新型コロナウイルス第6波の猛威が止まりませんが、免疫力アップのために毎日の食生活を見直したいという人は多いはず。そんな中、料理番組の常連であり、レシピ本の著作数は約400冊という人気料理研究家の浜内千波さんが、コロナ時代の「新日常」に提案する『免疫力が上がる2品献立』(主婦と生活社)を上梓しました。今回は本書から、すぐに役立つ食材の知識とレシピを紹介します。
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何を食べるかが体を守る基本
コロナ禍を経て、改めて実感したのが日々の食事がいかに大切かということです。何を食べるかは、体を守ることの基本ともいえます。
しっかり免疫力をつけるには、まず、食事で生命活動に不可欠なエネルギーを補給すること。腸内環境を整えること。抗酸化力を高めたり、粘膜を強くして体を防御することも大事。これらがそろうことで免疫力、すなわち感染症などの病気にかかりにくく、元気な体を維持することができます。
こう言うとちょっと難しいように思われますが、基本はご飯などの炭水化物に肉や魚のタンパク質とビタミン、ミネラルが豊富な野菜や海藻をバランスよく摂るということ。生の野菜を摂ったり、不飽和脂肪酸などの良質な油をプラスする、体温を上げるなども欠かしたくないことです。
免疫力を上げるには食材選びとバランスが肝心
ほとんどの食材に体にいい作用がありますが、免疫力のことを考えると積極的に選びたい食材があります。それを免疫力アップ食材として詳しく紹介します。
ひとつの食材で必要な栄養が摂れる完全栄養食品はありません。多種類の食材を摂ることで、栄養を補い合い、吸収を助ける力が発揮できます。食の基本はバランス。肉や魚の主菜に野菜を中心にした副菜、そしてご飯という組み合わせです。2品献立では野菜が少し不足するので、主菜にも野菜を追加。体内に蓄積できない栄養も多いので、ぜひ毎食よいバランスの食事を摂ってください。
腸内環境を整え、体を強くする
腸内環境を整えることで、食べたものの消化、栄養の吸収、不要物の排出をスムーズにし、栄養がすみずみに届く体になります。納豆やキムチ、ヨーグルトなどの発酵食品や、野菜や海藻、大麦などに含まれる食物繊維は腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を整えます。細菌やウイルスなどから体を守る免疫細胞の60%以上は腸に集まっているといわれています。よい腸内環境は体を強くするために欠かせません。
キムチ、ヨーグルト、生ハム、納豆、いかの塩辛、チーズ、しょうゆ、酢、みそ、オイスターソース、豆板醤、甜麺醤、酒、かつお節(枯節)など
抗酸化作用と強い粘膜で体を防御
過剰な活性酸素は、老化やがんなどと関連しますが、抗酸化作用には活性酸素の産生を抑えたり、ダメージを修復する働きがあります。ビタミンC、ビタミンE、フィトケミカルなどには抗酸化作用があるといわれています。また、目や鼻、口などの粘膜にも細菌やウイルスから体を守る免疫機能があります。青背魚などの不飽和脂肪酸、野菜に多く含まれるビタミンA(βカロテン)などが粘膜の健康を守ります。
ナッツ類、アボカド、オリーブオイルなど
タンパク質も体をつくる原料
タンパク質は肉や魚、豆類に豊富で、筋肉や臓器など体を構成する主成分となります。たえずつくり替えられるので毎食補給するのが理想的。不足すると体全体の機能低下を招きます。1日の必要量は体重60kgの人なら60gとなり、毎食20gが目安に。肉や魚は重量の2割強、卵1個(50g)は6.2g 、納豆1パック(50g)は8.3gが含まれます。高齢者も若者とほぼ同じ量が必要とされます。
肉、魚介、卵、豆類、乳製品、大豆製品(豆腐、厚揚げなど)、魚肉練り製品(かに風味かまぼこ、ちくわなど)など
ビタミンACE(エース)で免疫力がアップ
