新型コロナが子どもたちに残したもの
人間の人生には、ときとして「人生観が変わる瞬間」というものがあります。
それは多くの場合、「これまでと同じ日常が続くということは、実は奇跡なのだと知ったとき」です。
例えば、事故や災害、病気などで死にかけたとき。
ごく近い人の死に触れたとき。
あるいは、日常生活が一瞬にして音を立てて崩れたとき。
コロナ禍の子どもたちは、大人でもキツイ、「日常が壊れる瞬間」を経験しました。
楽しみにしていたこと、目標にしていたこと、そうしたものを奪われるという理不尽な仕打ちを味わいました。
いい意味でも悪い意味でも、「人生観が変わった」という子どもが、たくさんいるのではないでしょうか。
しかし、私はこう思うのです。
子ども時代にそんなツラい経験をした彼らは、きっと「心が強くなった」のではないか。
新型コロナは、多くの子どもたちに「日常への感謝の思い」と「強い心」を残したのでは……。
稲盛くんがコロナ禍に詠んだ力強い短歌は、そのひとつの「証し」のような気がするのです。
最後に、稲盛くんがコロナ禍ではない「日常」を詠んだ歌を一首。
皮二本、もも塩三本 頂きます 塾の帰りに父と寄り道
いま、ようやく下火になった新型コロナ。
この短歌にあるような「日常」が、1日でも続くことを祈らずにはいられません。
(文/西沢泰生)