日本エンタメの海外進出サポートのため、会社を設立

──2021年にブシロードを退職後、独立。'22年1月にRe entertainmentを設立しています。このタイミングで新しいキャリアに踏み切った理由とは?

「抱えていたプロジェクトが自分の手から離れたタイミングが'21年だったんですよ。その前から早稲田の大学院(博士課程)に入学することが決まっていたし、ブシロード外での仕事をきっかけに外部から声をかけられることも増えてきた。ゲーム業界に5年、ブシロードに5年勤めてきっちり成果も残せた。辞めるなら手が空いた今のタイミングがいいだろうと思ったのが主な理由ですね

 Re entertainmentの設立に関しては、単純にニーズを感じたからです。日本エンタメの海外進出は今や必須で、デジタル×グローバルをやっていないエンタメ企業はありません。一方で担当者の方たちの多くはどう進めればよいのか悩んでいる。僕自身の経験を生かせばいろんな企業さんのお手伝いができますし、そういうことをフリーでやっている人があまりいなかったので、ポジションも確立できると考えました。ありがたいことに、現在はみなさんがご存じであろう企業さん10社ほどの海外展開やキャラクター制作のコンサルをしています。

 加えて博士号を取るために勉強しつつ、慶應(義塾大学)ではエンターテインメントビジネスストラテジーという授業をしている感じです」

──学生の立場でありながら、教員の立場でもあるんですね。

「そうなんですよ(笑)。学生、教員、立命館研究員として活動しながら、経産省コンテンツIPプロジェクトでコンテンツ制作のアドバイザーとしても活動をしています。博士号を得るために大学院へ通っているのは、そういったアカデミックな人たちと付き合っていくうえでステータスとして必要だからなんです」

──ブシロードから独立されてさまざまなことに取り組まれていますが、約1年たってみて感じていることはありますか?

「今までは意思決定を他人に預けてきていたなと実感しています。会社員時代はこういうインタビュー1つ受けるにも上司の確認が必要でしたし、他社からの協業・相談案件にもどうしてもポジショントーク(※)が出てきてしまう。

※ポジショントーク:自分や自社の立場、立ち位置に由来した発言をすること

 だけど、独立してからは自分のやりたい案件を好きなだけ受けられるようになりました。政治家から経営者まで会える人の幅がものすごく広がって、こんなにいろんな人たちがエンタメ領域に挑戦しようとしているんだとわかりました。会社員では得られないとても大きな気づきだったと思います」

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 あまたのエンタメ企業を渡り歩いてきた中山さん。取材の中で「日本エンタメの海外進出は今や必須で、デジタル×グローバルをやっていないエンタメ企業はありません」と語った真意とは? 第2回インタビューでは、日本エンタメが世界で戦ううえで必要になることを聞いてみました。

(取材・文/阿部裕華、編集/FM中西)