野菜などに多く含まれるビタミンの中でも免疫力を高めるのがビタミンA、C、E。ACE(エース)と覚えてください。野菜に含まれるビタミンAはβカロテンといい、皮膚・粘膜の健康を保ち、感染症を防ぎます。ビタミンCとEは異なった抗酸化作用があり、ビタミンCはEを酸化されていない状態に戻す力もあるので、いっしょに摂るとより効果が高まります。それぞれ体内では合成されないので、食事で補給を。
卵、緑黄色野菜(小松菜、トマト、かぼちゃ、ピーマン、水菜など)、チーズなど
かぼちゃ、ブロッコリー、じゃがいも、さつまいも、パプリカ、ピーマン、アスパラガス、トマト、キャベツ、小松菜、水菜、大根やかぶの葉、キウイ、オレンジなど
ナッツ類、かぼちゃ、パプリカ、にら、アボカド、鮭など
不溶性と水溶性の2種類の食物繊維をバランスよく
水溶性食物繊維は水分を吸収してゲル状になるので、腸管での余分な栄養素や有害物質を抱え込み、排出する作用があります。不溶性は水分を吸収してかさを増やし、腸のぜん動運動を活発化。排便を促し、有害物質を排出します。違う働きがあるので両方摂りたいですが、水溶性が特に不足気味。ご飯にもち麦や押し麦をプラスしたり、海藻やオクラ、ごぼう、アボカドなどを積極的に摂ってください。
水溶性:大麦(もち麦、押し麦など)、ごぼう、オクラ、キウイ、アボカド、海藻など
不溶性:きのこ、豆類、緑豆春雨、野菜類、いも類など
質のよい脂質は不飽和脂肪酸で摂取
脂質、炭水化物、タンパク質は体をつくり、エネルギー源となる三大栄養素ですが、現代の食生活では脂質はオーバー気味。脂質には、肉類に含まれて血液の粘度を上げる飽和脂肪酸と、ナッツ類や魚類に含まれる不飽和脂肪酸に分かれます。飽和脂肪酸はできるだけ減らし、不飽和脂肪酸を増やすように量より質を意識することをおすすめします。青背魚に豊富なDHAやEPAも不飽和脂肪酸のひとつです。
青背魚(さば、いわしなど)、鮭など
2品献立で免疫力アップ!
さらに効率よく体を強くするために、免疫力アップに寄与する食べものを選び、主にそれらを使ってレシピを作りました。忙しい現代では一汁三菜を用意するのは難しいとの声が多いので、思いきって2品献立にしてご提案します。ここではお肉が主菜の献立と、魚介が主菜の献立の2つのレシピをご紹介。
私たちの体をつくるのは、たまに食べる豪華なごちそうではなく、毎日の家庭料理。楽しみながら料理をして、ご自分やご家族の体を大事になさってください。
鶏もも肉とトマトの煮込み+キャロットラペ
鶏もも肉とトマトの煮込みで、しっかり動物性タンパク質が摂れているので、副菜ではオレンジ入りのキャロットラペでたっぷりとビタミンを補います。にんじんは特にβカロテンが豊富。油といっしょに摂って吸収率も上げます。
調理時間/30分
1人分/472kcal
栄養素/タンパク質、フィトケミカル、ビタミンA、ビタミンC
鶏もも肉とトマトの煮込み
トマトは野菜の中でもうまみ(グルタミン酸)が強く、鶏肉のイノシン酸と相乗効果があり、合わせることでよりおいしくなる組み合わせです。トマトに含まれる抗酸化作用のあるリコピンは、加熱するとより吸収率が高まります。
〈材料 2人分〉
鶏もも肉…1枚(300g)
塩…小さじ1/2【A】
こしょう…少々【A】
トマト…1個(200g)
玉ねぎ…2個(300g)
塩…小さじ2/3弱
(1)鶏肉は一口大に切り、Aをふる。トマトは乱切りにする。玉ねぎはくし形切りにする。
(2)フライパンに1をすべて入れ、塩をふる。ふたをして中火にかけ、ふたに水滴がついてきたら弱めの中火にし、10分ほど蒸し煮にする。
キャロットラぺ
にんじんは塩をふって水けをしぼっているので、調味料を加えても水っぽくならず、しっかり味が決まります。にんじんのβカロテンは油と合わせると吸収率がアップ。オレンジは果肉だけなく、果汁も使って自然な甘みを加えます。
〈材料 2人分〉
