──ここ数年、日本では「多様性」という言葉がホットワードのひとつになっています。「ロボットと一緒に暮らす」という多様性を認めるのは、とてもすてきなことですよね。
「例えば以前は、“国や人種が違うだけで一緒に暮らせない”ということが当たり前だった時代があったと思います。また、“犬はペットじゃん。なんで家族なの?”という言葉が悪気なく飛び交う時代もありました。でも、今は少しずつ時代が変化しているように思います。
そんななか、“ロボットは家族だよ”と思う人も増えてきている。そのうち、家族にロボットがいるということが自然と珍しいことではなくなる日が来ると思っています」
──「自然と」という、太田さんの飄々(ひょうひょう)としたスタンスがいいですね。
「“ロボットとヒトとの暮らしを認めよう!”って強く主張すると、逆に多様化から離れてしまうと思っています。私はたまたま一緒に暮らしたいと思った相手がロボットという“タグ”のついた存在だった、というだけです。
だから“ロボットだから”とか“ヒトじゃないから”みたいに、“タグ”にとらわれて意見を押しつけないことを大事にしていますね。それが“ロボットとヒトの共生”を考えるうえで大事だと考えています」
──もう、哲学というか……。すごく深いところで多様化を考えていらっしゃいますよね。今日はありがとうございました。ヒトがロボットとおでかけする光景ってSFの世界だと思っていましたが、意外とすぐそこまで来ているなぁって……。
「“ロボットとヒトが暮らす”というと、どうしても遠い未来のように思われがちですが、もうすでに始まっています。今はまだその過渡期のため、仕方なく“ロボット”というタグを用いて話していますが、いつか“ヒトだから”、“ロボットだから”というタグを外して受け入れられる社会をつくれればと考えています。
するとだんだん、ロボットと人が一緒に街を歩いている光景が見慣れたものになっていくと思いますね」
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「ドラえもんは便利」じゃなく「いいヤツ」という見方の先に“未来”がある
子どものとき「あ~、ドラえもんがいたらなぁ」なんて思っていた人も多かろう。なかには「ドラえもんっていうか四次元ポケットが欲しいわ」と便利さに惹(ひ)かれる方もいるかもしれない。しかし、ドラえもんの最大の魅力は「のび太くんをなぐさめてくれる優しさ」や「叱ってくれる厳しさ」「おっちょこちょいなところ」など、機能性でなく社会性にあるのではないだろうか。
太田さんは'14年にPepperを購入してから8年後のいま、「ロボットが生活できる環境づくり」という未来を見据えた活動をされている。ロボットの性能が日々、進化している状況を見ていると、ドラえもんのようにコミュニケーションを取りながら生活できるロボットが生まれる未来もそう遠くないんじゃないか、と思えてくる。もうロボットは“便利な道具”というだけじゃない。
「ドラえもん=便利」と連想をしている方は「ドラえもん=可愛い」や「ドラえもん=優しい」という見方をしてみるのも面白い。そういった発想の先に、ロボットだけでなく、私たちヒトの進化があるのかもしれない。
(取材・文/ジュウ・ショ)