阪本さんと中谷さんからなる、関西で大人気の個性派漫才コンビ・マユリカが今春から東京に進出しました。ふたりの付き合いは約30年、なんと3歳のときから。今も一緒にいることは、幼なじみのふたりにとって自然なことだそうです。「普通に雑談できるから相方にしたいと思った」「新ネタで揉めたことがない」……聞けば聞くほど、意外な言葉が飛び出します。
ケンカしたことがないコンビ。その理由は?
──春の東京進出、おめでとうございます! これはふたりで決めたことですか?
阪本さん(以下、阪本):おれが東京でもお笑いとかをしたくて、中谷を誘った感じです。
中谷さん(以下、中谷):舞台袖で「東京進出せえへん?」って聞かれて、最近ありがたいことにファンの方も増えてきたし「タイミング的にもちょうどええな」って答えました。
──そんな気軽な感じで!?
阪本:東京進出は大きいことでしたけど、おれらって話し合いでぶつかることがないんですよ。こいつ(中谷さん)に意見がないので。
中谷:そうやけど言い方悪すぎるな!
阪本:いや、助かるんですけど。NSC(吉本興業の芸人養成学校)時代から、おれの作ったネタを見せて「何がいい?」って聞いても全部に対して爆笑してるから、不安にはなりますね。
中谷:ははは!
阪本:(中谷さんを指して)ネタとかなんでもいいやんって思ってるタイプ。
中谷:いやいや、そんなことない。ちゃんと阪本がおもろいもの作ってるから、爆笑してるし。
──逆に中谷さんから「阪本さんのこれだけはちょっと……」と思うことってないんですか?
中谷:阪本の? うーん……(沈黙)。
──これまで阪本さんの言葉に大笑いしていたのに黙らせてしまってすみません(笑)。
中谷:いやいや。しいて言うなら、朝のお笑いライブに寝起きの状態で来るのはどうかなと思いますけど、それくらいです。
──おふたりは大阪のよしもと漫才劇場を卒業することになりますが、卒業公演のタイトルも面白い。
中谷:「やっぱり庶民! マユリカレー!!」ですね。
阪本:いつもの新ネタを6、7本おろす単独ライブだと「ラッキー! マユリカ!! ちっちゃくって!!!」とか「も〜っとマユリカ!! デストロイッ!!」とか、『マユリカ』が入るタイトルにしていたんですけど、卒業公演は新ネタ2、3本とコーナーという構成なので、差別化したかったんです。
──阪本さんの表情が真剣そのものです……!
芸歴13年、付き合いは約30年。漫画家を目指した時期も
──おふたりが出会ったのは?
阪本:3歳のとき幼稚園で出会いました。今も一緒に移動したり寄席の合間にメシ食ったりしてて、コンビでそういうことをするのって珍しいから「仲いいね」って言われるけど、幼なじみやからやと思います。小学校も一緒で、そのころから気が合うほうでした。
中谷:中学のときにおれが家の方針で私立行くことになって学校は別になったけど、連絡を取り合って、夏休みとかよく遊んでましたね。
──当時はどんなお子さんでしたか?
中谷:今より活発な子どもでした。
阪本:おれはそういうリーダーシップのあるヤツについていくタイプでした。
中谷:高校でも大学でも阪本とは遊び続けていましたね。
──中谷さんは14歳のときに漫画賞を受賞して漫画家を目指した時期もあったと聞きましたが、阪本さんはその漫画を読みましたか?
阪本:見せられました。
中谷:見せられた!? 見せてもらったじゃなくて?(笑)
阪本:なんか渡してきましたね。
中谷:渡してきましたね!?
阪本:見てほしいみたいな感じで。
中谷:まあ自慢したかったのかもしれないです。家も近いからすぐ行けるし。
阪本:そのときは家でふたりっきりで、中谷の目の前で読んだんですけど、ぜんぜんおもろなくて。
中谷:おい、やめろよおまえ(笑)。
阪本:「ちょっとしんどいな」と思って。
中谷:なんかもう申し訳ないわ。
阪本:そのときは今みたいになんでも言い合えるほどの関係じゃなかったんで、「なるほど~!ありがとう」って言いましたね。
中谷:阪本、おもろないもの見ると「なるほど~!」って言うんですよ。NSC通ってたころ、おれがネタを書いてみたときも「なるほど~!」って言われて終わったんで。
──わかりやすいですね(笑)。NSCの話から時がさかのぼりますが、もともとお笑いは好きだったんですか?
