会員数の多いものでは、累計1500万人とも言われ、各種条件から好みの異性を選んでつながることができる「マッチングアプリ」。結婚適齢期と言われる現代の男女は、かなりの割合で使ったことがあるのかもしれません。
マッチングアプリで100人以上の男性と会ったデータを、ノートに記録し続けている女性がいます。彼女の名前は、小出真保さん。『ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ』(フジテレビ系)で優勝したり、『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)のナレーションを務めたりと、多方面で活躍中のお笑い芸人です。マッチングアプリで出会った男性との衝撃エピソードから、これからの展望まで、じっくりお聞きしました。
(小出さんがマッチングアプリにハマったきっかけや、同時進行で恋愛を進めることに対する持論などは、インタビュー第1弾で語ってくれています→女芸人・小出真保「恋愛は邪魔だと思っていた」のにマッチングアプリにハマり、2年で100人以上と会ったワケ)
39人目の男性が彼氏に、泣きながらアプリをアンインストール
──実際にマッチングアプリから、恋愛に発展したケースはありましたか?
「2020年12月から’21年5月まで、ハイスピードでいろんな男性と会っていたんですよ。彼氏になったのは、39人目に出会った男性でした。彼とは付き合うまでに1か月かかっているので、厳密には、彼氏ができるまでに50人くらいと会っていますね。半年くらい付き合ったので、そのあいだアプリは休止していて、別れたあとの’22年3月から再開しました。今年の3月から今まで、約5か月あったので、コロナの影響で直接会えない場合に行っていたビデオ通話なども含めれば、軽く50人は会ったと思います」
──付き合っているあいだ、アプリを休止していたということは、アンインストールされたんですか?
「はい。でも、すべてアンインストールするのに、2週間かかりましたね。ちょっと泣いてしまいましたもん(笑)。今まで毎日のように使っていたものがなくなってしまうので、“好きで通っていたお店が閉店して、もう二度と行けない”みたいな感覚になってしまって」
──30代での大失恋(※インタビュー第1弾参照)から、数年ぶりに彼氏ができてどうでしたか?
「いや、それが、全然ダメでしたよ。私、アプリで会った人たちとはイケイケな感じとか、可愛い感じで話せていたのに、恋愛に発展したらボロが出ちゃいました。苦労してやっとゲットした人だったからか、急に余裕がなくなってしまい、“結婚して!”って言いすぎて疲れさせてしまい……(苦笑)。アプリで出会おうが、学校や職場で出会おうが、付き合ったあとに男女でうまくやっていくのは大変なんだなって、改めて感じましたね」
──ちなみに、マッチングアプリ以外に、結婚相談所などに登録されたことはありましたか?
「結婚相談所は、彼氏ができる前の1か月だけですね。アプリと違って、“仮交際”というプロセスがあるので、ものすごく断りづらかったです」
──別れたあと、アプリはまた始めても、結婚相談所は再開されなかったんですか?
「結婚相談所で私、むちゃくちゃ人気がなかったんですよ。それまで使っていたマッチングアプリは無料ですが、こちらは料金を支払っていたので、“できれば高スペックな人がいい”って思って、全国のお医者さん100人に申し込んだんです。次の日、ワクワクしながら画面を開いたら、返信がゼロだったんですよ(笑)。アプリでたくさん“いいね”や返信をいただけたフィーバーぶりと比べたら、惨めな結果で、“これが現実か”って(笑)」
──マッチングアプリや結婚相談所に登録する際は、プロフィール写真が重要だと思います。載せる写真にも、コツがいるんですか。
「もちろん、写真にはテクが必要です。載せるのは笑顔、全身、友達といるときの自然体な様子! 自撮りではないほうがいいですね。あと、私は大幅な加工はしていないです。アプリで人気があった画像は、ちょっと酔っぱらっている感じの写真。3枚目には、ちょっと“ハズした写真”を入れておくのもいいですね。親近感を抱けるとか、多少の女性らしさが感じられる写真が、気に入られるみたいです」
──身なりにもかなり気を使われているし、トークも面白いのですが、小出さんが男性側からお断りされたこともあるのですか?
