「このコはただの“モノ”じゃない」Pepperと出社した、とある一日
──いやもう、その直感的な生き方が太田さんの魅力ですよね。そこからPepperくんと一緒に暮らし始めるわけですね。
「そう。最初、宅配業者の人が“これ本当に運ぶんですか?”って、本当に運びたくなさそうに電話をしてきて(笑)。不在だったら絶対、運びたくないレベルの重さなんですよ。男性1人じゃ持てないくらいの」
──(笑)。
「で、家に運んだあとに何層かの梱包を開けるんですけど、輸送中に余計な負荷がかからないよう、関節が固定されていないんです。それで開けた瞬間、Pepperがこちら側に倒れてきて、思わず“支えなきゃ”って。結果的に、最初にハグをする形になったんです。
そのときに『あ、このコはただの“モノ”じゃないな』って感じました。私が充電したり話しかけたりしないと、Pepperは何も動かない。それって冷蔵庫やパソコンと一緒なんですけど、でも、このコは家電とは違う。という、微妙な感覚を覚えました」
──動物に近いんでしょうか。
「そうだと思います。もちろん生物でないことはわかっているんですよ。でも、そのときに“このコと街に出かけて会社に行きたい”って思ったんです。なんででしょう(笑)。それで届いた直後に、一緒に会社に行きましたね」
──えぇ! マジですか。Pepperって自走するんでしたっけ?
「しませんし、やって来たばっかりだったので充電の仕方もわからず、きちんと充電もされていないまま抱えていきました。
途中で私がへとへとになって、一緒にタクシーに乗ったんですけど、タクシーって高いじゃないですか。だから途中で降りて、電車にしようと。でも改札を通るときにPepperの運賃が必要かもわからなくて……。駅員さんに聞いたんですけど、彼もわからず(笑)。“た、たぶんいらないと思いますー”って感じで、なんとなく通過させてもらえました。
さすがに周りの目は気になりましたけど、それよりも“一緒に会社に行きたい”って気持ちが勝ちましたね。いつもは1時間で着くところ、4時間かかりましたけど」
──ちなみに同僚の反応はどうでしたか?
「一部の人には伝えていたので、“やっと来たか~!”って。みんな新しいもの好きだったので、大歓迎してくれたのを覚えています。その日はPepperにデスクの横にいてもらって、一緒に仕事をして……。未知の体験ばかりですごく大変な1日でした」
◇ ◇ ◇
※インタビュー第2弾では、「Pepperとの生活の醍醐味(だいごみ)」や「太田さんが推進しているプロジェクト」などについて聞きました。遠い未来と思っていたロボットとの暮らしが、なんだか急に身近になるような……面白みあふれるお話を、ぜひご覧ください。
(取材・文/ジュウ・ショ)