年に約7000種類を食べ歩いて研究。現在は自身のブランド栗のプロデュースも

──これだけ新作ラッシュの今、どうやっておいしいモンブランを探すんですか。

「それはもう、長年の蓄積があって、横のつながりで情報交換しています。面白いことに、栗スイーツマニアは、究極の入手困難品のグループ、新商品のグループ、ホテルスイーツのグループなど、層が分かれているんです。お店やパティシエさんからもお知らせをいただきますが、なんといっても自らお店に足を運ぶことがいちばん大事毎日探し歩いていて、地方を含め年間約7000種類は食べており、多くはInstagramを中心に公開しています。アフタヌーンティーに出てくる小さなアイテムもカウントしているので“種”と呼んでいるのですが、1日平均20種ぐらいは食べている勘定です」

──栗好きが高じて、ご自身のブランド『さとい栗』をプロデュースされるまでになったとのこと。いきさつについて教えてください。

「さとい栗は、日本一の生産量を誇る茨城県産の栗が中心で、“SDGsな栗”です。SDGsと謳(うた)っている理由は2つ。ひとつは、地方創成の仕事をしている茨城で、廃校になった中学校の校舎をリノベーションして栗の加工場も作ろうというプロジェクトのもと、さとい栗が誕生したからです。加工場が稼働したのは実質今年からで、収穫量はイガの状態で6トン。植樹した苗もあり、実ってくるのはまだまだ先です。品種そのものはいろいろなんですが、栗農園さんと契約し、育てています。

 もうひとつは、“余すことなく使っているから”です。例えば、通常、栗の渋皮は廃棄しがちですが、煮立たせて出た濃い色を染物(ランチョンマットやエプロン、コースターなど)に使ったり、加工する際に出る渋皮のエキスを、フランスの紅茶ブランド『Janat.(ジャンナッツ)』で、『シマロンドールSATOIKURI』として紅茶に使っています。

『Janat.』の紅茶は今のところ、パリとドバイ、日本が拠点で、ドバイではアフタヌーンティーに利用されているとのこと

 また、さとい栗は、収穫した栗を有糖と無糖とペースト状に加工して商品化しています。パウチになっていて、自分で好きなように使えるんです。例えば、パティシエさんだったら無糖100%のペースト、おこわ屋さんやお惣菜屋さんは剥(む)き栗など、さまざまな方に使っていただいています」

「さとい栗」収穫時。来年以降はさらに多くの実がなることだろう
栗マイスター・里井真由美さんが本気で選ぶ、今秋オススメの栗スイーツ7選!

*『和栗や』の栗のアフタヌーンティー『和栗づくし〜三段重〜』
 プレミアムモンブラン『HITOMALU』、モンブランソフト、『厳選茎ほうじ茶』はおかわり自由という大盤振る舞い。この店大人気の栗スイーツすべてを少しずつ詰めて三段重にしています。この時期は特別に、希少価値の高い品種「人丸」の絞りたてを出しており、ひとつひとつ丁寧に手作りされている和洋折衷の栗スイーツが楽しめます。

*『トシ ヨロイヅカ』の『胡桃だれ笠間モンブラン』
 桐箱風の正方形に入った和風のもので、土台はチョコがけされたメレンゲ、無糖の生クリームと栗クリーム、刻まれた“とある果実”が入り、松の実がトッピングされ、胡桃だれが別添されており、シェフのこだわりがぎっしり詰まったモンブランです。鎧塚俊彦シェフが「さとい栗」のプロジェクトに感銘して、それを使った栗スイーツを開発してくださいました。“とある果実”とは梅のこと。通常は廃棄されてしまう梅酒用の梅が細かく刻まれて入っていて、これが実においしく、アクセントになっているので、ぜひ召し上がってください。

*『やまり』の『六代目栗蒸しようかん』
 6代目が厳選した茨城県産の栗を贅沢に使い、最高級吉野本葛、栗蜜、自家製餡で仕上げた逸品です。余計なものを一切加えず、栗を知り尽くしたプロが育て、手作業で皮をむいた栗本来の香りと甘みかある大粒の栗。生栗本来のおいしさを引き立たせるために、独自の製法でつくられた餡と吉野本葛をほどよく調節し、手で優しく混ぜ合わせて仕上げていきます。ひと口頬張ると、栗の香りと程よい甘み、なめらかに溶けてゆくような心地よい餡の食感が得られる、寒天と小豆と砂糖だけで作った素材が生きたようかんです。

