2023年2月15日、デビュー12年目の記念日に、ニューアルバム『Naked』をリリースしたアーティストの家入レオさん。“1日をご機嫌にする魔法”として、毎朝お気に入りのチョコレートを食べるなど、自分時間を大切に過ごしています。
(お気に入りのチョコレートの紹介や、毎朝チョコレートを食べて1日を始める理由は、インタビュー前編で詳しく紹介しています→記事:家入レオ、“周りのために頑張る人”に伝えたい自分をいたわる最高の方法「もっと自分を大事にしていいんだよ」)
新作『Naked』に収録される『かわいい人』の歌詞にもチョコレートが登場するなど、自ら手がける歌詞と日常は、切っても切り離せないようです。
デビュー曲『サブリナ』のヒット以降、多忙な日々を過ごすうちに20代に入って間もなく“クオーターライフ・クライシス(※)”と呼ばれる幸福低迷期に陥ってしまったと言います。苦しい時期を経て、新作『Naked』では「包み隠さず、ありのままの自分をさらけ出せた」と打ち明けてくれました。
※20代後半から30代にかけて、同世代の人と自分を比べて落ち込んだり、人生や生き方について悩むことを指す。
コンプレックスを抱えていた10代
「今回のアルバムに向けて歌詞を書いていて感じていたのは、“フィクションであり、ノンフィクションだな”ということ。今までは、歌詞を書くことで自分自身を発見したり、見つめ直したり。言葉を紡ぐことで、何気なく過ぎていく日々や気持ちを流さずにいられたというか。
でも、今作は生活の中で、“これを歌詞にしてみたら面白そう”という、アイデアから創作すること自体を楽しめました。どの曲も、私自身の日常に起こったことをヒントに、“こういうアプローチの仕方もありかな?”と、振りきって遊ぶことができたのかもしれません。
“曲を面白くする”という一点に集中できたことで、遊び心が芽生え、曲に深みや広がりが持たせられた気がします。
17歳でデビューし、高校に通いながら音楽活動を続けていました。両立に精いっぱいで、“多くの10代が体験できることのほとんどを、経験できずに歳を重ねてしまった”というコンプレックスを、ずっと抱えていましたね。
”表現者として自分が発するものに、共感してもらえないんじゃないか……”という不安や悩みがどんどん深まっていったんです。”自分で作る音楽に自信が持てない……”20代前半は、そういう感情に支配されるようになっていきました。
音楽で自分を開放していたはずが、周りの期待に応えようとして、ときに自分を抑え込むように必死に頑張るうちに、どんどん暗闇の中を迷っているような感覚になりました。そこから一筋の光が見えるような感覚が持てたのが、この『Naked』というアルバムなんです」
危機感の中で、迷いもがきながら見つけた光
見失いかけた自分を取り戻すために、家入さんが最初に取り組んだのは自分自身を徹底的に見つめ直すことでした。すると、自分に足りないもの、過分なことが少しずつわかってきたそうです。
それからは忙しさに流されることなく、地に足の着いた丁寧な暮らしを心がけ、少しずつ“自分自身に返る”感覚になれたといいます。
「本当に恥ずかしい話ですが、それまで、自分で新幹線のチケットを買ったこともありませんでした。マネージャーさんから”明日は●●まで行き、■■に出演します”と、チケットを受け取り、移動先で用意していただいたお弁当を食べ、次の場所へと移動する……。
生活している実感が乏しかったですね。”こんな生活のままでは、ますます自分を見失ってしまう。共感してもらえる曲が書けなくなる”という危機感が募りました。
そこで、まずは小さなことから、自分の手で、足で行動しようと思いました。そのひとつが、前編でご紹介した”チョコレートを購入するときに、自分の目でお店で確かめながら買い物をすること”だったりするんです。
普段スーパーも利用しますが、お肉やお魚、野菜も小売店で購入することがほとんどです。人と人のつながりを実感できるし、“どこ産の希少部位が入ったからこうやって食べるといいよ”って、レシピを教えていただくことも。大事な生活の景色です。
そうした実感を伴った丁寧な暮らしをするようになると、“足るを知る”という感覚が芽生えてきました。
そこで、次に取りかかったのが、いわゆる“断捨離”です。汗水垂らして頑張って手に入れた洋服やインテリアでしたが、いつの間にか“今の私には過ぎたものだな”と感じるようになっていました。だって、私の足は2本しかないのに“こんなにたくさんのパンツ、いったい誰がいつはくの?”って思っちゃって(笑)。
時期的にデビュー10周年の節目を経たこともあり、心機一転、引っ越しを思い立ちました。その際に、持っているモノを友達に譲ったり、フリマアプリを利用して出品したりしたのですが、あまりの大胆な手放しぶりに周りの人たちから呆(あき)れられました(笑)。
今の自分に何が必要かを知ることができたんだと思います。本当に大事なものだけを手元に残したことで、不思議にも満たされた気持ちになりました。
”物を持ちすぎないって、こんなに気持ちがいいんだ”という発見は意外でしたし、”大事なものだけあれば心配いらないんだな”って。私自身、“私がいれば大丈夫”と思えたんです。『Hikari』という曲は、そんな気づきや思いをテーマに書きました」
ファンの存在が導いてくれた
忙しさにかまけて、つい楽なほうに流されたくなってしまうもの。ましてや、周囲の期待に応えようと頑張っていれば、それが正解のように思えてくるでしょう。それでも、踏みとどまれたのは、間違いに気づかせてくれたファンの存在が大きかったといいます。
