老犬たちはホームで“ワンダフルライフ”を送っていた
最高齢はサムくん19歳、最年少は10歳のこじろうくん。基本的にスタッフ2人が常駐して、朝は4時から深夜2時まで朝、昼、夜の三交代制でお世話をしている。“それじゃ、電車が動いてないんじゃ?”と思ったら、歩いて通える距離に店長と副店長は住んでいるんだそう。
「思い切って引っ越してきちゃいました(笑)。自分が休みの日でも、みんなに会いたくて顔を出しちゃうんですよね」と永松さん。
食事の後はスタッフさんが自力で排便できない子に排便介助をしたり、皮下点滴を行っていた。そんななかでも、歩き回ってる子たちに話しかけたりスキンシップは忘れない。スタッフ同士が笑顔なのも印象的だった。
「うちの施設はスタッフ仲がいいのが自慢です。そういう雰囲気ってわんちゃんたちも感じてしまうんですよ。私たちのモットーは“わんちゃんファースト”。居心地のいい空間を作ってあげたい。スタッフ全員が同じ方向を向いてお世話をさせていただいてます」と、東京ペットホーム代表の渡部帝(わたなべ・あきら)さんが説明してくれた。
そんな穏やかであたたかな空間のなかで足元にジャレてくるわんちゃんたちをなでながら、もはや取材に来たのを忘れかけていたころ、ひとりの紳士が登場。
往診専門の『モバイル・アニマル・クリニック』獣医師・小関隆先生という方で、週1でわんちゃんたちの往診にいらっしゃってるとのこと(ちなみに往診はオプションプラン)。小関先生も柔和な方で、わんちゃんたちも先生を見つけて、待ってました! とばかりに大フィーバー。
普段はスタッフさんがマッサージをしたり、爪や毛のお手入れをするそうだが、ヘルニアの持病がある子は飼い主さんと相談して、小関先生が患部に近赤外線を照射して痛みを和らげる治療を行ってくれる。
今日は柴犬のヒロくん(16歳)とチワワのきいちごちゃん(13歳)の施術日。小関先生が器具を体にあてるとポカポカしてきたのか、ヒロくんは眠り始め、きいちごちゃんは目がトロンとなって至福の顔に。その様子を見ていたスタッフ、取材陣みんなが笑顔に。何て幸せな空間なんだ……。
ふと見ると、2階へ上がる階段の壁にはわんちゃんたちの写真が飾られていた。こちらを利用していたけど、亡くなってしまったわんちゃんたちだそう。「みんな私たちの家族ですからね」(渡部さん)。
愛犬が亡くなった後も、東京ペットホームに遊びに来てくれるご利用者さんは後を絶たないのだとか。ご家族とともにスタッフも一緒にわんちゃんを送り出すことで、より一層の絆が深まっている。わんちゃんにとって“第2のわが家”であると同時に、飼い主さんにとっても“第2のわが家”になっているのだ。
現在、「東京ペットホーム」で暮らしているわんちゃんたちは全員が一生預かり。でも預けたから「後はよろしく~!」ではなく、ほとんどの飼い主さんが、夕方や休日になると愛するペットたちに会いに来る。老犬ホームに預けることが悲しい結末だと思っていた自分が無性に恥ずかしくなった。
最期の虹の橋を渡るその日まで、家族と一緒に暮らすことを誰もが望むだろうけど、東京ペットホームのような“第2の家族”が愛情を注いでくれる場所も選択肢のひとつと考えていいのかもしれない。
謎の多かった老犬ホームだったけど、わんこたちは老犬ホームで“ワンダフルライフ”を送っていたのだった。