高額で、施術に時間がかかるイメージがある“ストレートパーマ”。それが自宅で簡単にできる──そんな画期的な商品として株式会社ウテナが展開しているのが、くせ毛用ヘアケアブランドの『プロカリテ』シリーズ。
私自身も、お小遣いの少なかった学生時代、価格帯も手が伸ばしやすく「くせ毛よ、伸びろ」と切実な願いを込め、自宅で愛用していました。
発売から30年以上たった今も根強い人気があり、ストレートパーマ市場において、抜群の実績を誇っています。インタビュー#1では、『プロカリテ』を開発した背景や苦労したこと、ロングセラーの秘けつなどについて、同ブランドのマーケティング担当・大塚莉菜さんと、広報担当・則包(のりかね)裕美さんにお話を伺いました。
1991年に株式会社ウテナが発売した、くせ毛用のヘアケアシリーズ。バスタイム用のシャンプーやコンディショナー、アウトバスで使用するヘアケア商品のほか、自宅で“ストレートパーマ“や”縮毛矯正”が手軽に試せるような商品まで、幅広いラインアップ。ドラッグストアやオンラインで手軽に購入することができる。
はじめはくせ毛用ではなく、髪質改善用のアイテムだった
──発売当時、ストレートパーマは美容室で施術するのが当たり前の中、それが自宅でできるとなると、画期的な商品だったと思います。どのような背景から商品は生まれたのでしょうか?
大塚さん「’91年の発売当初は、くせ毛に悩む人用ではなく、“硬い髪を扱いやすくする商品が欲しい”というニーズを元に作られた商品でした。その後、硬い髪用の『プロカリテ I』 と、くせ毛用『プロカリテ II』の2つのブランドを展開し、2000年にくせ毛用の『ストレートパーマ』を発売しました。おかげさまで今もなお、ストレートパーマ市場では8割のシェアを誇るほど、いろんな人にご愛顧いただいています」
──最初は、くせ毛用の商品ではなかったということは、くせ毛にコンプレックスを持っている人がこんなに多いとは思っていなかったということですか?
大塚さん「そうですね。思った以上にくせ毛用の『プロカリテ II』の反響があり、くせ毛に悩みを持つ人が多いことがわかりました。近年の“髪の悩み”に関するアンケート調査(自社調べ)でも、“くせ毛・うねり”は上位に入り、半数以上がくせ毛に悩んでいるという結果が出ています。また、くせ毛に対するコンプレックスは、人によっては外出するのも嫌になってしまうほど、人生を左右する深い悩みでもあります。こうしたくせ毛に悩みを持つ人が、本当に効果を実感できる商品として開発したのが、この『ストレートパーマ』だったんです」
「私のためのものだ」と、思ってもらえる商品づくりを
──今でこそ、競合の多い商品ですが、当時は『プロカリテ』のような商品が少なかっただけに、開発での苦労も多かったのではないでしょうか?
大塚さん「当時の研究スタッフに聞いたところ、いちばん大変だったのは、“正しい使い方”を伝えることだったようです。本来ストレートパーマは、スキルを持った美容師がそれぞれの髪質やヘアスタイルなどに合わせて施術を行います。それを、細かい作業が苦手で、ストレートパーマの知識がない人が使ったとしても、一定の効果が導きだせるよう、わかりやすく伝えなければなりません。使い方を間違えれば、トラブルにもなりかねないため、商品化するのは会社としても非常に大きな決断だったようです」
則包さん「実際、社内では反対意見もあったと聞いています。しかし、当時の開発担当者が、“いい商品だから、手間と時間をかけても売り出していくべきだ”と、担当の研究スタッフと一緒に、熱意のあるプレゼンを行い実現したと聞いています」
──発売後の反響はどうだったのでしょうか?
則包さん「当初から爆発的な反響があったようですが、先駆け的な商品ということもあり、お客様も使い方に慣れていないため、“うまくストレートパーマがかからない”などのお問い合わせも多かったようです。間違いやすい箇所に関しては、使用説明書をその都度更新し、今では、イラストを組み合わせて視覚的にもわかるように工夫しています。昔は大手化粧品会社でも同じようにストレートパーマの商品を発売していましたが、お客様からの問い合わせに対応しきれずに、販売を中止してしまったと聞いています」
──競合他社が発売を断念するなかで、御社の『プロカリテ』は30年以上も続くロングセラー商品に。その秘けつを教えてください。
大塚さん「『プロカリテ』も競合と同じような状況に陥ったこともありました。その一方で、“この商品のおかげで、くせ毛の悩みから解放されました”という感謝の声もいただき、そういう小さな声を大事にして、日々、改善を続けてきたのが大きいと思います」
則包さん「それこそ、普段から当社の社長は“10人全員に評価されなくてもいいから、そのうち1人がファンになってくれる商品をつくりなさい”と、声をかけてくれます。実は、『プロカリテ』を最初に開発した3代目の社長も同じような考えを持っていました。ニッチな悩みでも、本当に欲しいと思ってくれるお客様がいれば開発する。それによって、“私のための商品だ”と、お客様に思っていただける。それがロングセラーになる秘けつだと思います」
徹底的に“くせ毛に悩む人”に寄り添うコミュニケーション
──プロカリテの商品開発以外に『くせ毛LABO』 というウェブサイトも展開されています。どのような背景があったのでしょうか?
大塚さん「くせ毛を研究してきた実績と専門性を世の中に伝えていくために、2008年に『くせ毛LABO』といウェブサイトを立ち上げました。“くせ毛はどのようにして起こるのか”といったメカニズムから、ストレートパーマの仕組み、くせ毛に効く生活習慣にいたるまで、くせ毛に関する幅広い情報を提供する専門サイトです。思い通りにならないくせ毛をまとめるちょっとしたコツや、くせ毛を生かすスタイリングなど、日常のシーンに合わせた提案も行い、寄り添ったコミュニケーションを行うよう、心がけています」
──ブランドメッセージとして“くせ毛をなおす”から“くせ毛をマネジメントする”に変わっているように思いますが、どのような理由からでしょうか。
大塚さん「“くせ毛をなおす”というメッセージだと、“くせ毛はよくないもの”と思われがちです。はたしてそうなのでしょうか。例えば、“今日はくせ毛を生かしたぬれ髪にしよう”とか、“明日は毛先にニュアンスを出して、こなれヘアにしよう”というふうに、自分自身でヘアスタイルをマネジメントする。くせ毛の悩みに振り回されるのではなく、それを個性と捉え、思い通りのヘアスタイルを叶える。そんなふうに、自由におしゃれを楽しんでもらいたい。“くせ毛をマネジメントする”というメッセージには、そういった意味を込めました」
小さな声を大切にした商品づくり、くせ毛に悩む人たちの気持ちに寄り添った『くせ毛LABO』でのコミュニケーションなど、ファンの心をつかむ活動の結果、30年以上も続くロングセラー商品『プロカリテ』が生まれたのではないでしょうか。
インタビュー#2では、新卒入社4年目で『プロカリテ』マーケティング担当の大塚さんに、商品への思いやこだわり、株式会社ウテナならではの柔軟な社風についてお話をお伺いします。
・プロカリテ公式サイト:https://www.utena.co.jp/products/brand/proqualite/
・くせ毛LABO:https://www.sara-hea.com/
(取材・文/西谷忠和、編集/本間美帆)