「私のためのものだ」と、思ってもらえる商品づくりを

──今でこそ、競合の多い商品ですが、当時は『プロカリテ』のような商品が少なかっただけに、開発での苦労も多かったのではないでしょうか?

大塚さん「当時の研究スタッフに聞いたところ、いちばん大変だったのは、“正しい使い方”を伝えることだったようです。本来ストレートパーマは、スキルを持った美容師がそれぞれの髪質やヘアスタイルなどに合わせて施術を行います。それを、細かい作業が苦手で、ストレートパーマの知識がない人が使ったとしても、一定の効果が導きだせるよう、わかりやすく伝えなければなりません。使い方を間違えれば、トラブルにもなりかねないため、商品化するのは会社としても非常に大きな決断だったようです

則包さん「実際、社内では反対意見もあったと聞いています。しかし、当時の開発担当者が、“いい商品だから、手間と時間をかけても売り出していくべきだ”と、担当の研究スタッフと一緒に、熱意のあるプレゼンを行い実現したと聞いています」

──発売後の反響はどうだったのでしょうか?

則包さん「当初から爆発的な反響があったようですが、先駆け的な商品ということもあり、お客様も使い方に慣れていないため、“うまくストレートパーマがかからない”などのお問い合わせも多かったようです。間違いやすい箇所に関しては、使用説明書をその都度更新し、今では、イラストを組み合わせて視覚的にもわかるように工夫しています。昔は大手化粧品会社でも同じようにストレートパーマの商品を発売していましたが、お客様からの問い合わせに対応しきれずに、販売を中止してしまったと聞いています

──競合他社が発売を断念するなかで、御社の『プロカリテ』は30年以上も続くロングセラー商品に。その秘けつを教えてください。

大塚さん「『プロカリテ』も競合と同じような状況に陥ったこともありました。その一方で、“この商品のおかげで、くせ毛の悩みから解放されました”という感謝の声もいただき、そういう小さな声を大事にして、日々、改善を続けてきたのが大きいと思います

則包さん「それこそ、普段から当社の社長は“10人全員に評価されなくてもいいから、そのうち1人がファンになってくれる商品をつくりなさい”と、声をかけてくれます。実は、『プロカリテ』を最初に開発した3代目の社長も同じような考えを持っていました。ニッチな悩みでも、本当に欲しいと思ってくれるお客様がいれば開発する。それによって、“私のための商品だ”と、お客様に思っていただける。それがロングセラーになる秘けつだと思います

EXストレートパーマの中に同梱されている使用説明書。なるべくわかりやすく伝えられるよう、改良を重ねてイラストも多めに 撮影/佐藤靖彦