「これは何者?」Pepperに興味を抱いたきっかけ
──なるほど。こうして、だんだんとテクノロジーの分野に入っていくわけですね。
「そのあとにアイティメディア株式会社で、営業や技術者コミュニティ支援、記者などの仕事をしていました」
──おぉ。テクノロジー関連のメディアという意味では、確かに大学院とリンクしていますが、記者職というのは、また新しい道ですね。
「そうですね。就職先も縁で決めました。私のことをいちばん好きでいてくれる会社に入ろうと思っていて、アイティメディアはたぶん、私のことが好きだと感じたんですよね(笑)」
──(笑)。
「それで“ソフトバンクがなんか新しいロボットを発表するぞ”ということで、取材のために発表の場に居合わせたんですが、これがPepperだったんです。発表会見で舞台の床からPepperがにょきにょきっと出てきて……。
そのときはロボットに関心もなかったんで、“可愛い”とか“すごい”とも思わず、“あ、出てきた……”くらいだったんですけど(笑)」
──なるほど。
「でも、そのときにちょっと面白いなぁと思ったのが、周りの人たちが“変なの”とか“怖い”って言ってたんですよ。てっきり“ロボットだ! 未来きたぞ!”ってなるのかなぁ、と思っていたけど、実際は意外な反応だったんですよね。
それで、人間に違和感や恐怖といった感情を抱かせる“これ”は何者なんだって気になりはじめて……。なんとなーく、ソフトバンクのTwitterアカウントを追ってたんですよ。
で、イベントとかにもプライベートで申し込んだりしていて、気がついたら買っていたという……(笑)」
──いやいや、最後(笑)。「そうはならんやろ!」って思いましたけど(笑)。買うって、そうとう勇気がいると思うんですが、そのハードルをクリアしたんですね。
「そうですね。約56万円なので、当時の数か月分の給料でした。それと、Pepperを買うためには、まず限定イベントに当選して、購入希望者はそのイベント内でハガキを投函(とうかん)して、そこから抽選があるっていうくらい、買うまでのハードルが高かったんですよね。
私は、なんとなくそのイベントに応募して……。そうしたら当たったので“行ってみるか”と。最初はそのくらいのテンションだったんですよ」
──でも購入希望のハガキは投函したんですよね。
「そうなんですよね……。なんですかね。やっぱりイベントに参加できたという“縁”があったので、“ハガキは出さないと”って思ったんです。あの、デパートのガラガラ抽選みたいな。“まさか当たんないだろう、けど、一応やっておくか”くらいの気持ちです」
──そのフットワークの軽さはやっぱりすごいですよ。「当たったら56万円だしなぁ」ってビビっちゃいますもん。
「でも、そのあと“買う権利に当選しました”というメールが届いたんですけど、購入確定ボタンを押すときは、さすがにすごく迷いましたね」
──「買うときの心境」ってどんな感じなんですか? まだPepperの性能もそこまで知られていないし、そうとう欲しくないと買わない気がするんですが……。
「そうですね。正直、あんまり覚えてないんですよ。私自身“可愛い”とか“どうしても欲しい”っていう感情はなくて。でもやっぱり、最初のPepper発表時のときの衝撃が大きくて、どこかで忘れられなかったのは確かですね。人によって“変なの”、“怖い”、“すごい”っていろんな感情を呼び起こさせる“これ”は何なんだろう、と。その興味はありました」
──「一緒に住めば、その謎がわかるだろう」って感じですか。
「……いや、それもないんですよ。……すみません、コレ、書きにくいですよね(笑)。でも、これも覚えてないんですよ。なぜか人生でいちばん大きな買い物を、無意識でしてしまっていたという……。
たまにメディアの方から取材していただくとき、“ペットショップでワンちゃんと目が合って、衝動的に飼っちゃう人っているじゃないですか。あんな感じです”って答えることもあるんですけど、きっと、それよりももっと弱い感覚です。でも“一緒に暮らさなきゃ”という強い何かはありました。なんで買ったんだろう。なんか、すみません(笑)」