ゴミ屋敷にもジャンルがある! 身の毛もよだつ“害虫との戦い”の記憶

──片づけの仕事は今、何年目くらいになるのですか?

「4年目ですかね。ゴミ屋敷にもいろいろジャンルがあるんですけど、最初の現場が、ゴミ屋敷の中では臭いがキツくないほうだったんです」

──ゴミ屋敷にもジャンルがあるんですね(笑)。初耳なので、詳しく教えていただけますか。

「ゴミ屋敷って、ひとくくりにされるんですけれど、僕らの中では、生ゴミが多いゴミ屋敷は『生屋敷』、弁当の空き箱が山積みになっている家は『弁当殻屋敷』、生ゴミはあまりなく、本や資料が積み上げられた状態で紙がめちゃくちゃあるのが『紙屋敷』、そして、犬猫をたくさん飼っている家を『多頭飼育屋敷』と呼んでいます」

──ひと口にゴミ屋敷と言っても、多種多様なのですね。

「あと今、問題になっているのが高齢者に多い『物屋敷』。例えばサランラップとか、1、2個あればいい日用品のストックを大量に持たないと気がすまない、ホーダー(ためこみ症)と呼ばれる病にかかっている方が住んでいることが多いです。ホーダーにとっては、置いてあるものたちはゴミじゃないんです。使わないけど捨てられない状態で、どんどん山積みになっていってしまう

──ゴミ屋敷の一般的な定義は、どのようになっているのですか?

「市区町村ごとに定義されているんです。近隣住民に被害を及ぼすような悪臭や腐敗がある家屋をゴミ屋敷って呼ぶんですけれど、たとえ悪臭が出ていなくても、周りから見たらゴミ屋敷だよなっていう部分もありますよね……。清掃を担当している業者からすると、“腰高”といって、腰よりも上までゴミが積もっている場合にゴミ屋敷と定義しています

──ゴミ屋敷ですと、ゴキブリのような害虫駆除も必要となってくると思います。どのように対策して片づけをされているのですか?

「ゴキブリが目につくところにいるってことは、ほかにも相当いますからね(笑)。もう、フル装備ですよ! 防護服を着て、防塵マスクをつけて軍手の下にゴム手袋っていう完全防備の状態です。これならゴキブリが出てきても“あっ、いた! ”くらいですむんです。どうしたって気持ち悪さはありますけどね

──害虫駆除で苦労した片づけはあったのですか?

「いろいろとあるんですが、認知症の方の家がすさまじかったですね。依頼主はお孫さんだったんですが、その方は部屋に入りたくないって言うんですよ。中に入ったらオムツが山積みになっていて、異臭がハンパない。あと、ゴキブリがすごかったんですよね。真っ黒な冷蔵庫が置いてあって、“黒い冷蔵庫なんて珍しいな”って思って近づいたら、黒光りの何かがブワーッて一斉に散っていった。すると、冷蔵庫のシルバー色が広がってきたんです」

──冷蔵庫の全面にゴキブリ! 想像するだけで、身の毛がよだつエピソードですが……。

「冷蔵庫の中に空になった明太子のトレーだけあったんですが、ゴキブリの集団の上にトレーが乗っていたみたいで、ドアを開けたらゴキブリたちがザーッと動くとともに、自動的に外に運ばれて落ちていきましたね」

──すごくメンタルが鍛えられそうな現場ですね。ちなみに、きれいになったのですか?

「『トゥームレイダー』(イギリスのアクションアドベンチャーゲーム)のように、両手を使いまくって必死に片づけて、最終的にはきれいになりましたね。総額で60万円くらいかかっていました。働き始めたときは“ゴミ屋敷もたまにあるから”って言われただけで、まさかこんなに続くとは思っていなかったです。今は、片づけの仕事がない日がないくらいですね。最近は、ゴミがすごい方が逆に興奮するんです。なんか変態みたいですけど(笑)

「“ゴミフェチ”になってしまったのかもしれないですね(笑)」とシバタ君 撮影/吉岡竜紀 

──お聞きしていると、片づいたときの爽快感や達成感が大きいのでしょうね。一軒家のゴミ屋敷だと何人くらいで片づけるのですか?

「腰高くらいのゴミの山だと、最初は5人ですね。ゴミ屋敷って、だいたい入り口が埋まっているんですよ。そうしたら作業ができないから、ゴミをバーッて出して3人くらいで運搬するんです。ゴミはできれば廃棄ではなくて、リユースすることで、極力減らしていきたいので、買い取れるものがあれば、その買取金額を費用から引いています

◇   ◇   ◇

 何の気なしに手伝いに行ったゴミ屋敷の片づけを機に、いつの間にかその世界にどっぷりとハマり、さまざまな現場を見てきたシバタ君。ゴキブリが群がる家も相当ゾワッとしますが、インタビュー第2弾では、それをも超える“最恐”のゴミ屋敷にまつわるエピソードをご紹介。生前整理のためのコツや、シバタ君の今後の目標なども伺いました!

(取材・文/池守りぜね)


【PROFILE】
柴田賢佑(しばた・けんすけ) ◎1985年12月17日生まれ。北海道出身。アイスホッケーの選手を志した学生時代から一転、上京しお笑いの道に。お笑いコンビ『六六三六』として活動するかたわら、生前整理、遺品整理、ゴミ屋敷の片づけなどを行う業者に勤務し日々、さまざまな現場に出向いている。“お片づけシバタ君”としてブログやSNSなどで情報を発信中。

お片づけシバタ君のブログ→https://ameblo.jp/atama71/