登録者数100万人以上のラーメンYouTuber・SUSURUさん。彼の半生を伺いながらラーメンにハマった背景を伺うこの企画。第1回では、幼少期から高校生までを振り返っていただいた。【インタビュー第1弾→2400日以上ラーメンを食べ続けるYouTuber・SUSURUさんの”食に魅せられた半生”】
今回は大学進学からYouTubeを始めるまでについてインタビュー。どのようにラーメンにハマっていったのか。なぜYouTuberになったのかを伺った。
高田馬場のラーメン店から自然と「ラーメン二郎」にハマる
──前回のお話では、青森県弘前市で過ごした幼少期から高校生までのエピソードを伺いました。大学では明治大学に進学されますが、上京した理由はあるんですか?
「高校のときに地元でバンドを組んでたメンバーと一緒に上京したんです。上京後に同じサークルに入ることになったんですけど、今考えるとすごいっすよね。だいぶ青春感ありますよ。当時は部室がないサークルだったんで、高田馬場のリハーサルスタジオを借りて練習していました」
──ラーメンにハマり始めたのはそのころからですか?
「そうですね、なによりラーメンにハマり始めたのは高田馬場っていう立地が大きいです。高田馬場ってラーメン店が多いんですよ。だから練習の前後に、バンドメンバーとか友だちといろんなお店に行くようになったんですよね。
今考えたら貴重だったなぁと思うのは、ラーメン通の間では有名な『中華そば べんてん』という名店に行ってたことですね。今は練馬区に移転して昼しか営業してないんですが、当時は夜も営業していて。練習終わりにつけ麺とか食べてました」
──お気に入りのラーメン店とかあったんですか?
「店舗というか『ラーメン二郎』にハマりましたね。大学の仲間で『二郎部』っていうLINEグループを作って、各店舗を回りまくっていました。週に3、4店は行ってましたね。
South Penguin(サウスペンギン)という、フジロックにも何回か出たバンドのボーカルでアカツカっていうヤツがいて、一緒によく回ってました。
アカツカはすごいですよ。この前、ラーメン二郎の総帥・山田拓美さんのドキュメンタリー番組があったんですけど、その番組のBGMに彼の音源が使われたんです。総師・山田さんがメディアに出ること自体、めちゃめちゃ珍しいことなんですけど、二郎が好きすぎて楽曲が採用されたんですよ」
──すごいっすね。SUSURUさんもアカツカさんも、ラーメン道を極めてる感じがかっこいい。
「いやいや、アカツカはちゃんと曲作ってますけど、僕はただラーメンすすってるだけっすからね(笑)」
──そんなことない(笑)。
「いや、こんなメシの話ばっかりしてる29歳なんていないでしょ。もういい大人なのに、ほんと……」
──いやいや100万人から「ラーメン食ってくれ」って思われてるって、ほんとすごいことですからね。ちなみに当時はインスパイア系(※)にも行ってたんですか?
※有名ラーメン店の味に着想を得て、同じような系統のラーメンを提供する店の呼び名
「いや、直系しか行ってなかったです。今でこそ二郎インスパイアもおいしいですけど、当時は正直、食えたもんじゃないというか……。チャーシューとかも厚いだけで噛みきれないとか、普通にあったんですよ。
それと、無駄に尖(とが)ってるんですけど、“直系しか行かない”ってことに誇りを持ってましたね(笑)。“俺は二郎を愛してるから、ちゃんと並んで食うぞ”っていう……。自分でラーメン作ってもないのに、なんでそんな尖ってたんだろうマジで」
大学中退、母の涙、ニート生活。“チャレンジしなかった”ことへの後悔
──じゃあもう大学生活はバンドとラーメンの日々だったんですね。
「そうですね。学校には全然行ってませんでした。4年間在籍して8単位しか取れなかった」
──いやもう軽音サークルの大学生のあるべき姿というか(笑)。
「バンドマンはだらしない人が多いですからね(笑)。たしかに周りも留年組とか中退組ばっかでした。
学校に行かなかったのも、無駄に尖ってたんですよね。ほんとダメなヤツなんですけど、授業で先生の話を聞きながら“くだらねぇ”って思ってたんですよ。どうしようもないですよね。ほんと、あのときの自分をひっぱたいてやりたい」
──前回、THE BLUE HEARTSと尾崎豊にハマった話がありましたが、これこそ尾崎豊の影響っぽいですよね(笑)。「超高層ビルの上の空、届かない夢を見てる」みたいな。
「いや夢すらなかったんでね。ただの怠惰なヤツですよ。何も成し遂げてないのに、無駄に尖ってたんですよね」
──結局、大学はどうしたんですか?
「4年で8単位しか取れなかったし、そこから本気で単位とっても卒業までに3年かかるじゃないですか。“もう絶対、卒業は無理だろうな”と思って、親に相談して辞めました」
──親御さんの反応は?
「母親が号泣したのを見て、さすがに後悔しました。明治大学って弘前市でも名前は知られてるんで、親も”自慢の息子”と思っていたはずなんですよ。それが蓋を開けてみたら中退じゃないですか。大学を辞めたことより“親を泣かせてしまったこと”がショックでした。
こう言うと“なに被害者面してんだ。大学行けよ”って感じなんですけど、当時は将来を考える余裕がなくて、とにかく目の前の“大学行きたくない”が強かったんです」
──なるほど。でもポジティブに捉えると、中退することで”やるべきこと”がいったんリセットされるじゃないですか。それで、あらためて夢とか目標とかできたのでは?
