私たちは毎日のようにスマホやパソコンを使い、当たり前のようにさまざまなウェブサイトを目にしています。使いやすいサイト、見やすいサイト、洗練された動画や画像、幻想的なグラフィックを使ったおしゃれなサイト……、このようなサイトを制作しているのがWebディレクターというスペシャリストです。でも、Webディレクターって、どんなことをするお仕事なのか、ご存じですか?
あなたのお気に入りのサイトは、どのようなプロセスを経て作られているのでしょう? 知っていそうで実はよく知らないお仕事のこと、“フムフムハローワーク”がご案内します。第1弾(全4回)はタグチマリコ(田口万里子)さんにご登場いただき、Webディレクターというお仕事について教えていただきます。
ウェブサイトをより良く見せるための手法とノウハウ
──Webディレクターというのは、どのようなことをするお仕事ですか?
「ざっくり言うと、ウェブサイトを作りたいと言うクライアントさんの相談に乗り、要望に添ったウェブサイトを制作するのが私たちWebディレクターの仕事になります。
クライアントには企業のほか、個人事業主さんもおられます。会計士や建築設計士のように個人事務所を経営していたり、街のパン屋さんみたいに個人商店を営んでいる方々ですね。そういった方々のウェブサイト制作を請け負うわけですが、一口にウェブサイトと言っても、ウェブサイトにはいろんな種類があります。いわゆる“プロモーションサイト”や“ブランドサイト(ブランディングサイト)”と呼ばれる広告媒体もあれば、ECサイトやオンラインショップもあります。
これまでは店頭販売していた商品をネットで売りたいとなったとき、私たちはどうしてオンラインショップを始めたいのか、どのようなサイトにしたいのか、お客さまのご要望と予算を伺い、制作に当たってはどれくらいの規模で仕上げることができるのかをすり合わせていきます。もうちょっと予算があればこんなことができるのに……、というようなことはしょっちゅうなんですが、予算内でできるぎりぎりのラインを探って、現実的な“落としどころ”を見つけるのがWebディレクターの仕事と言っていいのかもしれません」
──初歩的なことをお聞きしますが、いま言われた“ブランドサイト”と“コーポレートサイト”は何が違うんですか?
「コーポレートサイトは企業そのものを紹介するウェブサイトです。会社概要や企業理念、沿革、本社の所在地、社会貢献やSDGsなどへの取り組み、採用情報などを紹介します。ブランドサイトはその企業が作っている商品のイメージやスペック、コンセプトなどを情緒的に表したサイトです。コーポレートサイトが落ち着いた感じに抑えるのに比べ、ブランドサイトはユーザーの購買意欲を促す目的があるので、かなり凝ったデザインに仕上げるのが特徴です。プロモーションサイトは期間限定で公開されるウェブサイトですね。
ブランドサイトはどれだけ多くの人の注目を集めるか、どれだけ多くのユーザーを集客できるかが重要なので、ウェブ制作会社に依頼するのが一般的と言われています。それはなぜかと言うと、どのようなサイトを提供すればユーザーが興味を持つかといったマーケティング的な手法、企業イメージの向上やユーザーの感性に訴えて商品をより良く見せるノウハウなど、ウェブに関する知見が私たちにあるからです。
企業サイトの制作費はおよそ100万円から
──デザイン性に優れたブランドサイトの制作を依頼するとなると、やっぱりそれなりの予算がかかるのでは……?
「だいたいの相場で言えば、ビジュアルグラフィックを作ったり、簡易な撮影が入る中堅規模の企業のコーポレートサイト、ブランドサイトで100万~300万円くらいです。大手広告代理店が手がけるようなプロモーション要素が強い大企業のウェブサイトになると料金はその10倍くらいになりますが、モデルを起用してプロモーション動画を撮影するとか、情報量が多くてページ数が膨大になるとか、複雑なシステムが絡んでいない限り、制作費だけで3000万円を超えるようなケースはほとんどありません。
ミニマムな例を挙げると、LP(ランディングページ)と呼ばれるサイトで30万~50万円くらいの印象ですかね。LPというのは1ページに情報を凝縮した縦長のサイトで、美容クリニックの予約やダイエット商品の購入サイトなどでよく利用されています。制作費はそれほど高くありませんが、リッチな仕上がりにしたり、専門性が高く校閲(内容に誤りがないかをチェックする作業)に時間がかかるような場合は100万円を超えることもあります」
──なるほど。では、一般的なブランドサイトの場合、依頼を受けてから完成、納品まで、どのくらいの期間で制作するんですか?
「クライアントがしっかりしたイメージを持っていて、オペレーション的に制作する場合と、私たちがコンセプトや戦略から考えて制作にあたる場合とで違いが出てきます。動画の撮影などが必要になればまた違ってきますが、だいたいの制作期間は3か月~半年くらいだと思ってください」
──そんなにかかるんですか?
「はい。その間、撮影現場の進行や広告の準備、印刷を含めた販促の進行をしながら、他のクライアントさんとのお取引を進めることがほとんどなので、頭の切り替えが大変です。同時に抱えられる仕事は5本が限界かなと思います」
ユーザーの注目を集めたり、企業のイメージを高めたりするサイトを作るには、専門的な知識やノウハウが必要とのことです。次回は、人気のウェブサイトがどのように作られるのかを探っていきます。
◎第2回:【Webディレクター#2】デザイナー、エンジニアのポテンシャルを引き出すのが優秀なディレクター(8月12日18時公開予定)
(取材・文/降旗学)