長身と爽やかなルックスで、10代のころからドラマ・映画・舞台など幅広い分野で活躍し、いまや日本のエンタメ界を牽引する存在となった俳優の福士蒼汰さん。そんな福士さんが、念願の海外作品初出演を果たしたHuluオリジナル『THE HEAD』Season2が、6月17日から90の国と地域で放送・配信されます。
本作で、重要な役どころであるコンピューターエンジニアのユウトを演じた福士さんに、役への思いや海外と日本の作品づくりの違いなどを語っていただきました!
ひとつひとつのセリフに向き合い、いざスペインへ
──まずは今作への出演が決まったときの感想を教えてください。
ずっと20代で海外に挑戦したいという夢があったので、その念願が達成されてすごく嬉しかったです。そのことを聞いたのが舞台の公演中だったので「これはどちらも頑張らなければ!」と思い、アクティング・コーチと一緒に「どうやって役へのアプローチをしようか」「どういう風に抑揚をつければいいか」といったことを考えながら、ひとつひとつのセリフと向き合い、準備を整えてから撮影地であるスペインへ向かいました。
──今回海外の作品に初めて参加するということで、何か特別に準備したことはありましたか?
やはり事前にアクティング・コーチに教えていただいたことです。英語だと、例えば同じ「I don’t know」でも、抑揚のつけ方や伝え方で全然意味が違うので、そういう部分はネイティブの方も交えてレッスンをしました。そこは一番の違いだったし、言語が違うからこその面白さだと感じました。
──実際に現地での撮影を経験して、日本とは違う撮影の仕方や「こんなやり方があるんだ」と思ったことは?
今回に限ってかもしれないのですが、撮影が2班体制になっていて、AチームとBチームに分かれていたんです。基本はAチームがメインで撮影をするのですが、ライトなシーンやポップなシーンはBチームが撮っていました。
Bチームは台本に書いていないエキストラカット(現場での判断で追加撮影されたカットや予備映像のこと)も撮っていて、例えば、本を読んでいるだけのシーンでも「ちょっと怪しい感じで」「素直な感じでやってみて」みたいにいろいろなパターンを撮ったんです。そういう細かいバックヤードのようなところだけ別チームが撮影するということは、日本ではほぼないと思います。
海外では実践的な芝居が求められる
──特に印象に残っている現場での思い出があれば教えてください。
お芝居のアプローチ方法でいうと、今回はとにかく実践的なお芝居が求められました。例えば、ある場所に閉じ込められて何かを探すというシーンを想定して、「ここを薄暗くして大事なものをどこかに隠すから、それをあなたが見つけてください」「たまに警備員が来てライトを照らすけど、絶対に見つかってはいけません」というレッスンがあったんです。そこで実際に感じた恐怖や孤独を表現しなければいけなかったのですが、実際の感情を体感することが目的のレッスンなんです。日本では経験したことがなかったので面白いなと思いましたし、いろいろなアプローチの仕方があるんだなと思いました。
──今作の舞台は海の真ん中で逃げ場はなく、助けも来ない状況ですが、もし福士さんがユウトと同じような極限状態に置かれたら、ご自身はどうなると思いますか?
ユウトはすごく冷静で、「問題があったら解決しよう、解決したらすぐここから出よう」という思考が働いていると感じるセリフがあったんです。僕もユウトと同じで、冷静になると思います。何か事故や災害などがあったときや、みんながパニックになるようなときは、より「自分は冷静になろう」と思うんですよね。
──前作のSeason1は、配信日当日にご覧になったそうですね。『THE HEAD』という作品全体の魅力や面白さをどんなところに感じますか。
前回は配信開始と同時に見始めて、一視聴者として楽しませていただきました。初めは普通に洋画を見ている感じだったのですが、そこに日本人である山下(智久)さんが出演されているので「現場はどんな感じだったんだろう」という気持ちが大きくなって、だんだんと客観的な視点のほうが大きくなった気がします。
山下さんも『THE HEAD』が初めての海外作品だったとおっしゃっていて「ここから出発していくんだな、すごいな」と思いながら見ていました。
──その当時は、まさか自分が次作に出るとは思っていなかったのでしょうか。
そうですね。20代のうちに海外に行きたいという大きな夢があったので、20代最後の年に叶(かな)えることができて嬉しかったです。しかも、自分が好きで見ていた作品のシリーズだったので、光栄だと感じました。
自分が作った道に後輩俳優が続いてくれたら
──海外作品に出演するということは、福士さんにとってどんな意味を持ちますか?
