──ホストクラブでは、どのようにお金を使っていたのですか。

いちばんお金を使うのは、“締め日”って言われている、その月の売り上げトップが決まる月末と、指名しているホストの誕生日。私がハマっていたときは、まだシャンパンタワーはなかったんです。新しい文化なんですよ(笑)。だから、シャンパンのボトルを何度も入れていました。私のお気に入りのホストは7歳年下だったから、“この子を一人前にしてあげたい”みたいなパトロン気分だった。でも、私がどんなに頑張っても、ほかのホストをナンバーワンにしたい客が、そっちにさらに貢いだりして。結局ホストクラブって、女性客同士の争いなんですよね

──買い物の戦利品と違って、ホストは人間じゃないですか。それだけお金を使ったのに見返りなどがない場合は、嫌になったりしませんでしたか?

お金を使っていたら、最終的には嫌になりますよ。やっぱり恋愛と同じで、2、3年ぐらいが限度なんじゃないかな。でも、お金を精いっぱい使い続けて、ついに限界を感じたときに、相手が枕営業(業務上で付き合いのある人間同士が、性的な関係を築くことによって物事を有利に進めようとする営業方法)を仕掛けてきたんですよ」

──それで、もっとハマっていってしまったのですか?

「恋愛ゲームみたいな感じに移行して、1年ほど関係が続きましたね……。最終的には“今後は私がいなくても頑張ってね”とお別れしましたが。

 でも実は、次に“ハマる”ものが見え始めていたんです。40代半ばのころ、ホストに通いながら、雑誌の対談で美容外科医の高梨先生(タカナシクリニックの高梨真教院長)と意気投合したんですよ。それで、先生から“整形してみませんか”って打診されて

整形でコンプレックスを解消し新境地に。「私、もうホストいらない!」

──買い物、ホストときて、整形にハマり始めるのですね。

「やっぱり私も、整形にはかなりのハードルがあったんですよ。でも、『メスを使わないプチ整形で、どこまで芸能人に顔を似せられるか』っていう企画だったから、失敗しても面白いし、40代で整形して芸能人に似せようっていうのが私っぽいなと思ったので、やろうと決めたんです」

──当時、女優の奥菜恵さんの顔になりたかったというエピソードを見た記憶があります。

違うんですよ!  私は、“中山美穂になりたい”って言ったんです。そうしたら即座に、“顔立ちが近くないとできないから無理です”って返されて(笑)。ああいうシュッとした顔が好きなのに……。そのあと、目の形とかを考慮すると、奥菜恵さんの顔がいちばん近いっていう話になったんです」

──体験取材でも、自分の身体を使うのには勇気がいると思いますが……。

「なんだかんだ整形をしてみたら、自意識が変わって、整形自体を面白く感じるようになったんです。私、丸顔で顎も丸いのが中高時代からずっとコンプレックスでした。奥歯を抜いても、やせても、変われなくて。それで顔にボトックス注射をして、ヒアルロン酸を打って、顎(あご)を尖(とが)らせましたね。その施術の帰りに、くらたま(漫画家の友人・倉田真由美さん)とタクシーに乗っていたとき、自分のシュッとした顎を鏡で見て、思わず“私、もうホストいらない”って言ったんですよ!

──それは興味が整形に移ったからですか?

「ホストには、自分がまだ女性として現役かどうか知りたいとか、男にちやほやされることでステータスを上げたい、と思って通っていた部分があると思うんです。それは、買い物もそう。私の場合、ブランドものを持つことで“おしゃれ”って言われたいわけじゃなくて、それだけ稼げる人なんだって思われたかった。結局は、周囲から見た自分の価値を底上げしたかったんですよ。それが、整形して自分の身体に満足し始めたら、シャネルを着ている必要も、ピチピチの男が横にいる必要もないと感じて。そこからはもう、整形にハマっちゃった

──プチ整形から始まり、これまでに、どのような整形をされましたか?

「顔を10か所以上と、豊胸手術もしていますが、フェイスリフトは何回かやりましたね。顔の皮を剥(は)いで、引っ張り上げるのね」

「こうやって皮膚を引っ張ってさあ……」と無邪気に実演までしてくれた 撮影/北村史成

──聞いていると痛そうですが──。

「ボコボコに殴られたみたいに顔が腫(は)れました(笑)。1週間くらいバンテージを巻いて過ごさなきゃならないので、みんな引きこもるらしいけれど、私は普通に飲みに行っていましたね(笑)。整形手術って、1か所すると何か所もしたくなる。次々と、“ここを直したらもっとよくなるんじゃないか”って思うじゃない。それも買い物やホストと同じで、一種の依存症だと思うんです。ここでも、自分をどんどん底上げしていっているような快感が、だんだんエスカレートしていくわけですよ。でもやっぱり、最初がいちばんなんだよね。例えば、あとから鼻を直してシュッとしても、最初のほうに目と顎をいじったときほどの快感はないんだよね。それはもう、その後、豊胸してもヒップアップしても全部同じ」

──買い物、ホスト、整形にハマってきたなかで、どのくらいお金を使われたのでしょうか?

「整形は、高梨先生とタッグを組んで、自分の身体を好きに使ってもらう代わりに支払いが免除された部分もあるけれど、買い物依存は33歳から10年くらい続いたわけで……。当時は年収が3000〜4000万円あったものの、今まったく残っていないし、原稿料の前借りまでしていたとなると、けっこうですよね(笑)。ホストにも、累計で数千万円はつぎ込んだんじゃないかな