「あります、あります! (アプリで会った男性たちのデータを記録したノートを見ながら)〇〇君、●●さん、△△さん……。みんなハイスペックの男性でしたね。慶応大学卒の銀行員とか、東大卒のコンサルとか。そのうちの1人は、お店を出るなり競歩で帰っていったんですよ。いなくなるまでのペースが異常に速かった。誰からもブロックはされていないと思うのですが、未読スルーは全然ありますね。男性のほうが高スペックだと、相手を選び放題ですから……」
“ヤバすぎる男性たち”との忘れられないエピソードの数々
──100人以上の男性と会ったなかで、特に「ヤバかったなあ」と思った男性を教えていただけますか。
「自分のなかで“ひどかった男性ベスト10”っていうのがあって、1位が“目黒川3時間男”、2位が、“より人間に近い蛇さん”ですね」
──ネーミング(笑)。どちらも気になりますが、まず、“目黒川3時間男”は、どういう人だったんですか?
「目黒駅で待ち合わせをしたんですが、すぐに店とかには行かないんです。雨の日なのに、目黒川に沿って3時間も歩かされたんですよね。“桜も咲いていないのに、なんでだろう”って思いながら、びしょびしょになってきたし、“いいかげん、お店に入りませんか?”って言ったら、しぶしぶ入ったところが『サイゼリヤ』で。
席に座ったら、(首をすくめがら)“僕ぅ、人間不信なんですよね~”って言いだしたんです。“怖っ~”って思っていたら、“さっきの3時間、真保さんを研究させてもらいました”って。そうしたら、“しゃべり方がおかしい”って言うので、芸人だっていうことを伝えたら、ドヤ顔で、“なるほどな! よくも悪くも芸能人だな! 今もカメラとか意識してる感じ? ”ってつっかかってきて。帰り道でどっと疲れがきて、そのあと5日間、寝込みましたね」
──では、2位の、“より人間に近い蛇さん”もクセがすごそうですが……。
「彼は、ルックスが蛇に似ていたんです。でも人間なので、より人間に近い蛇(笑)。口説き方が独特な人で、日比谷線のホームで叫ばれました。(もじもじしながら)“お願いですから、手をつながせてくださいー! ”って。その前に上野公園で、“どうしたらモテるんですか”って聞かれていたので、思わず“だからモテないんですよ”って言っちゃいましたね。あとは、“汽車ポッポおじさん”も、なかなかすごい人でした」
──まだあるんですね!
「汽車ポッポおじさんとは、一緒に焼き鳥を食べたんですが、相性が合わないと感じたので“2回目(のデート)はないな……”って思っていたんです。店を出て、電車の駅まで一緒になるのが気まずかったので“私は歩いて帰りますね〜”と別れるつもりが、“僕も歩きたいな”って、ついてきちゃったんです。“また会話しなきゃ……”って思っていたら、その男性が私の後ろに回り始めて、体育の整列みたいな並びになったんです。どうしたんだろうって思ったら、突然、肩をガバってつかまれて! びっくりして、“ギャーー!! なにするんですか!?!?”って叫んで振り返ったら、“いやあ、汽車ポッポしたくて……”って言うんですよ」
──(笑)。どの男性もインパクトがありますね。
「でもまあ、汽車ポッポおじさんは、まだ可愛さがありますからね。あと、私としては、別の男性にコンビニでお金を出しておいてって言われたことが、いちばん悲しかったですね」
──それはどういうシチュエーションでしたか?
「3回目のデートまで進んだ相手だったのですが、ランチを割り勘にしたあとに、コンビニで買い物をしたら“(お金を)出しておいて”って言われたんです。しかも、“これから真保さんの家まで行くから”って言われて。“まだ付き合ってないよ……”って、心の中でツッコミましたけど。そうしたら、“この前のデートで、俺、全部出したじゃん”って言うんです。そんな初回デートで払ってくれたことを持ち出すなんて……と、がっかりしましたね。3回会っていただけに、わりと気に入っていたので、すごく落ち込みました」
──強烈な経験をされていますが、アプリをやめようとは思わないんですか。
「なんか、どういう状況でも、面白がっちゃうんですよね。コミュニケーションが一方的な人は、やっぱり怖いですが。だけど私は人間が好きで、人間観察も大好きなんです。さらに、もともとオタク気質というか、会った人たちのデータをとる楽しみもある。あと、アプリをやっているときは、“生きてる!”って強く実感できるんですよね。ぶっちゃけ、モノマネよりも、アプリでの出会いを通してのほうが、多くのネタを生み出しているかも。“1年間で100ネタもできた”みたいな。だから、会ってみてちょっと変な人でも、とりあえず話してみるようにしています」
──それだけ人間力のある小出さんが、すぐに帰りたくなった相手とかはいましたか?
