伝説のブランド『セーラーズ』三浦静加社長、おニャン子クラブへの衣装提供は「2回断っていた」

おニャン子クラブへの衣装提供は「断るつもりだった」

──そこからセーラーズの大ブレイクにつながるおニャン子クラブへの衣装提供は、どのようにして決まったのですか？

「港さん（注：港浩一・現共同テレビジョン代表取締役社長）っていう当時のフジテレビのプロデューサーが、『オールナイトフジ』（1983年～1991年放送）という深夜番組を担当していて。“今度、夕方帯で新番組『夕やけニャンニャン』（1985年～1987年放送）をやるので、衣装としてセーラーズを使わせてくれ”ってお願いされたんですよ。NHKの近くにお店があったこともあり、口コミで少しずつ広がっていたのかもしれません。でも、2回断っているんです」

──断っているんですか!?

「そうです。大量生産ではなくオリジナルにこだわっていたので、“そんなこと言われても、毎週、10人以上の衣装なんて用意できない”って伝えました。おまけに、上から下までのコーディネートで、予算が1人あたり1万円。でも番組のVTRを見せてもらったら、メンバーが着ている服が暗いイメージだったから、“可愛くしたい”って思って、引き受けることにしたんです」

──おニャン子クラブのイメージといえばセーラーズ、というくらい衣装が似合っていた記憶があります。

「予算に限りがあったので、最初は既存の商品で対応することに。セーラーくんのマークがついたノースリーブのカラフルなパーカーと、薄いストライプ地のトランクスを組み合わせたんです。当時、みんなは衣装をショートパンツだと思っていたみたいだけれど、実は男物のトランクスだったんですよ。番組収録中も、トランクスだって気づかれなかったみたい（笑）」

おニャン子クラブのために作ったジャンパーのうちのひとつ。　バイカラーにぷっくりしたワッペンがとてもキュート！　撮影／渡邉智裕

──結果的に、デビュー曲『セーラー服を脱がさないで』とセーラーズの衣装がベストマッチして、セーラーズは一躍、スターダムを駆けあがっていきます。三浦さんはいろいろな決断をすべて自分でされているので、判断能力が優れているなと感じました。

「そう？　みんな自分で決めない？ 」

──今はネットですぐリスクが調べられるので、危ないことはやらないかもしれないですね。

「私は、パソコンできないですからねえ（笑）」

──ファッション業界の実業家というと、『ZOZOTOWN』を築いた前澤友作さんが浮かびますが、三浦さんも一代でここまでのブランドを作りあげられたのって、やっぱりすごいと思います。

「前澤さんって、宇宙に行ったでしょ。実は、私も宇宙行きのチケットを持っていたんですよ。彼が出てきたときに、“遅いわ”って思っちゃった（笑）」

──なんと！　宇宙旅行のチケットをお持ちだったのは、いつぐらいの話ですか？

「'93年くらいの話かな。でも、お金を全世界から集めた会社がつぶれちゃったんですよね。だから行けなかったんですけれど。まあ、準備資金として、ものすごいお金を払いましたよ（笑）」

仕事部屋には、国内外のスターたちとの写真がズラリ！　セーラーズと三浦さんの大人気っぷりが伺える　撮影／渡邉智裕

　終始、笑顔を絶やさず、自身の経験をユーモラスに語ってくれる三浦さん。おニャン子クラブへの衣装提供をきっかけに、渋谷の店舗には連日、長蛇の列が……。インタビュー第2弾では、社会現象にもなった“セーラーズ旋風”について、語っていただきます。

（取材・文／池守りぜね）

【PROFILE】
三浦静加（みうら・しずか）　◎1953年4月12日生まれ。埼玉県出身。19歳で起業し、1984年には東京・渋谷に『SAILORS（セーラーズ）』をオープン。翌年、おニャン子クラブの衣装として起用されたのをきっかけに大人気となり、9坪のお店に1日2000人が殺到することも。セーラーズのファンは日本にとどまらず、マイケル・ジャクソンやスティービン・ワンダーをはじめとする海外セレブたちも愛用していたことで、さらに話題を呼んだ。
1999年5月15日に愛娘が誕生。脳性まひと診断されてからは、二人三脚でリハビリに励む日々。シングルマザーで、要介護4の母も自宅で介護しながら、現在はオンラインショップで新製品を販売している。