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1986年、39歳でのデビューから現在まで「ひとりの生き方」をテーマに、多くの著書を発表してきたノンフィクション作家の松原惇子さん。松原さんが愛してやまない猫たちとの思い出と、猫から学んだあれこれをつづる連載エッセイです。

松原惇子の「グレ日記」

グレちゃんと帰った実家は野良猫たちのワンダーランド! “利口な猫”チーちゃんを可愛がる母との同居生活

SNSでの感想
マミーが暮らす2階のベランダでくつろぐグレちゃん
目次
  • “愛人”のチーちゃんに馬鹿にされるグレお嬢様
  • 母との同居生活を続けられたのはグレのおかげ

 1986年、39歳でのデビューから現在まで「ひとりの生き方」をテーマに、多くの著書を発表してきたノンフィクション作家の松原惇子さん。松原さんが愛してやまない猫たちとの思い出と、猫から学んだあれこれをつづる連載エッセイです。

第5回→猫にとって家移りは一番の負担だけど──マンションから一戸建てへの引っ越しでグレちゃんに表れた“変化”

第6回

 最近の戸建ては、敷地いっぱいに家を建てるので庭のない家が多いようだ。実家の周りも小さな白いカステラのような戸建てが多く建設されるようになった。母の家には庭があるので、野良猫がよくやってくる。わたしはあまり可愛いと思ったことはないが、三毛猫のチーちゃんは母のお気に入りだ。そういえば、チーちゃんはうちの物置で5匹も出産した運のいい猫だ。そのご縁なのかは知らないが、あまた来る野良猫の中で、唯一、チーちゃんだけが家にあがることを許されている。

庭にやってくる野良猫たち。一番左が母のお気に入りのチーちゃん

 あるとき、リビングの椅子に丸くなっているチーちゃんを見たときに、仰天したわたしは、思わず大声をだした。

「お母さん、チーちゃんは野良猫なんだから、家にあげたらだめよ」 

 すると母は、「この子は利口なのよ。居ていいのはここだけだと、ちゃんとわきまえているの。あなたのグレちゃんとは違うのよ。ねっ、チーちゃん

 猫は人間の心の隙間を静かに埋めてくれる最高のパートナーのようだ。チーちゃんは、父が亡くなった後のひとり暮らしの母の相棒になっていた。

 実家の2階に引っ越してきて一番びっくりしたのは、下のリビングに降りて行ったとき、母の寝室を見るともなく見ると、利口でわきまえているはずのチーちゃんが、母と添い寝しているではないか。なぜか、見てはいけない現場を見たような後ろめたい気分になる。母によると、チーちゃんはどんなに遅くても、どこに帰るのか知らないが、必ず帰るという。泊まっていくことはないらしい。ちょっとせつない愛人のようではないか。

 わたしにはきついことを言う母も、愛人チーちゃんには優しい。いわゆる猫なで声で「そう、もう帰るの。寒いから気をつけてね。ありがとう。明日も来てね」だってさ。

“愛人”のチーちゃんに馬鹿にされるグレお嬢様

 お嬢様のグレと愛人チーちゃんは決して交わらない。グレにとり、チーちゃんは初めて見る猫だ。怖いのかマミーと一緒でないと1階には行かない。一方、男性経験豊かで世間慣れしているチーちゃんはグレを「この小娘」としか見てないようで完全に馬鹿にしている。一度鉢合わせしたときのチーちゃんのうなり声に、グレのビビリは半端ではなかった。

リビングの椅子でくつろぐチーちゃん(左上)と鉢合わせてビビっているグレちゃん(右下)

 実家は野良猫たちのワンダーランドだ。家の中にはチーちゃんとグレが。庭にはいろいろな子が顔を見せる。いつも来ていた子が来なくなると、違う子がやってくる。わたしはそのたびに写真を撮りまくる。

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