体温を感じたほうに飛びかかる
静岡県にある国内最大の爬虫類・両生類の体感型動物園「iZoo(イズー)」の白輪剛史園長によると、アミメニシキヘビは全長約9・9メートルまで生育した記録があり、体重記録もアナコンダに次ぐ重量級。タイやシンガポールなど高温多湿な熱帯地域に住み、野ざらしの屋外では日本の冬はまず越せないという。
「性格は神経質です。あまり危険性をあおりたくないけれども、決しておとなしいヘビではなく反射的に噛みつくことがある。逃げた個体の大きさからすると、すでに繁殖能力を持ち血気盛んなヤングといった年ごろ。見つけても近づかず、飛びつかれないよう2メートルは距離をとってください」(白輪園長)
エサは哺乳類や鳥類を丸のみ。食いちぎったり、かじることはできない。昆虫や植物は食べず、現場周辺で捕食対象になりそうなのはネズミやネコ、スズメなどの小鳥やカラス、ハトなどが考えられる。だらかといって、犬や人間が「セーフ」とはならない。
「アミメニシキヘビは鼻先に熱感知センサーとなる器官があり、舌でにおいをかぎながら、体温を感じたほうに飛びかかります。噛みついたら身体を巻きつけ、相手の鼓動がなくなるまで締めつける。そのあと、相手が大きすぎたら食べないというだけの話なんです。ヘビが潜んでいそうな場所には近づかないことです」(白輪園長)
現場はJR東戸塚駅から西に約2キロの住宅街と山林が混在する環境。近くに広大な雑木林や畑、細い川があり、ヘビが好みそうな湿地や茂み、民家のエアコン室外機など温度の高い場所には注意が必要だろう。
近隣住民のストレスはたまるばかり。
「小学生の子どもにはかわいそうだけれども外で遊ぶのを禁止にした。登下校に途中まで付き添ったりしているし、いつになったらヘビは見つかるのか」(近所の女性)
「朝起きて雨戸を開けるのが怖い。そこにヘビがいたらどうしようって。外出するのも躊躇(ちゅうちょ)してしまう」(別の近所の女性)
現場周辺を犬の散歩で通った70代女性は、「散歩させないわけにはいかないし、なるべく草むらに近づかせないようにしているけど、ほら、こうやって茂みのほうに引っ張るのよ」と困った表情。
近くの畑で農作業をしていた80代男性は、「ふと近くの樹木を見上げ、枝にヘビが絡みついていないか確認してしまう」と過敏になっていた。
まだ見つからないのが不思議
逃走ヘビは推定3歳7か月。生育環境によっては35年生きることもあるというから、本来の寿命はまだまだ長い。
飼い主の男性によれば、与えていたエサは冷凍のラット(ドブネズミ)。1か月に1度、1匹丸のみするだけで数か月は腹が持つ。下アゴが左右に「ニューッと伸びる感じ」(同男性=※写真)で開き、大きなエサをのみ込んでいくという。
「生き物丸ごとなので栄養価がある。内臓もあるし骨もあり、カルシウム、ビタミンなどバランスがとれます。ほかのエサを与えたことはありません。飼い主目線で言うと、冷凍エサしか食べていないので外では何も捕食できないだろうなと。近くの雑木林にはリスなどもいるんですけど、狩ることはできないんじゃないか」(飼い主の男性)
夜行性ともいわれるアミメニシキヘビの行動範囲は狭く、暗闇に乗じても長距離を移動することは考えにくいという。
前出の白輪園長は「まだ見つからないのが不思議で、逃げた場所からせいぜい十数メートルの範囲内に潜んでいる可能性はいまだにあると思っている。ヘビにとって遠くに行く理由がないから」と話す。飼い主の男性から頼まれ、捜索のための助言もしている。