にんじん…大1本(200g)
オレンジ…1個
塩…適量
酢・オリーブオイル…各大さじ1
黒こしょう…少々
(1)にんじんは5cm長さのせん切りにする。塩小さじ1/3をまぶして10分ほどおく。
(2)オレンジは果肉と果汁に分け、ボウルに果汁を入れる。ボウルに酢、オリーブオイル、塩小さじ1/4を加えてよく混ぜる。にんじんの水けをしっかりしぼって加え、オレンジの果肉も加えてざっくりと混ぜる。器に盛り、黒こしょうをふる。
〈Memo〉
・キャロットラペは、少し甘みを足すことが多いですが、ここでは砂糖でなくオレンジを使います。豊富なビタミンCも摂れて一挙両得。
・にんじんにはビタミンCを破壊する酵素がありますが、加熱したり、酢などの酸と合わせると不活性化します。
めかじきの照り焼き+水菜の白あえ
高タンパク、低脂肪のめかじきをご飯に合う照り焼きに。青背魚ほどではありませんが、めかじきにもDHA・EPAが含まれています。副菜では生野菜の酵素とともに豆腐でタンパク質も補います。
調理時間/30分
1人分/262kcal
栄養素/タンパク質、DHA・EPA、ビタミンA、ビタミンC
めかじきの照り焼き
めかじきを焼いたあとのフライパンにはDHAやEPAを含む、めかじきから流出した脂やうまみが残っています。そのままフライパンを洗わずにたれを作って、めかじきによくからめましょう。フライパンが小さい場合はアスパラガスの長さは切ってもOKです。
〈材料 2人分〉
めかじき(切り身)…2切れ(160g)
アスパラガス…1束(100g)
にんじん…1/3本(50g)
塩・こしょう…各少々
サラダ油…大さじ1
しょうゆ・酒…各大さじ1強
はちみつ…小さじ1
(1)アスパラガスは根元の硬い皮をむく。にんじんは4cm長さ、5mm厚さに切る。めかじきはかるく塩、こしょうをふる。
(2)フライパンを中火で熱し、サラダ油を入れてめかじき、アスパラガス、にんじんを入れて焼く。両面がこんがりと焼けたら取り出す。
(3)フライパンを洗わずにしょうゆ、酒、はちみつを入れて火にかけ、ひと煮立ちしたら中火にし、めかじきを戻し入れて両面にからめる。2の野菜とともにめかじきを器に盛る。
水菜の白あえ
副菜では植物性タンパク質である豆腐をプラス。豆腐は丁寧につぶしてなめらかにしておくと、水菜とよくなじんでおいしくなります。加熱しないことで、水菜に含まれるビタミンやミネラルを壊さずにそのまま摂ることができます。
〈材料 2人分〉
木綿豆腐…100g
水菜…100g
塩…小さじ1/4
かつお節…ひとつまみ(1g)
(1)水菜はざく切りにする。
(2)豆腐をつぶし、塩、かつお節を加えてよく混ぜる。水菜を加えてざっくりと混ぜる。
〈Memo〉
・アスパラガスは下から1/3ほどは皮が硬く、口あたりが悪いので薄く皮をむきます。
・水菜は体内の余分な塩分を排出するカリウムや、腸内環境を整える食物繊維が豊富。ビタミンCやβカロテンも多く含む緑黄色野菜で、今回は生で食べるので栄養のロスもありません。
著者:浜内千波
定価:1650円(本体1500円+税10%)
発行:主婦と生活社
本の詳細:https://www.shufu.co.jp/bookmook/detail/978-4-391-15692-8/
《PROFILE》
浜内 千波(はまうち ちなみ)
料理研究家。1980年に東京にファミリークッキングスクールを開校し、校長として40年以上講師を務める。健康的で作りやすいレシピに定評があり、テレビ出演や雑誌、書籍などで幅広く活躍している。近著に『夜に飲むリカバリースープ』(WAVE出版)、『こねないおうちパン』(辰巳出版)など。2021年には、シンガーソングライターで俳優の福山雅治さんのファンクラブ「BROS.」発足30周年を記念したオンライン番組『福山雅治の口福キッチン』にて、福山さんとともにスペシャルレシピを考案中。