──センスが求められる仕事だと思いますが、もともとインテリアコーディネーターを目指していたのですか?

「いいえ、最初からいまの仕事をしていたわけではなくて、以前は教育関係のコンサルタント会社に勤めていました。ただ、平塚市(神奈川県)の実家では父が工務店を経営していて、その影響もあって、建築業界にはずっと興味があったんです。

 自宅兼事務所でしたけど、父の仕事場をのぞくと、いつも左官屋さんとか水道管の配管工事のおじさんたちがいて、みんなで図面をのぞき込んでああだこうだと言い合っていて、とても楽しそうに仕事をしていたんですよね。

 小学生のころ、“こんなベッドが欲しい”と絵を描いておねだりしたら、父が手作りで作ってくれたこともありました。わたしはとても嬉しくて、それで父みたいな仕事をしたいなあとずっと思っていたんです

山崎里沙さん

──なかなか自己主張が強い子だったとか……。

「言葉で反発するようなことはなかったんですが、行動で示すタイプの子供でした。いまだに言われるのが、小学校にあがるときに買った学習机です。今はジェンダーレスの時代になりましたが、わたしが子供のころは“男の子色”“女の子色”みたいな色分けがまだあったんですよ。学習机もそんな感じで、男の子はダークブラウン、女の子はパステルピンクみたいに分けられていました。

 子供ながらにも、わたしはそういうお仕着せや決めつけが嫌いだったのと、勉強するならダークブラウンの机に白いノートを広げたほうが絶対にいいと思って、男の子色の机にしたんです。机はそれでよかったんですが、椅子のカバーの柄が気に入らなかったので、剥ぎ取って、自分で選んだ布に張り替えたんですよね。父も苦笑してましたけど(笑)」

──なるほど、行動で示すタイプですね。カラーコーディネイトのプロになって、男の子色の机の選択は正解だったと思いますか?

「われながら“いい線いってるな”と思います(笑)。わたしがいま住んでいる浜松市はユニバーサルデザイン(※1)を推進していて、条例も多く制定されています。カラーリングに関して言えば、白内障などの病気で視力が低下したり、色を識別しにくい人のために、標識や案内などでは“反対色(黒に対して白、青に対して赤など正反対の色合い)”と“明度(明るさの度合い)”を組み合わせるようにするのですが、ダークブラウンに白いノートって、ユニバーサルデザインを意識したものすごくいい組み合わせで、文字がはっきり見えるし、勉強に集中できるので理に適っているんです」

※1:ユニバーサルデザイン:性別や年齢、国籍、文化などの違いを問わず、より多くの人が利用できるデザイン・設計。もっともわかりやすい例が東京オリンピック2021で話題になった“ピクトグラム”のように、誰が見ても“トイレ”“非常口”とわかるデザインなどを指す。