地元にある個人店で“当たりの店”の見分け方

──チェーン系の居酒屋ではなく、地元に密着しているような個人店でいい店の見分け方ってありますか?

「個人店に入るのに緊張するって人はいますよね。でもそれが普通ですよね。僕は見分けていなくて。本当にいい店の見分け方って、ないんですよね、本当に。大前提として、その町に昔からある店って営業が続いているってことだから、いい店なんですよ

──なるほど。

「酒場に興味を持ち始めたりした頃は、そういう観点で老舗っぽい店を見つけたら入ったりしていたんです。ちょっとのれんが古かったり、佇まいが古かったりする店は、“こんな値段で、おいしいものが食べられるんだ!”っていう驚きの出合いができる気がしますね

──もしも、料理がおいしくない店だったらどうしますか?

今の日本の飲食店でまずいものってなかなか出てこないじゃないですか。だからまずい料理が出てきたほうが、逆に面白いって思っちゃうんですよ。そういうのも含めていい経験だなって感じ。どこの店に行っても面白いって思うんですよ

──おなかが空いていたのに料理をすごく待たされたりすると、失敗したなって思ってしまうのですが……。

僕だったら、そういうトラブルがあるとガッツポーズですよね(笑)。でも人間、心に余裕がないと状況を楽しめないですよね。例えば、改札の手前でおばあちゃんが止まっちゃっても、普段は“しょうがない”って思えるけれど、急いでいたらイライラしちゃうじゃないですか。でもそういう出来事に遭遇するような店ほど、記憶に残っちゃうんですよね」

──飲食店で、料理が出てくるまではどのように過ごしていますか?

実はメイン料理が出てくるまでの組み立てを考えるのも面白いんですよ。​ここの店だったら(と言いながら、黒板や壁に貼られたメニュー表を指す)、塩辛とメイン料理を頼むとか……。早く出てきそうなものを頼むと、間が持つじゃないですか。自分の中で、どの順番で頼もうって組み立てるのが楽しかったりするんですよ。町中華だったら、ラーメンが出てくる前に先にメンマチャーシューを頼んで、とりあえず、それをつまみながら瓶ビールを飲んで待つとか。で、“完璧な計画だな……”とか思っていたら、なぜか先にラーメンが来てしまって、お腹いっぱいの状態でメンマチャーシューを食べてるとか。そういう状況も楽しいんです」

パリッコさん 撮影/齋藤周造

──パリッコさんて、もしかしてひとりっ子でしたか?

「ひとりっ子です。子どもの頃から、意識したことはないけれど、ひとりでいくらでも時間潰せたタイプでしたね。誰か話し相手がほしいっていうようなことはなかったですね。

──確かにひとりの時間の過ごし方が上手な気がしました。パリッコさんは、チェーン系の居酒屋には行かれたりしますか?

僕も若い頃は生意気だったんで、チェーン店には行かないって思っていました。周りにも“チェーン店なんて行ってられないね”って言っちゃってたけど、それは間違っていたんですね。チェーン店で飲むのは幸せですよ。今、うちの子どもがまだ小さいので、夜に飲み歩くのが難しくなってしまったんです。仕事柄、昼に飲むことが増えたので、『バーミヤン』とか『日高屋』とかはいつでも飲めるので重宝しますね