猫カフェ、うさぎカフェなど、さまざまな動物とふれあえるカフェがありますが、中でも東京・千駄木にある『鳥のいるカフェ 千駄木店』は、他とは違う魅力があると評判です。
プライベートではセキセイインコと暮らしている筆者が、早速、体験取材をしてきました。
魅惑の「ふれあいルーム」に潜入!
24種類、140羽の鳥たちと戯れられる
店内には、インコがメインの「ふれあいルーム」のほか、フクロウをなでられるスポットがあり、フリータイム制・大人1650円、子ども(4~6歳)820円(※0~3歳は無料)で、鳥さんたちと遊べます。
基本、何時間でもいてもいいので、13時のオープンから日が暮れるまで楽しむ人もいるそうです(※ただし、混んでいるときは、1時間制になります)。
カフェといっても、同店は“人間のカフェ”ではありません。人間用の飲食メニューはなく、鳥さんにおやつをあげる“鳥さんのカフェ”なのです。
今回は、編集担当のKさんとカメラマンと筆者の3名で体験しました。荷物をロッカーに入れ、貸し出し用ポンチョ(無料)を来て、「ふれあいルーム」に入っていきました。
同店には、インコを中心に24種類、140羽の鳥さんたちがいて、部屋の中には、ウロコインコ、オキナインコ、コガネメキシコインコ、ルリコンゴウインコ、ヨウム、コールダック、イワシャコなど、カラフルな鳥さんたちが自由に飛び回ったり、くつろいだりしていました。
インコは350種くらい存在すると言われていますが、このお店には、セキセイインコなどの小型のインコはおらず、中型、大型のインコの中でも比較的珍しい種類だったり、希少なカラーだったりする鳥さんが多くいます。
“鳥まみれ”のモテモテ状態
部屋に入ってまず驚くのが、鳥さんたちの圧倒的な鳴き声。まるでジャングルにいるかのような高音のさえずりが、部屋中に響いていました。
しかし、たくさんの鳥さんがいながらも、部屋の中は清潔感が保たれていて、においはほとんど感じません。
ここにいる鳥さんたちは人間と遊ぶのが大好きなので、入室すると次々と飛んできては、腕、肩、そして頭に乗ってきます。カメラにも鳥さんたちが次々に乗ってきたので、カメラマンが悲鳴を上げていました(笑)。
おやつの「ひまわりの種」を与えると、さらにたくさんの鳥さんがやってきました。“鳥まみれ”とはこのことをいうのだろう、というくらい鳥さんたちに包まれ、モテモテ状態に!
店長の黒沢久美子さん曰く、「鳥さんたちの重み、温かさにぬくもりを感じる人が多い」のだとか。鳥さんたちがひっきりなしに人の身体に乗って遊んでくるので、非常にわちゃわちゃしているのですが、不思議と癒やされるのです。鳥さんたちの無邪気な姿を見ていると、気持ちがほぐされるからでしょう。
ここに1点、この鳥カフェならではの特徴があるかもしれません。他の動物カフェでは、食べ物を与えないと寄ってきてくれず、自分のほうから動物に近づいていくことが多いものですが、同店では、おやつをあげる前から、人間と遊びたがっている鳥さんが次々に寄ってきます。だから、“人気者気分”が味わえ、他にはない満足度があるのです。
それにここの鳥さんたちは、驚くほど人懐っこいです。中型、大型のインコはもちろんのこと、体長60cm以上あるナキサイチョウは、見た目は貫禄があるのですが優しい性格で、「なでてほしい」と言わんばかりに膝の上に乗ってきて、かわいいです。
ここまで人に懐くのは、よほどお店のスタッフの方々が日々、愛情をもってかわいがっているからだろうと感じずにはいられません。
気に入った子をお迎えすることができる!
実は、このお店にいる鳥さんのほとんどが販売中。実際にふれあって、相性が合う子と出会ったら、お迎えすることもできます。インコは7万8000円~で、珍しい種類だと100万円近くする子もいます。
中型のインコはだいたい15年以上、ヨウムだと40年以上生きると言われていますが、実際はそれ以上長生きすることがあります。 “それだけの長い月日をともに歩む家族”になるからこそ、こういった場所で実際にふれあって、相性のいい子を選んだほうがいいかもしれません。
ちなみに、自分よりも長生きする可能性のある大型インコをお迎えする人は、自分の後に引き継ぐことになるお子さんと一緒に来店し、「子どもと相性のいい鳥さん」を選ぶことが多いそうです。
同店は、全国から来店する人がいて、リピーターも多く、ハマっている人の中には、ほぼ毎日来店する常連客もいるのだとか。でも、それが納得できるほどの魅力が、ここにはあります。
初めて鳥さんとのふれあい体験をした編集担当のKさんは、「はじめは耳についた鳴き声が、最後は、川のせせらぎのような心地よさに変わった」と言うくらい、インコちゃんたちの魅力にメロメロになっていました。もちろん筆者も、「近々、また行きたくなるだろうな」という予感をしています(笑)。
黒沢久美子店長にインタビュー
“うちの子”以外のふれあいを楽しみに来る人も
──こういう“鳥さんとのふれあい”に特化したスタイルのカフェは、珍しいですよね?
