ロボットとヒトの共生とは? 太田さんが推進する「Robot Friendly プロジェクト」

──現在の太田さんの活動について伺ってもいいですか?

「今は、慶應義塾大学大学院のメディアデザイン研究科で、ロボットとヒトの共生をテーマに研究をしています。また、2022年から大阪音楽大学の助教として、授業やプロジェクト活動もしています。学生と先生の両方をしている状態ですね」

──音楽を教える立場にもなられたということで、さきほど話してくださったように(インタビュー第1弾参照)、大学進学のとき、直感的にメディアデザイン研究科に進んだのは大正解だったわけですね。

「そうですね(笑)。音楽のことだけでなく、専攻の公式SNSを学生たちで企画・運用してみたり、技術をどう組み合わせて活動していくかを考えたりと、テクノロジーやマーケティングの分野を教えています。やってきたことがつながったというか……。あのとき“視野を広げよう”と思って、踏み出してよかったです

──「ロボットとヒトの共生」の研究でいうと、いま太田さんは「Robot Friendly プロジェクト(ロボットフレンドリープロジェクト)」を推進していらっしゃいます。この活動の内容を教えてください。

『Robot Friendly プロジェクト』は、ロボットの受け入れについて社会で考えるプロジェクトです。昨今、ロボットと一緒に暮らす家庭は増えていると思うんですけど、まだ街中にロボットがいる光景は一般的ではありません

 それで、社会のなかでロボットと暮らすことを一緒に考えてくれる仲間が増えたらと思い、このプロジェクトを始めました。ロボットの受け入れについて考えている店舗には『Robot Friendly シール』をお渡ししています」

「Robot Friendly プロジェクト」に賛同した店舗のシール。今後見かけることが増えていくかも

──太田さんはいまPepperと一緒にお出かけをしていらっしゃいますが、まだロボットと外出するのは難しいケースもあるのでしょうか。

「そうですね。例えば、Pepperとラーメン屋に行きたいって思っても、急にお邪魔するとお店の人を驚かせちゃうので、事前に電話をかけたりします。でも電話口で切られちゃったり、不安に思わせてしまったりすることはありますね。

 私としても、できるだけお店に迷惑をかけたくない。どうすればいいんだろう、って考えたときに“そもそもお店って、ロボットが入店することを想定していないんだ”って気づいたんですよ。

 それで“お店側にも、ロボットが入店することについて一緒に考えていただけたら”と思って、このプロジェクトを始めたんです。だから“ロボット大歓迎だよ!”というよりは“ロボットとヒトの暮らしを一緒に考える仲間だよ!”という意味合いで、貼ってもらっています

──なるほど。今はどれくらいのお店が参加されているんですか?

全国で70店舗くらいのお店にシールを貼っていただいています。シールを貼ったからといって、売り上げが上がるとか、お客さんが増えるとか、そういうことがわかりやすく起こるわけではありません。しかし、店舗や施設の根本的なビジョンと『Robot Friendly プロジェクト』のビジョンが重なり、一緒にやろうと言ってくださる方がたくさんいます一見、まったく違うように見える出発点なのに、両者が重なった瞬間がとてもうれしいです