りかちゃんのおうちがほしい

 思わずツッコミたくなる、こんなお願いもありました。

「かん字がたくさんかけますように」

 うーむ。カワイイ。「かん字」とか、「かけますように」とか、これからたくさん漢字を覚えてほしい。

 見た瞬間、ドキッとしたのは、こんなお願いです。

「りかちゃんのおうちがほしい」

 お友だちの女の子が大きな家に住んでいて、その家を乗っ取りたい……と、一瞬そんな想像をしましたが、考えてみたら、リカちゃん人形の家『リカちゃんハウス』が欲しいという話ですね。ああ、びっくりした……。もっともこれは、おかしな勘違いをする私のほうが、想像力がたくましすぎるのかも……。

 なかには、こんなお願いも。

「パパの帰宅時間が早くなりますように」

 この「帰宅時間」という言葉が妙に大人っぽいような。お母さんがよく「パパはいつも帰宅時間が遅いよね」なんて言っているのでしょうか。

 実際に、「これ、書いたのママですよね……」という、次のような願いごともありました。

「10歳肌が若返りますように」

 小学生のうちは「歳」とか「肌」とか漢字で習いませんから、書いたのはおそらくママ。そう言えば、親子で短冊を書いているのを見かけたことがあります。

 ママ、それにしてもガチンコなお願いですね……。

 最後に、今回の短冊の傾向は、ここ数年で増えたであろう新型コロナ関連のお願いをおさえて、なんといっても世界平和を願うものでした。

 ロシアのウクライナ侵攻は、子どもたちにとっても関心ごとのようです。
 
「このよから せんそうが なくなりますように」

 そんな短冊の中に、こんな立派な願いごとも。

「愛・自由・希望・夢 願います」

 書かれている文字まで達筆。おそらく、小学校高学年の子が書いたと思われますが、こんな子は、将来は政治家とか、宗教家になるのでしょうか?

 世界平和と、自分の願いの両方が書かれた短冊もありました。
 
「世界が平和になりますように ドリームジャンボがあたりますように」

 このギャップが正直でいいです。

 笹竹の短冊に書かれる、「子どもたちのお願い」は、その時代を生きる「無力な子どもたち」の切実な願望が反映されています。

 いわば、時代の写し鏡。

 もし、スーパーなどで笹竹を見かけたら、ぜひ、短冊の願いごとを見てみてください。ちょっとした小説並みに面白いです。

(文/西沢泰生)