わたしと同じにおいがする、ちょっと変わった先生

 夕方、大きなワゴン車から大きなケージを降ろす先生が現れた。なんか怪しい雰囲気でおかしくなる。変わっているとはこのことか。この先生は、わたしと同じひとり者のにおいがする。人を雇わず、気楽な往診というスタイルでやれるのは、ひとりだからだろう。お金を稼ぐことより、自由を重んじる人に違いない。

 先生は挨拶もままならなかったが、わたしからすればそれがどうしたと言いたい。上がり際に、挨拶代わりのカレンダーを出してきた。あら、普通だわと心の中で思うわたし。次の瞬間、「ワンちゃんですよね」と玄関わきの下駄箱の上に置いたので「猫です」と言うと、間違いを指摘された子供のように、犬のカレンダーをひっこめた。やっぱり変わっているのか。それにしても、猫のカレンダーが欲しかった!!

 しかし、さすがに獣医さんだけのことはある。逃げまくるグレを一瞬で押さえ、ケージの中に入れる。そこに手をいれて体を触る。グレはやられっぱなしだ。

「アメショー(アメリカンショートヘア)が入っているからだね。きれいな子だ」の先生の一言に、マミーはカレンダーのことを忘れて大満足。

 先生曰く、冬はフローリングの床は冷たいので、猫ちゃんの足も冷える。猫の歩くところには絨毯を敷いてあげるようにと。長年猫を飼っているのに、気づかなかった指摘だ。

 わたしも変わっているせいか、それとも、ひとり者同士だからなのか、先生と話しているとのどかだ。代金は、注射と薬代の5000円。往診料はなしだ。

マミーのビールを前に

*第12回に続きます。