「いやそれがまったくなくて。完全にノープランでした。さすがに親から仕送りを受け取るわけにはいかないから自立しないと……とは思いましたね。そのときちょうど留年組の友だちとシェアハウスすることになったので、家賃は安くなってたんですよ。
でもバイトを始めるわけでもなくて。当時は僕パチスロが上手だったんで、月25万円のノルマを設定して稼いでましたね」
──月25万円パチスロで勝てるって、それはそれですごい才能ですね。好きなものに対してはもうグイっと前向きになれるんですね。
「そう言われると、中学生のときにゲームセンターのメダルゲームが大好きだったんですよ。たしかに好きなことはめちゃめちゃがんばれるんですけど、好きじゃないことは全然できない性格だと思います」
──パチスロ生活はどのくらい続いたんですか?
「1年くらいです。途中で規制が厳しくなって、勝てなくなっちゃったんです。で、そこからは、ただ貯金を使うだけのニートだったんですよ。家にいながら、ずっと“このままじゃヤバい”という焦りを感じてました。でも人に誘われたら飲みに行く、アクティブなニートでしたね」
──その焦りのなかで就職はしなかったんですね。
「いやそうなんですよね……。いま考えたらめちゃめちゃダサいんですけど、“働かないことがかっこいい”という、あまりにも間違った価値観を持ってたんですよ。ほんとよくないっすよね。そのときの自分に“いますぐ履歴書書け!”って言いたいですよ」
──それも「好きじゃないことはしたくない」という思考が働いたんじゃないですかね。
「そうかもしれないですけど、やっぱ働かないとわかんないじゃないですか。大学もそうですけど、チャレンジすらしなかったことはすごく反省しています。やってみたら、おもしろさに気づけたかもしれないのに“つまらない”って決めつける。なんというか“スープの上澄みだけ飲んで”ダメ”って思っちゃう”みたいな。物事の深みを感じる前に判断してる浅いヤツだったんですよ」
ニート時代に生まれた『SUSURU TV.』で、人生が動き始める
──仕事をしてる今ならわかることってありますよね……。ニート生活はいつごろまで続くんですか?
「半年くらいですかね。そのときに同じサークルの先輩で、今は『SUSURU TV.』で編集を担当してるチャル蔵から“YouTubeやらない?”って声をかけられたんですよね。もうこのままじゃいけないのはわかっていたんで“最後のチャンスだ”と思って始めました。
それでチャンネルを開設してから、初めてバイトをしたんですよ。何か好きなことを極めるためだったら、好きじゃないこともがんばれたんですよね」
──なるほど。人間的にも成長できたんですね。これまでのSUSURUさんの人生を伺うと、ものすごく大きな一歩のように思えます。
「いやほんとにラーメンに人生を変えてもらいましたね」
──YouTubeを始めるにあたって、戦略はあったんですか?
「もちろん“ラーメンか動物は視聴率を取れそう”とか“顔を出したほうがウケがよさそう”みたいな戦略はありました。
でも結局、僕は好きなことしかできないので、『SUSURU TV.』を始めたときも今も“ラーメンを食べることが好きだから配信をする”という根本は変わっていないですね。だから仮に動物を特集するチャンネルを作っても、続かなかったと思います。そう考えるとラーメン以外はありえなかった」
──その根本の「オタク魂」がめっちゃいいですね。本当に好きってのが伝わります。
「それと僕、大学生のころに二郎マニアのブログをよく読んでたんですよ。彼らの言葉の言い回しとか造語が好きで、“これもっと全国まで広がったらいいのにな”ってチャンネル開設当初に考えてましたね」
──うわ、懐かしい! 私もたまに読んでました。毎日食べてる人いましたよね。あの、急に更新が止まっちゃってみんなから心配されてた、なんだっけ……。
「『康太(やすた)ブログ』ですよね。僕も好きでした。康太ブログの言い回しですげぇ覚えてるのがあって『PAPP』ってわかります?」
──え、わからないです。何ですか?
「ブログでたまに『PAPP』って単語が出てくるんですよ。『PAPP汁』とか。どういう意味? と思って調べたら“プカ あぶら プカ プカ”の略らしくて。背脂が浮いてるスープのことらしいんですけど………いやどういうこと? っていう(笑)。意味を知っても、訳わかんないじゃないですか。こういう独自の言い回しが二郎ブログにはいっぱいあったんですよね」
──そういわれてみると、『SUSURU TV.』でも「ちょめめー!(美味しい)」とか「ごっそれい(ごちそうさま)」みたいに、独特な決めゼリフがありますよね。これ、二郎ブログに近い気がする。
「大学生当時は毎日のようにブログ読んでたんで、完全に影響は受けてると思いますね」
◇ ◇ ◇
次回の第3回では、これまで2400日以上、毎日ラーメンを食べているSUSURUさんに「人はなぜラーメンにハマるのか」ということを分析してもらった。
【第3弾→毎日ラーメン健康生活!SUSURUさんが考える「人がラーメンにハマり続ける理由」】
(取材・文/ジュウ・ショ)