「おそらく当店以外、他にはないと思います。他の鳥カフェは、鳥さんを眺めながらお茶を飲むスタイルが多いですよね。
家では鳥を飼えない方もご来店されますし、逆に飼っていても、おうちにいる子とは違う鳥さんとふれあって、“やっぱりうちの子が一番かわいい”と思うのが楽しいという方もいらっしゃいます(笑)」
──かわいい妻がいながら、キャバクラに行ってしまう男性の心理に似ていますね(笑)。正直言うと、「フリータイム制で大人1650円」という価格設定で、これだけたくさんの鳥さんたちに手厚いお世話をしながら採算をとるのは、難しいことだと思ったのですが、ここにいる子たちは販売されているということで、納得しました。だいたい月に何羽くらいお迎えがあるのですか?
「多い時で20羽前後、お迎えがあります。当店では、お客様がお迎えするときに、1時間ほどその子の性格やおうちでの過ごし方のアドバイスなどをレクチャーさせていただいています。そのほかにも、購入前のご相談から、お迎え後の飼育に関するご質問に関しても、LINEでのサポートをさせていただいています。
それもあってか、一度、お迎えただいた方がさらに2羽目、3羽目をお迎えしたいと、リピーターになっていただくことも多いです」
──シビアな話になりますが、売れ残った鳥さんはどうなるのですか?
「ほぼほぼみんなお迎えが決まるのですが、そうでなくても、『ふれあいルーム』でずっと大切に育て続けます」
──「鳥さんにとっての幸せな道」がいろいろと用意されているのは、安心できます。
鳥さんにも飼い主にとっても、最適な環境
──ここの鳥さんはかなり人懐っこいのですが、どうしてでしょうか?
「ヒナのさし餌のときから、人が手をかけて育てていますし、ひとりでも食べられる状態になってからお店に来た子でも、毎日、人とふれあうので、“人間とのスキンシップ”がとれているんです。
しかも、ここは“鳥さん中心の環境”にしているので、鳥さんにとっては、自分のタイミングで人間に遊んでもらえるので、ストレスがたまりません」
──飼い主にとっても、この環境で育った“人間が大好きな鳥さん”をお迎えできるので、共同生活がしやすいでしょうね。最近は、鳥さんをお迎えしたけど、「思ったのと違った」といって捨ててしまう飼い主がいるというニュースを見ては、心が痛みます。すぐに飼う前に、まずはここで体験していただくといいかもしれませんね。
「お迎えしたいけど、実際に鳥さんを飼えるかな? という人は、このお店でリアルに鳥さんとふれあうことによって、『お迎えをしたら、家ではこういう感じなんだ』というイメージができます。それで飼うかどうかの判断がしやすくなると思います」
──「人間に慣れた鳥さん」と「鳥さんを理解できている飼い主」。このお店が中間に入ることで、飼い主と鳥さんがいい関係を作りやすくなっているように感じます。ちなみに、黒沢店長にとっての「鳥の推しのポイント」は何ですか?
「この仕事に就いたとき、『鳥って、こんなに頭がいいんだ』と感心しました。とにかく人間を観察して、しっかり自分をアピールします。感情表現が豊かなので元気をもらえるし、こっちの気持ちを汲んで寄り添ってくれます。
鳥さんとともに生活をすると、鳥さんがだいたい同じ時間に起きるので、生活リズムが安定するし、鳥さん中心の会話になるので、家の中で人間同士が喧嘩をしなくなりました。実は、自宅には、シロハラインコ、ズグロシロハラインコ、フクロウがいるんです」
──お店でもご自宅でも、鳥さんのお世話をしているんですね!(驚)
「家に帰っても、ずっと鳥さんがいる生活です。シロハラインコは“空飛ぶ犬”と言われていて、コロコロ遊んで、ずっと人間のそばにいたがるので、かわいいです」
◇ ◇ ◇
鳥さんは、鳥かご(ケージ)でおとなしくしているものだと勘違いされがちですが、実際は、知性があって、人と意思疎通がとれる感情豊かな動物です。
興味のある方は、ぜひ『鳥のいるカフェ 千駄木』に行って、ふれあってみてはいかがでしょうか? 鳥さんの概念が変わりますよ!
(取材・文/加藤弓子)
●鳥のいるカフェ 千駄木店
営業時間:午後1時~午後8時(土日祝は、午前11時~)
所在地:東京都文京区千駄木3-42-16 1F
料金:フリータイム(大人)1650円、(子ども/4~6歳)820円 ※0~3歳は無料
※混雑時は1時間制、貸し出し用ポンチョあり(無料)