中谷:おれはテレビっ子レベルでした。漫画も描くのは好きやけど、(自分が描いたものは)面白くないと思っていて、高校で「能力があることと好きでいることは別なんかなあ」と気づきました。
阪本:中学まではテレビをよく見る、自覚のないお笑い好きでした。高校で芸人になりたい友達と出会って、そこで芸人になろうって話も出ました。
阪本さんが中谷さんを誘い、大学を辞めてお笑いの道へ
──阪本さんはその方とコンビを組もうとは思わなかったんですか?
阪本:その人とコンビになるイメージがなくて、普通に雑談できるのが中谷だけやったって感じですね。
中谷:……あってほしいけどな、「中谷にはこういう決め手があったからや」とか。消去法みたいやん。
──いや、決め手はあったのでは? そのころは大学生ですか?
阪本:はい。おれは大学を辞めてNSCに入るつもりやったんですけど、中谷はちょっと躊躇(ちゅうちょ)してました。「大学行きながらNSC行きたい」って言ってて、「それはちょっとない話や」って却下して辞めさせました。
中谷:辞めさせた(笑)。ダブルスクールはスケジュールも合わへんやろなと頭ではわかってたんですけど、大学に友達がいっぱいいて楽しかったから迷ってました。でも阪本から何度も誘われるうちに、中退してNSCに通う気になりました。今となってはよかったです。
──やはり阪本さんはそれほど中谷さんとコンビを組みたかったのでは?
阪本:まあ組みたいっていうか……。
中谷:はいって言えや。おい、はいって言えや。
阪本:うーん。
中谷:「うーん」じゃなくて。
阪本:まあそうですね。NSCにひとりで行く勇気はなかったので。
芸名の由来はふたりの妹。妹たちはそれを知らず──
──マユリカという芸名はNSC時代につけたのですか?
中谷:はい。ふたりの共通点で何かないかなって阪本が言って、たまたま1つ目にあがったのがお互い妹がいるってことだったんで、妹の名前を組み合わせてマユリカにしました。
阪本:ふたりとも妹には伝えたことがないです。
──さ、さすがに今は妹さんたちも気づいているのでは?
阪本:はい、たぶん。ふたりとも妹と連絡も取らないし、わからんよな。
中谷:普段かかわらんから、そんな話もせえへんし。
阪本:数年会ってないから。「妹が好きやから」じゃなくて共通点があったのが理由ですね。
──妹さんが気づいたときの反応が気になります……。ところで、NSC卒業生は、吉本興業の若手劇場への所属を目指して何度もオーディションを受けますが、マユリカさんは?
阪本:卒業後、劇場に所属できるまで4年かかりました。
中谷:おれらとビスブラ(『キングオブコント』2022王者のビスケットブラザーズ)が所属した同期の中ではいちばん遅かったよな。
阪本:うん。卒業して4年後、ビスブラと同時に劇場に所属できたのはうれしかったですね。
ビスケットブラザーズと青春を謳歌し「挫折はなかった」
──4年かかったということは、毎日先が見えず苦しくて……という感じでしたか?
阪本・中谷:いえ、まったく。
阪本:いい意味で挫折はなかったですね。「絶対入る!」って自信があったわけじゃなくて、単純に似たような境遇の同期がいたんで(所属できない期間も)遊んでたって感じで。
中谷:そのころはまだ同期で売れているヤツもいなかったから悲壮感もなかったです。金はないけど、下積みで苦労したなあとは思わないですね。
阪本:同期でもビスブラは特に仲がよくて、おれはビスブラのきんちゃんとカラオケでオールしたり、バイト先も一緒だったので夜勤で働いて、朝から寝ずにドッジボールしたりしてました。
──今、マネージャーさんが話題のファースト写真集『Perfect!!』を持ってきました。
阪本:ビキニ写真集は男性芸人初らしいんですけど、完売したんですよね……。
中谷:おれらもびっくりしましたよ。
◇ ◇ ◇
写真集が売れたワケやマユリカの人気の秘訣、ほかのコンビとの人間関係や今後の珍しい目標については、インタビュー第2弾で詳しくお聞きしています。
(取材・文/若林理央)
【PROFILE】
マユリカ ◎NSC大阪校33期生の阪本と中谷による漫才コンビ。2011年に結成。’18年「第7回ytv漫才新人賞決定戦」決勝進出、同年 「M-1グランプリ2018」敗者復活戦、’20年「第9回ytv漫才新人賞決定戦」決勝進出、’22年 「M-1グランプリ2021」敗者復活戦に出場。’23年3月をもってよしもと漫才劇場を卒業し、4月から東京のヨシモト∞ホール所属になることを発表。ファースト写真集『Perfect!!』が完売し、大きな話題を呼んだ。
◎中谷さんTwitter→@YutaNakatani
◎阪本さんTwitter→@sakasaka_ss
◎Podcast「マユリカのうなげろりん!!」Twitter→@unagerorin