4月の頭に、今月、会社に入ったばかりの新卒社員向けに、カリスマと呼ばれる経営者の方たちのビジネス名言を紹介しました。(記事:人間関係の悩みやミスしたときに思い出したい、社会人1年生に贈る「カリスマ経営者たちのビジネス名言」)
今回は、会社で役立つ言葉を選んだ前回とは異なり、「会社に人生を奪われないように生きるための名言」を選んでみました。
「いきなり、1年目から?」と思われるかもしれません。しかし、社会人としてのスタートのときだからこそ、自分の人生のために、意識してほしい言葉を送ります。
採用面接で、いちばん評価された学生
名言の紹介の前に、以前、企業の新卒採用の担当者と話をしたときの話です。
その担当者いわく、「最近の学生の多くは、就活に関するネットの記事を読んで採用面接に臨んでくるため、質問に対して、みんなが同じような模範解答をしてくる」のだとか。
そこで、「今までに面接をした学生のなかで、“これは!”と思った回答をした学生はいましたか?」と聞いてみました。
以下は、そのときの会話です。
「1人だけ、とても印象的なことを言った学生がいました。そのときは面接官全員が、“あの学生はいいね。欲しいね!”と意見が一致しました」
「えっ、1人だけ! その学生は採用面接で、どんなことを言ったんですか?」
「ひととおりの質疑応答を終えたところで、その学生が、“1つだけよろしいでしょうか”と前置きをして、こう言ってきたんです。“私は将来、起業を考えています。ですので、もし採用していただいても、申し訳ありませんが3年で辞めさせていただく予定です!”と」
「えーっ、採用面接で、そんなことを!?」
「そうです。いや~、印象に残りましたね。ぜひ、欲しいと思いました」
「“一生を御社に捧(ささ)げるつもりです”という学生よりも、“3年で辞める”と宣言する学生のほうが欲しいですか?」
「そこまで強い意志を持って、自分の将来にしっかりと目を向けているなんて頼もしいじゃないですか。たとえ3年でも、社内にいい風を吹かせてくれそうな気がしました」
「なるほど。それで、採用したんですか?」
「いや、合格の打診はしたんですが、ほかの会社にとられてしまいました」
最初は驚きましたが、考えてみれば、確かに採用担当者の言うとおり、職場に配属したら、猛烈な勢いで仕事を覚えて、リーダーシップも発揮してくれそうです。
未来志向の企業は、昔のように「会社に服従する社員」ではなく、「会社に縛られない発想をしてくれる人材」を求めているのかもしれません。
会社に縛られないための名言4つ
さて、終身雇用が事実上、崩壊し、そもそも会社の寿命自体が短くなってしまった現代。それらの状況を鑑みたうえで、新卒社員に贈る「会社に人生を奪われないように生きるための名言」です。
「能ある鷹(たか)は爪を磨け」(本田宗一郎/本田技研工業の創業者)
本田氏は、「エキスパートであるという自信があれば、何も恐れることはない」という言葉も残しています。
勉強は、会社に就職したら終わるものではありません。社会に出るということは、生き残りのための本当の勉強のスタートです。賢い人は、会社で仕事をしながらも、しっかりと学び続けて爪を研(と)いでいます。
そうやって研いでおいた爪が、会社で大抜てきを受けたときや、会社自体が無くなってしまったときに再就職の武器になります。
「あなたの時間は限られている。だから、誰かの人生を生きて無駄にしてはいけない」(スティーブ・ジョブズ/アメリカの実業家・Apple社の共同創業者の1人)
こんなことを言っていたジョブズは、56歳という若さで故人になってしまいました。
人間、いつ、どうなるかわかりません。「定年後は自分の好きな人生を」なんて言っていると、後悔することになります。
「人間が考えたことは実現すると言われますが、口に出さなければ実現しません。だから僕は、まず口にする」(堀江貴文/実業家・著述家・タレント)
有言実行ですね。実は、口にすることで、なぜか協力してくれる人が現れるから不思議です。夢は、公言したとたん、目標に変わります。
「『ここは自分の思った会社と違うな』と感じたら、あなた方自身のために、早く転職をしてほしい。人生は一度しかないのだから」(盛田昭夫/実業家・ソニー株式会社の創業者の1人)
盛田氏は、ソニーの入社式で、新卒社員たちを前に、よくこの言葉を口にされていたそうです。
井深大(いぶか・まさる)氏とともに、自ら、ソニーを世界的な企業にまで育てたカリスマ経営者の言葉。新卒だからこそ、忘れないでほしい言葉です。
カリスマ経営者たちの「会社に人生を奪われないように生きるための名言」、いかがでしたか?
企業が社員の人生を背負いきれなくなってしまった今、社員に「副業」を奨励する企業も多くなりました。
どんな大企業でも、たった1社の会社に人生を預けてしまうのは危険です。
自分の人生は自分のもの。それを忘れず、社会に船出してください。
(文/西沢泰生)