北川容疑者は地元出身。中学を卒業してすぐ働き始めたようだが、少年時代から存在感があった。

「授業中に教室を飛び出して廊下を徘徊(はいかい)する問題児。勉強もスポーツも苦手で、やんちゃな点だけで目立っていた。昔から身体が大きく、声も大きいので威圧感があったことはたしか。言動が乱暴でいわば“ジャイアン”のような存在だった」(男性町民)

 議員になると、ますます態度は大きくなった。議会で不規則発言をしたり、大声でヤジったり。「いつも偉そうな感じでした」と多くの町民が口をそろえる。

「年をとってから念願の大型バイクを乗り回すようになり、排気音が大きすぎて近づくとすぐわかるんです。頭にバンダナを巻いたりしてカッコつけていましたね」

 と別の男性町民。

同町は人気アニメの聖地

 北川容疑者には妻子がおり、孫もいる。逮捕翌日には立ち上げた会社の役員を辞任し、3月1日付で「一身上の都合」を理由に議員辞職した。

「辞職願は家族が代わりに議長に届け、受理されました。もともと退職金のようなものはなく、逆に議席があるままだと議員報酬を支払い続けることになりますので」(町議会事務局)

 “盗っ人に追い銭”となるような辞職許可ではないという。

 豊郷町では2月上旬、“事務方トップ”の幹部職員が女性の胸などを触ったとする強制わいせつ容疑で逮捕されたばかり。同町は人気アニメの聖地として知られ、「観光客に対して恥ずかしい」との声も聞かれる。

ハレンチ事件が相次いだ豊郷町役場

 別の町議会関係者は北川容疑者について、こんな感想を漏らした。

「議会ではヤジる声こそ大きいものの中身がなかったし、自分の質問が終わったら議場を途中退席するなど、まじめとは言いがたかった」

 さらに別の関係者は、

「何をしたくて議員バッジをつけたのかよくわからなかった。筋の通った主義主張がなく、勢いのあるほうや勝ち馬に乗るタイプ。選挙応援したり一票を投じた有権者はがっかりしていると思う」

 と町民の胸中を慮(おもんぱか)った。

 そもそも議員の資質はなかったようだ。


◎取材・文/渡辺高嗣(フリージャーナリスト)
〈PROFILE〉法曹界の専門紙『法律新聞』記者を経て、夕刊紙『内外タイムス』報道部で事件、政治、行政、流行などを取材。2010年2月より『週刊女性』で社会分野担当記者として取材・執筆する