食いなんて、本末転倒もいいところと心得ておこう。
脂質が多い食生活になっていないか、見直してみよう
読者にはここで今一度、自分の食生活についても見直してほしいと松崎代表は言う。
「フムフムニュースの読者に多い20~30代女性は、食事に占める脂質の割合が多いという傾向があります。例えば、昼にはコンビニのお弁当とスイーツを食べて、仕事帰りには友達とフラペチーノを飲みながらおしゃべりするとかですね。カロリー的には摂りすぎている人が多いという明確なデータはないようですが、栄養バランスとしては、脂質からのカロリー摂取を減らしてタンパク質や炭水化物を摂ることをおすすめします」(松崎代表)
脂質からのカロリー摂取は腸内環境を悪くするばかり。そこで食べてほしいのが、ご飯をはじめとする穀物だという。
「穀類は食物繊維が豊富ですから、腸内環境を整えてくれるんです。特に炊飯したご飯には水の分子が多く含まれているので、肌の水分量を整え、ハリを与えてくれますよ」(松崎代表)
流行中の糖質制限ダイエットの影響か、穀物は悪者にされがち。だが米や小麦、とうもろこしなどの穀物には糖質や食物繊維など、人間に欠かせない栄養素がたっぷりと含まれている。
「脂質いっぱいのスイーツ類は、“たまのご褒美”程度にしておくほうがいいでしょう」(松崎代表)
抑えたほうがベターなのが脂質なら、逆に、ぜひ摂りたいのがたんぱく質だ。
「人の身体、組織のほとんどはたんぱく質でできています。ですからたんぱく質が不足すると疲れやすくなったり、肌の新陳代謝も悪くなります」(松崎代表)
たんぱく質豊富な食材は同時に、鉄やマグネシウム、亜鉛といったミネラルも豊富な傾向がある。こうした栄養素は特に女性に欠かせない。
「おやつ代わりに摂るのなら、ゆで卵やちくわ、チーズやナッツがいいでしょう。特にナッツはタブレット菓子がやめられない人にもおすすめです。脂質は多いものの、不足しがちなミネラルが豊富で、さらにはカリカリとした食感が噛む快感に通じます。タブレット菓子の代替えになると思いますよ」(松崎代表)
(取材・文/千羽ひとみ、編集/小新井知子)
《PROFILE》
松崎恵理(まつざき・えり)
一般社団法人栄養検定協会代表理事、栄養学博士、料理家、女子栄養大学栄養科学研究所客員研究員、ル・コルドン・ブルー代官山校(現・東京校)ブランディプロム取得。Paris Ecole Ritz Escoffier短期クラス終了。誰でも栄養学の基本を学べる栄養検定および通信教育講座を実施するほか、ユーキャンの介護職コーディネーター講座のテキストおよびレシピを作成している。雑誌、書籍などへのレシピ提供や、コラムの執筆なども行う。