独立に後悔なし!「生涯、現役の料理人であり続けたいと決意を新たに

 もともと、'90年代の人気テレビ番組『料理の鉄人』(フジテレビ系)を見て、一流シェフたちの熱い対決に衝撃を受けて料理人を目指した宮崎シェフ。パティシエの修業をへて、『ル・ブルギニオン』の菊地美升シェフのもとでベースを学び、その後、『オーグードゥジュール』で中村保晴シェフに師事する。渡仏したのは、その店の2番手のときだった。

「あの当時、菊地さんは最先端、中村さんはどちらかといえばクラシック。“シェフが変わると、こんなに料理が変わるんだ”と驚きましたね。ひととおりフランス料理を学んで、将来のために次に必要なことは何かと考えたときに、フランスで研さんを積むことを決めました。パリでは、ゲストから最高の満足を得られるよう創意工夫し、革新し、食材の持つ可能性に挑む、スターシェフたちの姿を見て触発されました

調理中の宮崎シェフの表情は真剣そのもの 撮影/齋藤周造

「歳をとってから行っても意味がない」という声もあったが、フランス人のひらめき、発想、瞬発力など、技術以上の“エスプリ”(精神・知性)に触発され、多くの収穫を得て帰国。その後、前述した前職のグループレストラン『オーグードゥジュール・ヌーヴェルエール』の料理長として店を連日、満席にした。

ちょうど東京でミシュランが始まった年に日本に戻り、1年目でいきなり星をいただいたんです。商業ビル内のレストランとしては珍しいことだったので、そこからさらにガストロノミックな料理を追求するようになりました。そんなころ、リッツのお話をいただいたんです。思いがけず、願っても叶(かな)わないような経験をさせていただきましたが、独立した今は、生涯、現役の料理人であり続けたいと決意を新たにしています。“今日はこんな素材が入りました、おいしいですよ”、目の前のゲストに、そんな提案ができる喜びを選びました

 ここからもうひと花咲かせよう、と店名を考えていたところ、アマランサスに「我慢強い」「永遠の」という花言葉があることを知った。ギリシャ語では、「アマラントス」。そのギリシャ文字の字体がデザイン的に気に入り、あえてギリシャ文字を使用し、ギリシャ語読みで店名を『アマラントス』とした。

「僕の料理人としての人生をよく表しているんです。厳しい修業をへてキャリアを積み、ようやく独立した。今は野菜ひとつとっても、届くたびに辛味が違ったり、酸味が違ったり、水分量が違ったりする。それらを見極めながら少しずつ調整して、さまざまなアプローチでおいしさを追求していく、その瞬間が価値ある時間に感じられます」

 手に取って、食材と会話をしながらその日の仕立てが決まる。そんな宮崎シェフとカウンターをはさんで食談義をしながら、カジュアルな雰囲気の中、華やかな“口福”を味わいたい。