子育てのポイントは「周囲の助けも借りること」

 子育ての秘訣について尋ねると、求さんは笑った。

「秘訣はないですね(笑)。言うなれば、休みの日に一緒にいろいろな経験をして、一緒に楽しむことでしょうか。子どもと一緒にいるのが楽しかったからなんですけどね」

 子どもたちの目線に立って何がいいことなのかを常に考えていた。子どもたちが頑張ること、それが求さんの夢でもあるのだ。求さんが気をつけていたことは、

できるだけ子どもと一緒の時間を持つこと。スマホを見ない、飲みに行ったときは1時間でも早く家に帰る。そして子どもたちと過ごす。スポーツをするのも大事。そこでいろいろな話をする。お父さんがそうした時間をつくってくれることは子どもたちにとっても嬉しいことなんです

 だが子育ては自分ひとりでやろうとは思わないこと、と続ける。

「息子たちは小さいころからモータースポーツをしていました。上下関係もある世界なのですが、コーチや先輩たちが親の代わりに叱る。それは技術のことだけではなく、人との接し方、礼儀についてもです。親に言われたことには反発しても周囲の人たちが言うことならすんなりと聞いてくれます。親がなかなか言えないことは、周囲に手助けをしてもらうことも大切です」

 今は学校の教師でさえも児童を叱るとクレームを入れられてしまう世の中。信頼できる周囲の大人が子どもをしつけてくれることは子どもの成長にもつながるのだ。

「また、子どもたちには英語をマスターさせようと思っていました。それは私がハーフなのに英語が話せなくて苦労した経験からです。スポーツや芸能活動もそうですが、私が苦労したことやできなかったことを鑑(かんが)みて、将来に役立つ環境を整えてあげたいと考えました。

 ただ、実践することも大事だと思いますが、子どもには子どもの価値観があり、親には親の、人生の荒波を潜り抜けてきた価値観があります。どちらの価値観が正しいのか角を突き合わせるのではなく本音を語り合い理解して、ベストではなくてもベターな結論を出すこと。親子間に信頼があって初めて成り立つものです」

 途中で変わってもいい、小さくささやかでいい。将来を夢見ること。たとえ実現できなくても、目指すものがあることが大切だと求さんは訴える。 

「夢を持つことで大事なのは結果ではなく、できる限りの努力をすること。努力そのものを楽しむことでもあるんです。することに意味があり、結果的にはうちの子どもたちはみな夢を追い、のびのびと育ってくれました。親は寄り添い、支えるだけ。最終的に判断するのは本人です」