「1人だけいました! もう、30分間まったく何もしゃべらない。“へ~なるほどね”しか発さない男性がいたんですよ。だから、“へ~なるほどね男”(笑)。会った瞬間に、私のてっぺんからつま先まで、なめるようにじーっと見てきて、そこでも“へ~なるほどね”って。へ〜なるほどね男さんだけは、会って30分で小芝居を打って、帰らせてもらいました」
アプリで結婚したいけれど、あと1年くらいでやめたい
──第一印象って、やっぱり重要なのですね。こじらせた人は置いておいて、誠実そうだけれどコミュニケーションが苦手なタイプと比べて、マッチングアプリに多いとされる、遊び人風の男性はどうでしょうか。
「一時期、アプリで出会った遊び人風のイケメンを本気にさせることにハマっていた時期もありますね(笑)」
──例えば、どのようにしたら、相手がこちらに興味を持つのでしょうか。
「仲よくなったあとに、“君みたいなタイプは、私がすぐ夢中になるって思っているでしょう。でも、追わないから”っていう雰囲気を出すんです。相手からのメッセージにも、返信を遅らせるとか、“私は短い恋を楽しむタイプだから。別に、ほかにもいるし”って感じで返すんですよ」
──いわゆる小悪魔系ですね。
「そうです。悪女みたいなのに憧れていたときがあって。そうしたら、複数人から“なんで俺みたいなモテるタイプを振るんだよ”って、逆に好かれたんですよ。“4回戦男”って名づけていた有名私大卒の男性は、“俺の遺伝子は優秀だよ”って送ってきました(笑)。さらに、“真保は追ってこないんだね。俺、こんなにかっこいいのに”って言ってきたので、“私は誰のものにもなりません”って返しました。余裕のある女を演じるのは、むちゃくちゃ楽しかったですね」
──マッチングアプリを使うことに対して、周りからなにか言われたことはありますか?
「“必死に婚活アプリをやるくらいなら、同じ職業の芸人さんがいいんじゃない”って言われることがあるんですよ。でも、ここまで頑張ってアプリやってきたのに、結果が出せないで終わるのは悔しいんです。公務員と女芸人っていう組み合わせもあまり見ないですし(笑)。個人的には芸人さんよりも、スーツを着ている素朴なサラリーマンが好みですね」
──今後も、マッチングアプリを使い続けますか?
「ここまできたら、マッチングアプリで出会った相手と絶対に結婚したいんですが、無期限ではなく、“アプリは、あと1年くらいでやめる”っていう目標があるんですよ。無事に彼氏ができてアプリをやめたら、心理学を学びたくて。できれば、心理学の資格を取ろうと思ってます。あとは経験を生かして婚活アドバイザーとか、究極は、マッチングアプリを作ってみたいですね(笑)。
マッチングアプリをがっつりやってみてわかったんですが、男も女も、みんな承認欲求のかたまりだし、そこには“心の闇”みたいなものも、うっすらと感じますね。でも、時にはその闇に惹かれてしまう。人間臭いんですよね。マッチングアプリって」
これまで、マッチングアプリに否定的なイメージがあった人もいるのではないでしょうか。小出さんのように、アプリを通して100人以上の人と会ってみた方の話を聞いてみたら、当初のイメージも少し変化したかもしれません。出会いのきっかけはアプリかもしれませんが、その先にあるのは、めくるめく人間模様。時には、ひとつのアプリから、これまでになかった出会いが広がっていくのかもしれません。
(取材・文/池守りぜね)
【PROFILE】
小出真保(こいで・まほ) ◎長野県上田市出身。太田プロダクション所属のモノマネ芸人。『ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ』(フジテレビ系)での優勝経験あり。近年はナレーションやコラム執筆も積極的に行うなど、活躍の場を広げるかたわら、マッチングアプリを駆使し、約2年で100人以上の男性と会い、真実の愛を探している。