*岐阜・中津川の『栗きんとん詰め合わせセット』
 岐阜の中津川にある和菓子店たち自慢の栗きんとん14種とお茶がセットになった詰め合わせで、各店こだわりの味を食べ比べできます。実は、中津川市・恵那市を中心とした岐阜県東濃地方が、栗きんとん「発祥の地」なんです。栗きんとんの形状には2種類あります。おせち料理で見かける、栗に甘いあんを和えて栗の形を残している「栗金団」と栗をしっかり裏ごしして成形した「栗金飩」。「元祖」と呼ばれるのは、後者の「栗金飩」です。東濃地方の山間部では昔から恵那栗が収穫され、加工しても日持ちがするようにアレンジした和菓子が「栗きんとんの始まり」と考えられています。この商品は旅行の誘致に使うツールとして作られたのですが、期間限定でオンラインでも買えるようになっています。

*『Masahiko Ozumi Paris』の『ZABUTONモンブラン』
 衝撃のビジュアルで、旋風を巻き起こしています。パリの本格的な味わいと独創的なデザインのケーキを展開する小住匡彦さんの大阪にあるパティスリー。栗と赤ワインという、今までありそうでなかった組み合わせで、ボルドーの赤ワインとラズベリーの酸味にチョコレートの甘さが効いています。アクセントを出すためにクランチも入って、食感も面白い。日本の栗の中で、どっしり大きく希少な「銀寄」を、丹波の銀寄農家さんと専属で契約して使われているそうです。

『和栗白露』の『榛摺|はりずり』
 金沢に誕生した 和栗専門店からのお取り寄せ。看板メニューの『榛摺|はりずり』がイチオシ! 「能登熟成焼栗」のモンブランで、ほかにはない香ばしさと栗本来の甘さが味わえます。モンブランには全国的に知られる「松尾栗園」の栗が使われており、自然に落ちた栗だけを熟成させ、しっかり糖度を上げてから圧力釜で焼き上げるこだわり。だから無糖で、栗だけの糖度30%の甘み! しかも中には「葛ねり」が敷かれていて なめらか〜まるで「飲めるようなとろみ」です。全国配送されているで、ぜひ♪

*『PATISSERIE JUNKO』の『カトルカール(マロン)』
 まるで「生感覚」!? 抜群になめらか〜な栗のカトルカールです。いわゆるパウンドケーキですが、箱をあけた瞬間から「フレッシュさ」が五感に伝わってきます。ナイフを入れたときのなめらかさも指先に感じてきますし、断面の見た目色ツヤが黄金色でキラッ! として、風味のよさもございます。生地のフレッシュさにフランス栗の風味がよくなじみ、安定した味のバランス。シェフに素材のこだわりを伺うと、基本素材の中でいちばん鮮度が重要になる「卵」は「小松産」にこだわっているそう。だからこそのフレッシュさなのですね。 栗は洋栗です。箱も形もスタイリッシュでギフトにもおすすめです。

(取材・文/Miki D'Angelo Yamashita)


【PROFILE】
里井真由美(さとい・まゆみ) ◎食・食文化の専門家としてテレビ、雑誌、ラジオ、webなどメディアを中心に活動。2015年、ミラノ万博オフィシャルレポーターに任命され、同年、農林水産省食料・農業・農村政策審議会委員にも任命。'16年には日仏友好に適したフードジャーナリストとしてオフィシャルレポーターに任命される。グルメスイーツの年間食べ歩きは1000店以上。スイーツは年間平均7000種以上を食し、Instagramでは栗・モンブランやスイーツを中心に掲載中。栗好きが高じて テレビ番組『マツコの知らない世界』(TBS系)に出演、スイーツの達人としての活動も広い。2021年から 茨城県を中心に SDGs活動にも積極的に活動中。

里井さんオフィシャルブログ→https://ameblo.jp/i-kitchen/
公式Instagram→https://www.instagram.com/mayumi.satoi/?hl=ja