チェーン店を居酒屋にして楽しむ

──チェーン店でおすすめのメニューはありますか?

「『来来亭』という滋賀発祥のチェーン系の中華店があるんですが、そこの『ラーメン』は京都風で、あっさりとした鶏ガラ醤油スープに背脂がたっぷりで人気なんです。ところがあるとき、身体が脂っ気を欲してたのか、メニューに『こってりラーメン』というのがあるのに気がついて頼んでみたんです。するとそっちは豚骨系の、ものすごい濃厚さで、これと『ドライサワー』ってのが、もうたまらなく合って!

──おいしさが伝わってきました。ファストフード店でも飲まれたりするのですか?

「『松屋』がね、素晴らしいんですよ。『ごろごろ煮込みチキンカレー』(630円・税込み)という松屋のオリジナルカレーが復活したんですよ。しかも松屋は、“ロカボチェンジ”というサービスがあって、ライスを生野菜に変えられるんです。つまり、ごろごろ煮込みチキンカレーの“アタマ”(注:カレールーのみのこと)と瓶ビール(490円・税込み)で飲めて、サイドにサラダまでついてくるというわけで。それで合計1120円。そんなすごいセットを出している居酒屋があったら、酒飲みの話題を独占しますよ。松屋といえば『牛めし』ですけど、僕のなかではカレー屋だと思っているくらい、カレーがおいしいですし」

パリッコさん 撮影/齋藤周造

──1000円くらいでカレーを食べながら、ビールを飲めるんですね。ファストフードは安く飲むのに最適な場所ですね。では、大衆酒場はどうでしょうか。

大衆酒場に入ったことがないという人は、外観を見てもメニューや値段がわからないことが一番怖いって思っているんじゃないかな。でも、試しに1杯飲んで、1品食べてみる。もしも自分に合わないってなれば帰ればいい。それで1万円取られるってことはないですから」

──もしも実際の飲食代が、想定よりも高かったらどうしていますか?

「僕は店に文句言ったこともないし、払います。あまり金額は気にしていないのかもしれない。もちろん、若かりし頃に繁華街で客引きをやっているようなお店に入ってしまい、みんな1杯ずつしか飲んでないのにひとり5000円、みたいな経験はあります。でも、いわゆる大衆酒場ではそういうことはない。もしかして酔っぱらって気づいていないだけなのかな? いや、そんなことはないはずです(笑)」

外から店内が見えないほうが興奮する性質

──大衆酒場は、外から店の中が見えないことも多いですが、店内が見えないと不安になりませんか?

僕は店内が見えないほうが興奮する性質かな(笑)。意外と勇気を出して入ってみた店に、居心地のいい場所があるかもしれないですよ。僕は“天国酒場”と呼んでいるのですが、公園の中にある茶屋みたいな店とか、残っているのが奇跡に思える屋台みたいな店が好きなんです

──パリッコさんは、「食べログ」などの口コミや評価を参考にされますか?

「純粋に飲みたいときは絶対に見ないですね。大衆酒場って、店のどこかに歴史がにじみ出ているって思うんですよ。たとえ建物は建て替えてあっても、店内を見ると昔のカウンターやメニュー表を残している。それはお客さんがそれを望んでいるからなんです。そういう店は、間違いなく名店の可能性が高いですね

──それで言うと、扉が壊れてビニールシートになっている居酒屋を見かけたことがあります。

いいなあ、その寒さがあればつまみはいらないですね(笑)。浅草の地下街に『福ちゃん』という焼きそばの店があって、昼から飲めるんですよ。そういう地下街で飲んでいるっていう非日常感が好きなんですよね

──店内がどういう状況だと入りやすいとかありますか?

「常連さんでぎゅうぎゅうじゃなくて、和やかな雰囲気だったら、入ってみてもいいんじゃないですかね。そうしたら、“この店、初めて?”とか“なんで来たの?”って、特に若い人や女性は、周りから珍しがってよくしてもらえるかもしれないですね」

  ◇   ◇   ◇  

 お酒を飲みながら、リラックスムードで語ってくれたパリッコさん。入ってみるのが怖いという不安を乗り越えれば、そこには居心地のいい空間が待っているかもしれません。第2弾インタビュー(酒場ライター・パリッコさんが語る「肉豆腐」が持つ深い魅力と、一度は行くべき「老舗大衆酒場」)では、パリッコさんが出会ったかっこいいお客さんや、関東と関西では酔っぱらいの態度が違う!? というエピソードをお届けします。

(取材・文/池守りぜね)

■撮影協力:京風居酒屋 先斗町
​東京都新宿区歌舞伎町2-9-18 ライオンズプラザ新宿1F

京風居酒屋 先斗町 撮影/齋藤周造

〈PROFILE〉
パリッコ
1978年東京生まれ。酒場ライター、漫画家/イラストレーター、DJ/トラックメイカー他。酒好きが高じ、2000年代後半よりお酒と酒場に関する記事の執筆を始める。著書に『晩酌わくわく!アイデアレシピ』(Pヴァイン)、『天国酒場』(柏書房)、『つつまし酒 懐と心にやさしい46の飲み方』(光文社)、『酒場っ子』(スタンド・ブックス)、スズキナオ氏との共著に『“よむ"お酒』(イースト・プレス)、『酒の穴』(シカク出版)、『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』(Pヴァイン)など。最新刊は清野とおる氏との共著『赤羽以外の「色んな街」を歩いてみた』(扶桑社)。

『赤羽以外の「色んな街」を歩いてみた』(扶桑社) ※記事中の写真をクリックするとAmazonの紹介ページにジャンプします