20代のうちに海外作品に挑戦したいと思っていた理由のひとつは、自分が道を作っていくことで、後に続いてくれる人がいるんじゃないかなという思いがあったからです。
10~20代の若い俳優さんたちや「日本生まれ日本育ち」で海外に行ったことのない人でも、「自分も頑張れば海外の作品に出られるんだ」と思ってくれたら嬉しいし、そうなっていけば日本の俳優業界も、より豊かになるんじゃないかなと思うんです。なので、「自分がやりたい、挑戦したい」という気持ちと、「下の世代の人たちがついてきてくれたら嬉しいな」という両方がありました。
──今回の出演を経て、もっと海外で活躍していきたいという思いは強まりましたか?
もちろんあります。「2作目はできない」「もうやりたくない」という気持ちはまったくなく、僕はまたやりたいと強く思っています。今回が第一歩。第二歩、第三歩とつなげていきたいです。
現地で買ったTシャツで、急きょセルフスタイリング!
──海外に行ってみて「こんなはずじゃなかった!」と思ったことや「これは想定していなかったな」といったエピソードはありますか?
あります! プレスカンファレンスという日本の制作発表のようなものがあったのですが、数日前に急きょ知らされたんです。衣装やメイクもつかないと言われたので、自分でメイクやスタイリングをして。衣装は日本から持っていったジャケットと、現地で慌てて買ったシャツを着ていきました(笑)。
それはともかく、英語で登壇して話さなければいけないので、それが本当に大変でした。キャスト何人かとの合同取材や、1対1で質問されることもあったりして。寝る間も惜しんで、想定質問をいくつも考えて臨みました。
──それでも無事に乗り切られたんですね、
なんとか乗り越えました(笑)。今改めて見ると「ここはこう答えればよかったな」と反省する点も多いですが、登壇したときは何か自分にできることをやってみようと思ってひとつギャグを入れたら、みんな笑ってくれたのでよかったです。台本だけでも大変なのに、急にこういうことが起こるのも海外らしさなのかなと思いました。
──では最後に、配信を楽しみにしている方々にメッセージをお願いします。
今度の舞台は、地上から遠く隔離された船上。殺人鬼がいる恐怖の中に描かれた人間模様や、Season1から引き続いているマギーとアーサーの過去や現在がより濃く描かれていると思います。犯人が誰なのか、みなさんも探りながら見てもらえたら嬉しいです。
──先だって1、2話を拝見したのですが、みんな怪しく思えて、全員を疑ってしまいました……。ユウトは犯人じゃないですよね?
ユウトは怪しくないです! と言いたいところですが、それはどうでしょうか(笑)。
◇ ◇ ◇
後編では、海外の現場で感じた日本との違いや、コミュニケーションの取り方、さらに福士さんが身体づくりで大切なことや最近ハマっているゲームなど、気になるプライベートのお話もたくさんしていただきます!
(取材・文/根津香菜子、編集/福アニー、撮影/junko、ヘアメイク/佐鳥麻子(VITAMINS)、スタイリスト/オクトシヒロ)
●Profile
福士蒼汰(ふくし・そうた)
1993年5月30日生まれ、東京都出身。2011年から放送された特撮ドラマ『仮面ライダーフォーゼ』で主演を務め、注目を集める。そのほかの主な出演作に、映画『旅猫リポート』『曇天に笑う』『BLEACH』、ドラマ『アバランチ』『大奥」『弁護士ソドム』、劇団☆新感線の舞台『神州無頼街』など数多くの作品に出演。待機作に、W主演映画『湖の女たち』がある。
●Information
Huluオリジナル『THE HEAD』Season2(全6話)
監督:ホルヘ・ドラド
制作総指揮:ラン・テレム
脚本:マリアーノ・バセルガ、ホルディ・ガルセラン、アイザック・サストレ
出演:ジョン・リンチ、モー・ダンフォード、福士蒼汰、キャサリン・オドネリー、ジョゼフィン・ネルデン、ティリエ・ゴダール、ホヴィク・ケウチケリアン、オリヴィア・モリス、エンリケ・アルセ
配信開始日:2023年6月17日(土)より独占配信開始