そんなぐじゅぐじゅした毎日を送っていたある日、近隣に団地があることを知り、実家を出ることを決断する。とりあえず賃貸でいい。それよりひとり暮らしに戻ることが先決だ。団地で猫は飼えないので、昼は団地で仕事をして、夕方、グレちゃんのいる本宅に帰って寝る。グレには気の毒だと思ったが、母から私のいない昼間は母のところで過ごしていると聞き、それも決断できた理由のひとつだ。でも、ちょっとがっかり。マミーしか見てないグレだと思っていたのに、母と一緒にいる? 複雑な心境のわたし。

グレちゃんに近づく猫好きな母

引っ越した団地の敷地内には野良猫がいっぱい!

 団地の敷地内は緑がいっぱいで自然を感じられる。散歩するともなく歩いていると、茶トラの猫に遭遇する。目を凝らして草むらを見るとまだいるではないか。わあ、猫探しだわ。しかも、猫にエサをあげている人もいるらしく警戒しながらも懐いている。

ソーシャルデイスタンスをとりながら暮らすキジトラ2匹

 通学帰りの子供たちがしゃがんで猫をなでている。ああ、なんて幸せな光景だろうか。わたしが近づいて「この子、なんていう名前?」と触ろうとすると、「だめ、そっと触らないとだめよ」と注意されてしまった。猫の愛し方を知っている素晴らしい子供たちだ。

 猫に会いたいばかりにここを通る人も多いようだ。そのたびに「猫エサ禁止」の看板がたつ。ここの野良猫たちは幸いにもエサに困っていないので暮らしていけるが、動物にとって食べ物がないほど、苦しいことはない。

敷地内の物陰を見ると……いる!

 それは人間にとっても同じことだ。仕事を失いアパートを追われ、行き場のない人が昨今多くなっている。イマジンの歌ではないが、想像してみて! それが、もし、自分だったら? それが友達だったら? そのとき食料を与えてくれる人がいたら? 最近の公園を見て悲しくなるのは、ホームレスが横になれないように、ベンチに仕切りを取り付けていることだ。人間に愛されている猫は幸せだ。そして猫を愛せる自分でよかった。

*第10回に続きます。