「あと14年しかない」と意識してから考え方が変わった

 ある日、コロナ禍の中、近所の呼吸器内科クリニックを受診したとき、悪玉コレステロールがかなり高いと言われた。もちろん、昔からなので数値は知っていたが、70代なので薬を飲んだほうがいいのか聞いてみると、先生はこう言った。「松原さんは74歳? ということは女性の平均年齢が88歳として、あと14年の寿命ってことだね」。がんでもないのに、余命宣告されたのだから心臓が止まりそうになった。あと14年か、いつの間にかそんな死に近いところまで来ていたとは。

 いつまでも若い気でいたが、目の前の30代のドクターからみたら、わたしはおばあちゃんなのだ。そして、ドクターは言った。「松原さん、あと14年を薬を飲んで生きるのか、それとも薬のことを忘れて生きるのか、それはあなた次第ですよ

 これほどまでに、自分の年齢を自覚させられたことはなかったが、あと14年しかないと意識してからのわたしの考え方は変わった。猫との生活は素晴らしいが、もっとやることがあるのではないか。猫との素晴らしい暮らしはこれで終わりにして、ちがう人生を始めようよ。残り時間は少ない。そのことに気づいたとたん、実に2年ぶりに心が弾んだ。

 もし、人生が4楽章から成立しているとしたら、第1楽章、第2楽章、第3楽章が終わり、締めの第4楽章に入るところにちがいない。最後の章をどういう音で奏でるか。静かな幸せか。それとも最後の爆発か。だんだん、楽しくなってきた。これからのわたしは、グレちゃんを見習い、人に媚びず、欲をかかず、優雅で美しく、凛として暮らすわよ。

これからは、グレちゃんを見習って生きていきたい

 グレ日記を読んでくださった皆様、約4か月の間、ありがとうございました。心からお礼を申し上げます。グレちゃん、みなさんに見てもらえてよかったね。次回は総集編をお楽しみください。

猫を愛する松原惇子より