「恋は盲目といいますが、ファンの方ってそうではないんですよね。あるとき、“今までと笑顔が違う”と、ファンの方から指摘され、ドキッとしました。ファンの人は、私以上に私の変化に気づいていて、全部伝わっているんだなって。
だからごまかしたり、ウソは通用しないし、ウソやごまかしのうえでは何も築けないと思いました。“もっと自分の心の内をさらけ出そう”って、背中を押してもらった、大事なきっかけのひとつでもあります。だから、“裸の私=『Naked』”というアルバムを作りたかったんです。
ファンのみんなから教えられたのは、誰かに”頑張ってるね”と言われることも嬉しいけど、自分が自分に対して”頑張ってるね”と言えることが大事だな、ということです。
自分が納得する前に、周囲から求められるがままにやってしまったことは、いつまでも“あれはよかったのかな?”って、“正しさ”について悩んでしまう気がするんです。逆に、周りからは“苦しい思いをするよ”と言われた道でも、自分が選んだ道なら納得できるし、後々財産になるなって感じていて。
幸せの価値って人それぞれだから、自分が決めたことならいばらの道も、周囲が思うほどつらくなかったり、むしろ本人は楽しんでいたりするんですよね(笑)。
私と同じように20代後半、特に女性は、結婚や出産、キャリアなど、いろいろな選択肢を目の前にしているのかなと思います。どの道を行くかは、親や教師、上司、パートナーにだって選べない。自分自身でしか選べないんですよね。
周りの友達や知人が、どんどん結婚したり、キャリアアップのために留学する姿を見て焦りを感じたこともあったけれど、今は胸を張って、私はこの年齢で歌うことを選んだと言える。自分の選択に対し、やっと少しずつ自信が持てるようになりました」
活動12年目に差しかかり、改めて飾らない心で音楽に向きあえるようになった家入さん。この先の目標を尋ねると、「これまで何ひとつ、想定内だったことがない」と清々しい笑顔を見せ、こう続けました。
「“今この瞬間を全力で生きること”ですね。11年前にデビューして今まで、何ひとつ想定内だったことなんてないですし(笑)、ひとつの出会いや考え方で、道は変わっていきますから。確かなことといえば、2023年の今日、全力で音楽をやっていることだけ。それが真実だと思います。
音楽活動って、単に曲をリリースしたり、ライブをするだけではなく、生き方を見せていくことも含まれると思っていて。期待に応えようと頑張って作った曲も、そのときの私が一生懸命に出した答えなんです。
それって矛盾して聞こえるかもしれませんが、人って矛盾を抱えているものだと思うし、それも含めて私だと思うんです。
だから、”家入レオは、完璧じゃない人間臭いやつなんだ”って、思ってもらっていいですし、“だったら、自分も頑張れるな”と、前向きになるきっかけになれたら嬉しいです。これからもハプニングがあるだろうし、どう転ぶかわからないけど、全力で納得できるように進んでいきたいですね」
(取材・文/キツカワユウコ、編集/本間美帆)
【PROFILE】
家入レオ(いえいり・れお) 1994年生まれ、福岡県出身。13歳で音楽塾ヴォイスの門を叩き、青春期ならではの叫び・葛藤を爆発させた『サブリナ』を完成させた15歳、音楽の道で生きていくことを決意。翌年単身上京。都内の高校へ通いながら、2012年2月メジャー・デビューを果たし、1stアルバム『LEO』がオリコン2週連続2位を記録。第54回「日本レコード大賞」最優秀新人賞ほか、数多くの新人賞を受賞。以降数多くのドラマ主題歌やCMソングなどを担当。2023年2月には、約4年ぶりとなるニューアルバム『Naked』をリリース。さらに、年内2本の全国ツアーが決定している。Instagram→@leoieiri
《リリース情報》
New Album『Naked』
2023年2月15日(水)発売
初回限定盤A:CD+DVD 5500円
初回限定盤B:CD+DVD 4620円
通常盤:CD 3300円
ビクターオンラインストア限定盤:CD+GOODS 4180円 ※10インチ紙ジャケット仕様
※価格はすべて税込み
《ライブ情報》
◆家入レオ TOUR 2023 〜NOT ALONE〜
5/19(金)<千葉>柏PALOOZA
5/25(木)<静岡>Live House 浜松窓枠
5/27(土)<香川>高松オリーブホール
5/29(月)<京都>京都 磔磔
6/7(水)<宮城>仙台 darwin
6/9(金)<北海道>cube garden
6/17(土)<福岡>DRUM LOGOS
6/18(日)<広島>広島 CLUB QUATTRO
6/22(木)<大阪>梅田 CLUB QUATTRO
6/23(金)<愛知>名古屋 CLUB QUATTRO
6/30(金)<東京>Shibuya WWW X
◆家入レオ TOUR 2023 〜NAKED〜
10/7(土)<大阪>Zepp Namba(OSAKA)
10/8(日)<愛知>Zepp Nagoya
10/12(木)<福岡>Zepp Fukuoka
10/21(土)<宮城>仙台GIGS
10/27(金)<東京>Zepp Haneda(TOKYO)
11/3(金・祝)<香川>高松 festhalle
11/4(土)<広島>BLUE LIVE 広島
11/11(土)<神奈川>KT Zepp Yokohama
11/18(土)<北海道>サッポロファクトリーホール