飼い主の男性は平均睡眠約5時間の捜索生活を続け、体調を崩すこともあったが、「いまは疲れている場合じゃない」と捜索を諦めない姿勢。ヘビマニア仲間が捜索を手伝ってくれている。
一方、飼い主の男性が暮らすアパートはそもそも「ペット禁止」で、周辺からはルール違反を厳しく指摘する声も聞く。飼い主の男性にそのことをぶつけると、
「はい。アパートの管理会社からも指摘されました。ご迷惑をおかけしました」
と非を認める。飼育していたほかのヘビなどをこのほど第三者に譲渡し、アパートからも退去して今後は“通い”で捜索を続ける。
離れて暮らす親からも叱られたという。
仮に戻ってきたとしても──
さて、ヘビが自発的に戻ってくる可能性はないのか。
「正直、ヘビは人になつくような生き物ではない。おそらく飼い主のことも認識できないし、迷子になったワンちゃんが戻ってくるみたいなことはないと思います。また、ヘビマニアの心理としてニックネームはつけません。熱帯魚などと同じでコレクションみたいな感じなんです」(飼い主の男性)
アミメニシキヘビについては継続して飼っている個体を除き、昨年6月以降は個人の愛玩目的での新規飼養を認めていない。戻って来なかったとしても、別の新しいアミメニシキヘビを飼うわけにはいかない。
飼い主の男性にとって、最悪のシナリオとは何か──。
「もう飼えないことではありません。逃げたヘビにも申し訳ないことをしてしまいました。仮に戻ってきたとしても、私が同じ個体を飼い続けるわけにはいかないでしょう。しかるべき場所に預けることなどを検討します。最悪のシナリオはヘビが人にケガを負わせることです。これを避けるために早く見つけたい。死骸でもいいからなんとしても見つけたい」(飼い主の男性)
男性はヘビの扱いに慣れているため噛みつかれたことはないといい、ケージを掃除するときは重いヘビを肩に担ぐこともあったという。
「ただ、ヘビが嫌がる触り方をすると襲われる危険性があるので、見つけても絶対に触ろうとしないでください」(飼い主の男性)
ヘビ逃走中──の結末は人間側の行動にかかってくる部分が大きそう。現場周辺には興味本位のやじ馬も少なくないが、おもしろがっている場合ではない。
◎取材・文/渡辺高嗣(フリージャーナリスト)
〈PROFILE〉法曹界の専門紙『法律新聞』記者を経て、夕刊紙『内外タイムス』報道部で事件、政治、行政、流行などを取材。2010年2月より『週刊女性』で社会分野担当記者として取材・執筆する